便秘・下痢

便秘には酸化マグネシウム?

便秘には酸化マグネシウム? 

 

今日は便秘治療薬として最も使われているであろう酸化マグネシウム製剤について考えていきたいと思います。

お付き合いください。

 

酸化マグネシウムってどんな薬?

べんぴ先生

ガンコちゃん、酸化マグネシウムって知ってるか?

 

ガンコちゃん

聞いたことはありますよ。市販の薬でもよく売ってますし。

 

べんぴ先生

どんな作用があるかはわかる?

 

ガンコちゃん

うんちを柔らかくするんやないんですか?

 

 

そうです。酸化マグネシウムは便を柔らかくする薬なんです。難しく言うと浸透圧性下剤に分類される下剤です。

 

酸化マグネシウムは便を柔らかくする薬なんやで。

少し詳しく説明すると酸化マグネシウムを内服するとまず胃の中で胃酸によって塩化マグネシウムに変わります。

塩化マグネシウムは腸の中で腸液の影響を受けて炭酸マグネシウムに変わります。

 

この炭酸マグネシウムはなかなか吸収されないので腸の中にずっと残ります。

 

そうすると浸透圧と呼ばれる作用で水分を集めることができるので結果として便が柔らかくなるというわけです。

 

 

イメージとしてはこんな感じです。

 

すごくいい薬で、長く飲み続けることが多い薬です。腸を刺激するようなことはないため、耐性もできません。(これはとっても大事なことです。)

 

酸化マグネシウムは飲み続けても耐性ができないんやで。これはとっても大切な事なんやで。

 

べんぴ先生

便秘薬は大まかにいうと浸透圧性下剤と刺激性下剤に分かれるんや。刺激性下剤は腸をムチで打つようなイメージや。馬もムチを打ち続けたら疲れちゃうやろ?腸も一緒で疲れてうまく動かなくなるんや。しかもクセになるから毎日飲んではいけない薬なんや。

 

刺激性下剤は毎日飲んだらあかん薬なんやで!

ちなみに薬局で売っている市販の便秘薬はかなりの割合で刺激性下剤です。

これは今日必ず覚えてください。

 

刺激性下剤の恐さについては以下の記事にまとめてありますので参考にしてくださいね。

ガンコちゃん

じゃあ浸透圧性下剤はやっぱり良い薬なんですねえ。

 

べんぴ先生

そや。良い薬なんやけど浸透圧性下剤で使えるものは酸化マグネシウムくらいしかなかったんや。つまり、酸化マグネシウムがなんらかの理由で使えなければ、他に選択肢がなかったということや。

 

ガンコちゃん

それは困りますね。こんなに世の中には薬がたくさんあるのに。

 

べんぴ先生

しかし、状況は変わってきているんや。最近モビコール®ラグノス®という新しい2つの浸透圧性下剤が使えるようになったんやで。

 

ガンコちゃん

選択肢が増えてよかったですねえ。

[

べんぴ先生

とってもええ事やで。

特にモビコールという薬。

 

欧米では以前からある薬で、便秘薬では第一選択です。

 

逆に酸化マグネシウムは欧米では使われていないようです。

 

うーん。なんで今まで日本にはなかったんやろ?

 

最近はモビコールを使う機会が増えてきましたが、僕の肌感覚としてもかなり良い薬かと思います。

とても良い薬ですが、難点が2つあります。

モビコールの難点

・毎回水にとかして飲む必要がある。つまりめんどくさい。

・マグネシウムより値段が高い。

 

こんなのどうだってええよ、とおっしゃる方にはモビコールの方が酸化マグネシウムより良いかもしれませんね。

 

モビコールについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ちなみにラグノスも良い薬ですよ。

ラグノスについては以下の記事を参考にしてくださいね。

 

酸化マグネシウムの副作用

べんぴ先生

ガンコちゃん、酸化マグネシウムの副作用って何か知ってる?

 

ガンコちゃん

全然わかりませんわ。

 

べんぴ先生

そりゃそうか。実は高マグネシウム血症なんや。血液中のマグネシウムの濃度が上がってしまうということや。

 

ガンコちゃん

そりゃマグネシウムを飲めば上がりますよ!アホでもわかります。

 

べんぴ先生

いや、普通は問題にならんのや、これが。よっぽど大量に飲み続けない限り健康な人はならんと思う。ただ、ご高齢の方腎臓の機能が弱っている時はなってしまうんや。

高齢者と腎臓の悪い方は、血液中のマグネシウム濃度が高くなる事があるから注意が必要やねんで。

ガンコちゃん

なるほど。若い女性でマグネシウムだけ飲んでいる時はならなさそうですねえ。

 

べんぴ先生

その通りや。

 

でも健康な若い人はまず大丈夫やで。

 

活性型ビタミンD3製剤という薬を一緒に内服すると高マグネシウム血症になりやすいと言われています。

骨粗鬆症低カルシウム血症の薬ですね。

 

添付文書(薬の説明書)には書いてありませんが、精神科でよく処方されるリチウムという薬は単体で高マグネシウム血症を起こしうるので一緒に使う時は注意が必要かもしれません。

 

 

さらにいうと甲状腺機能低下症(甲状腺のホルモン分泌が低下します。女性がほとんどです。)でも高マグネシウム血症になることがあるので酸化マグネシウムを使う時は注意が必要かもしれませんね。

精神科の薬や骨粗鬆症の薬を一緒に飲むとマグネシムが高くなっちゃう事が多いんやで。

 

高マグネシウム血症になるとどうなるの?

では、高マグネシウム血症になるとどんな症状が出るのか?

 

 

はじめは体のだるさ、吐き気などがでます。何となく調子が悪いという感じです。

 

これで気がつけばいいのですが放置しておくと、不整脈や呼吸不全など恐ろしい症状が出てきます。

 

最悪死に至る場合もあると思いますが、僕は経験したことはありません。

そこまで行ってしまう人はごく稀であると思います。

 

「なんとなくだるい」の時点で気がつけばいいけど、なかなか難しいで。

ガンコちゃん

確かに・・・インフルエンザでも風邪でもだるいですもんね。

べんぴ先生

ほとんどの病気はだるくなるからなあ・・・難しいところや。

 

定期的に血液検査をしなさい

 

教科書にはこう書いてあります。

僕も一応行っていますが、あんまり意味はないんやないかなと思います。

もちろんぶっ飛んだ異常値なら参考になると思いますが・・・

 

体の中にある全部のマグネシウムのうち、血液中にどれくらいのパーセント存在しているかご存知ですか?

 

 

実は1%しか血液中にはありません。

 

なので血液検査で正確な値が出ているとはとてもじゃないですが、考えられません。

 

血液のマグネシムの値が正しいとは限らへんのやで。

 

じゃあどうするか?

 

ここから先は覚える必要はありません。

医療者側の豆知識です。

実は・・・

高マグネシウム血症を疑ったらアキレス腱反射を見るんです。

ガンコちゃん

なんのこっちゃ。

べんぴ先生

覚える必要はないで。

 

アキレス腱をコンコンと叩くあれです。(医療者じゃないとわからないので、わからない人はそんなもんかと読み流してくださいね。)

 

 

腱反射が低下していることが多いです。

 

全員にそんなことをやる時間はないのでまずは病歴で疑うことが大事かと思います。

 

 

頭の片隅に「高マグネシウム血症」を置いておく事が重要やねんで。酸化マグネシウムを内服している皆さんの頭の片隅にも置いておいてほしい事やねんで。

 

あとはマグネシウム製剤は薬の飲み合わせが気になりますね。

抗生剤とか胃薬とか結構多いですよ。そこまで問題にならないことが多いですけどね。

詳しく知りたい方は酸化マグネシウムの添付文書を読んでくださいね。

 

今後酸化マグネシウムはどうなっていくか?

ガンコちゃん

どうなるんですか!?

べんぴ先生

うむ・・・難しい問題やね。

先ほどもご説明しましたように、最近は便秘の新薬がたくさん出ています。

今までは酸化マグネシウムとセンナが処方の90%くらいを占めていましたが、さすがにこのシェアは崩れそうです。

 

今までは便秘薬といえば酸化マグネシウムとセンナやってんで。

 

ガンコちゃん

90%は多いですねえ。バカの一つ覚えみたい。

べんぴ先生

言葉は悪いけどまさにそうやね。

勘違いして欲しくないのは、酸化マグネシウムは使い方次第では良い薬だという事です。

酸化マグネシウムの良いところと悪いところを箇条書きでまとめてみたいと思います。

酸化マグネシウムの良いところ

・容量調節が細かくできる

・安い

・効果が高い

酸化マグネシウムの悪いところ

・高マグネシウム血症という副作用がある。

・薬の飲み合わせが意外と悪い。

 

酸化マグネシウムの良いところはとにかく安いという事です。

そして粉薬もあるので、その気になれば容量調節がすごく細かくできます。

 

これは新薬にはないメリットですね。

 

新しい薬が良い薬で、古い薬が劣っている薬というわけではないんやで。

 

少なくとも酸化マグネシウムが全く使われなくなるという事はありえないと思います。

ご高齢の方や腎臓が悪い人には使えませんが、若い人であればまずは酸化マグネシウムから試してみるのが良いと僕は思います。

 

そう簡単にシェアは減らないですよ、多分。

 

やっぱり良い薬なので。

 

今日は以上です。お疲れ様でした。

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医