便秘・下痢

その他の薬と便秘

 

 

べんぴ先生

便秘を引き起こすその他の薬について説明して行こう。

 

ガンコちゃん

お願いします。

べんぴ先生

まずはスクラルファート(スクラルファート®)から説明するで。

胃炎や胃潰瘍の治療薬として知られているけど、正直最近は新しい胃薬ができてきてあんまりお目にかかることはないな。

この薬の特徴は「アルミニウム」という物質を含んでいることやね。

 

ガンコちゃん

アルミニウムってあの「アルミニウム」ですか?

 

べんぴ先生

そや。アルミニウムは便秘を引き起こすんや。何でかというと胆汁酸を吸着してしまうからや。

 

ガンコちゃん

胆汁酸って何ですか?

 

べんぴ先生

胆汁酸は肝臓で作られて腸に運ばれる。そこで食べ物に含まれてる脂肪分を吸収するのに必要なもんや。

実は胆汁酸は「下剤」の効果があるんや。つまりな、体の中で下剤の効果を果たしているということや。

 

ガンコちゃん

胆汁酸が吸着されるということは下剤効果がなくなるっていうことですか?

 

べんぴ先生

その通りや。つまり便秘になってしまうってわけうや。

近はこの胆汁酸がすごく注目されてきて、胆汁酸関連の便秘薬も出てきているんやで。これについては胆汁酸トランスポーター阻害薬のところで説明するわ。ちなみに下痢型IBS(過敏性腸症候群)の何割かはこの胆汁酸が関係していると言われているんや。

これについては水上健先生の「IBSを治す本」を読んでに書いてあるから読んでください。

ここで言いたいのはスクラルファートに限らずアルミニウムを含んでいる薬は便秘を起こしうるということやね。

 

ガンコちゃん

わっかりました!

 

べんぴ先生

そしたら次に行こう。次は鉄剤や。

 

ガンコちゃん

鉄剤なら生理で貧血気味な女の子はよく飲んでますよね。

 

べんぴ先生

鉄剤はすごく身近にある薬やから注意が必要やね。あとは鉄剤を飲むと便が黒くなるから覚えておいてな。

たまに「出血したっ!!」と言って病院にかかってくる患者さんもいらっしゃるからね。

 

ガンコちゃん

確かに黒い便が出たらびっくりしますもんね。覚えておきます。

 

べんぴ先生

他に便秘を引き起こす薬としては陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂がある。あまり聞きなれないとは思うけれど、まず陽イオン交換樹脂について説明しよう。

陽イオン交換樹脂は腎不全の患者さんにしか使用しない薬や。

べんぴ先生

腎不全の患者さんは腎臓がうまく機能していないからカリウムを体の外に出すことが難しいんや。

血中のカリウム濃度が高くなってくると不整脈が起こりやすくなって、緊急を要することが多いんや。そやから普段からカリウムを下げとかなあかん。

 

べんぴ先生

具体的にはポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート®)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート®)などがある。

これらの薬が腸管内に溜まってくると腸の蠕動運動がうまくできないようになるんや。便秘を引き起こす他に腸に潰瘍を作って破れたり、イレウス(腸閉塞)になったりもするようや。

 

べんぴ先生

僕はこの薬のせいで腸が破れたり腸閉塞になったりした患者さんを見たことはない。

逆に頻回の下痢になった患者さんの経験はあるんや。

腎臓内科の先生からご相談があって、とりあえず大腸カメラをやりましょということになった。もともとは「アミロイドーシス」という病気を疑っていて、腸の粘膜は綺麗やったけど直腸(一番肛門に近い腸)から生検すると粘膜の下にいっぱい沈着物がついてたんや。

でもそれはいわゆる「アミロイド」ではなくてもしかしたら陽イオン交換樹脂じゃないかということで薬を一回やめてみたんや。そしたら下痢が治ったわ。あれは忘れられへんね。

 

ガンコちゃん

下痢にもなるんですねえ。難しいな〜。

 

べんぴ先生

次は陰イオン交換樹脂や。これは胆汁酸の吸着剤や。アルミニウムと同じやな。

もちろん胆汁酸を吸着してしまうことで便秘になるんや。具体的にはコレスチラミド(コレバイン®)などが有名やね。

この薬はさっき出てきた胆汁酸の関与したIBS(胆汁性下痢)で使う薬やで。効き目は抜群や!!

 

ガンコちゃん

先生がそんなこと言うなんて珍しいですね。

 

べんぴ先生

めちゃくちゃ聞くんや。ただ知らない医者が多すぎるんや。そこがネックやね。

 

べんぴ先生

他に便秘を引き起こす薬としては下痢止めがある。下痢止め使ったら便秘気味になる、当たり前の話やな。

 

ガンコちゃん

それくらいはわかります。

 

べんぴ先生

あとは糖尿病の薬かな。結構便秘とか下痢になる印象があるね。

特にαグルコシダーゼ阻害薬と呼ばれるボグリボース(ベイスン®)ミグリトール(セイブル®)なんかは排便異常を引き起こすことで有名や。添付文書(お薬の説明書)にはイレウス(腸閉塞)を引き起こすことがあるとは書いてあるね。

 

ガンコちゃん

糖尿病はそれ自体でも便秘を引き起こしますもんね。注意が必要ですね。

 

べんぴ先生

そや。特に自律神経障害が出ているとな。

あとはGLP-1という物質も腸管の運動に関係している可能性がある。糖尿病と便秘の関係は奥深いものがあるから、また別の機会にまとめるとしよう。

とりあえずこれでざっと便秘を引き起こす薬について解説できたな。いかにいろんな薬が便秘に関与しているか実感してもらえたと思うけど、ガンコちゃんどうやった?

 

ガンコちゃん

興味深いですけど、一回じゃ全部理解できなかったんでまた復習してみます!

 

べんぴ先生

うん、1回で全部わかる人はおらんから。何度も読み返してみるといいよ。お疲れ様でした。

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医