便秘・下痢

抗精神病薬や抗うつ薬が便秘を引き起こす

抗精神病薬や抗うつ薬が便秘を引き起こす

 

こんにちは。

 

今日は精神科で処方されるお薬と便秘との関係について勉強していきたいと思います。

お付き合いくださいね。

 

精神疾患のある人はなぜ便秘になりやすい?

 

べんぴ先生

今回は精神科の薬について考えていこう。まずがんこちゃん。精神科の薬はどんな人が内服されるかわかるか?

 

ガンコちゃん

そりゃ精神疾患のある方やないんですか?

 

べんぴ先生

その通りや。今回は睡眠薬や精神安定剤みたいなものは取り上げないで。ここでは抗精神病薬抗うつ薬について考えていこう。

 

睡眠薬や精神安定剤については以下の記事を参考にしてくださいね。

ガンコちゃん

今日もお願いしまーす!

 

べんぴ先生

その前に前提として、精神科の患者さんはすごく便秘になりやすいということを覚えて置いて欲しい。それはなんでかわかる?

 

ガンコちゃん

それはやっぱりたくさん薬を飲むことが多いからやないですか?

 

べんぴ先生

それは大きい要因やろね。それ以外にもいろんな要因があると言われているんや。

便秘になりやすい理由

・薬をたくさん飲むから

・運動量が少ない

・昼夜逆転など生活リズムが悪い

・病気自体のストレス

 

ガンコちゃん

なるほどなるほど。薬だけではないんですか。

 

べんぴ先生

特に入院されていたりすると、もっと運動量も落ちるしね。暴れて点滴を抜いてしまったりすると危ないので身体拘束されている方もいらっしゃる。そうなると運動なんて不可能になるな。

ガンコちゃん

拘束されちゃうとさすがに運動できないですもんね。

精神疾患のある方はいろんな要因で便秘になるんやで。

精神科の薬について考えよう

べんぴ先生

それでは薬について解説していくで。

ガンコちゃん

行きましょ!

抗精神病薬

べんぴ先生

まずは抗精神病薬から見ていこ。精神病薬には大きく分けて定型抗精神病薬非定型抗精神病薬があるんや。

精神病薬

・定型抗精神病薬

・非定型抗精神病薬

精神病薬には抗コリン作用のある薬が多いのです。

そして抗コリンや薬のところでも少しお話ししました通り、どれくらいの割合で抗コリン作用が含まれているかっていうのが大事なんですね。

つまり

飲んでいる薬に抗コリン作用が多ければ多いほど便秘になりやすい

ということです。

やっぱりコリンが大事なんやで。

 

ガンコちゃん

コリン・・・やっぱり大事なんですね。

 

べんぴ先生

そうや。抗精神病薬の中で最も抗コリン作用がつよいもの、それはフェノチアジン系のものや。

フェノチアジン系

クロルプロマジン

コントミン

ウインタミン

ノバミン

 

ノバミンは精神科以外でも吐き気止めで使うことがあるから、注意が必要やで。

 

ガンコちゃん

こんないっぱい覚えられへんですよ💦

 

べんぴ先生

大丈夫や。覚える必要は全くないから。もし今お薬を飲んでいるならその薬がこれらに該当するかどうかだけ確認してくれたらええんや。新しく先生から処方された時もまず内服する前に確認してくれたらええんやで。

 

ガンコちゃん

そっか。覚える必要はないんですね。安心しました。

 

べんぴ先生

下の表を見て欲しい。今は昔と違って色んな薬がでてきているから、もしも変更できたり、新しくはじめる時はこの表を参考にしたらええと思う。あくまでも「可能な範囲で」な。

 

 

一般名主な商品名抗コリン作用
ハロペリドール(定型)セレネース
クロルプロマジン(定型)

ウインタミン

コンタミン

➕➕➕
リスペリドン(SDA)リスパダール
ペロスピロン(SDA)ルーラン
ブロナンセリン(SDA)ロナセン
パリペリドン(SDA)インヴェガ
クロザピン(MARTA)クロザリル➕➕
オランザピン(MARTA)ジプレキサ
クエチアピン(MARTA)セロクエル
アリピプラゾール(DPA)エビリファイ

SDA:セロトニン・ドパミン遮断薬

MARTA:多元受容体作用抗精神病薬

DPA:トパミン部分作動薬

[Leucht S,et al:Am J Psychiatry,166:152-163,2009]

 

べんぴ先生

抗精神病薬はこの程度で十分や。新しい薬は抗コリン作用が少ない傾向にあるね。次は抗うつ薬について見ていこう。

 

新しい薬ほど抗コリン作用が少ない傾向があるんやで。

抗うつ薬

ガンコちゃん

抗うつ薬もいっぱい出てきていますもんね。

 

 

一般名主な商品名抗コリン作用
フルボキサミン(SSRI)デプロメール
パロキセチン(SSRI)パキシル
セルトラリン(SSRI)ジェイゾロフト
エスシタロプラム(SSRI)レクサプロ
ミルナシプラン(SNRI)トレドミン
デュロキセチン(SNRI)サインバルタ
ミルタザピン(NaSSA)リフレックス
トラゾドン(SARI)デジレル、レスリン
ミアンセリン(四環系)テトラミド
マプロチリン(四環系)ルジオミール ➕➕
アミトリプチリン(三環系)トリプタノール➕➕➕
イミプラミン(三環系)トフラニール➕➕
クロミプラミン(三環系)アナフラニール➕➕➕
ノルトリプチリン(三環系)ノリトレン
アモキサピン(三環系)アモキサン➕➕➕

SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬

SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬

NaSSA:ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬

SARI:セロトニン遮断再取り込み阻害薬

[World Federation of Societies of Biological Psychiatry:Treatment Guidelines and Consensus paper]

 

べんぴ先生

三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬で抗コリン作用が強い傾向にあるんや。特に三環系抗うつ薬は注意が必要や。

ガンコちゃん

でも先生、注意が必要と言われてもなかなか難しいもんがありますよね?

 

べんぴ先生

もともとの精神疾患のコントロールも非常に大事やからな。そやから「可能な範囲で」薬剤による便秘を減らしていくことが大事やな。かかりつけの先生に一度相談してみるといいよ。

 

ガンコちゃん

普段から相談できる関係を作っておくことが大事ですね。

 

薬を変更するにしても可能な範囲でやらなあかんで。元の精神疾患が悪化したらあかんからね。先生と相談するんやで。

まとめ

いかがでしたか?

 

ここでもやはり

抗コリン作用がキーワードになっていることをご理解頂けたらOKです。

 

精神疾患のある方は本当に色んな要素が絡み合って便秘になることが多いのです。

それでも薬の副作用はなるべく減らしたいですよね?

 

あくまでもできる範囲で、主治医と話し合ってくださいね。

今日もお疲れ様でした。

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医