便秘・下痢

心臓・血管の薬と便秘

 

 

べんぴ先生

今回は心臓・血管の薬と便秘について説明するよ。ここでは降圧薬(血圧を下げる薬)利尿薬について話しするわ。

 

ガンコちゃん

お願いしまーす!

べんぴ先生

まずは降圧薬や。一番多いのは「カルシウム拮抗薬」という種類の降圧薬やね。どういうふうに血圧を下げるかというと、まず血管の筋肉や心臓の筋肉にあるカルシウムチャネルというところにくっつくんや。

そしたらカルシウムイオンというのが細胞の中に入られへんようになるんや。そしたらうまく筋肉が収縮できなくなって血圧が下がるちゅう仕組みや。

 

ガンコちゃん

またわけのわからんことを・・・

 

べんぴ先生

大事なのは「平滑筋に作用する」ということや。

平滑筋というのは内臓とか血管の運動に関わっている不随意筋や。つまり自分の意思とは関係なく働くってことや。それに対して足の筋肉とかは「骨格筋」というんやで。

平滑筋は、細胞の中にカルシウムたくさん貯められへんのや。そやからこのカルシウムが細胞の中に入ってこられへんようになると大ダメージを受ける。つまりうまく筋肉が収縮できんくなるということや。

 

ガンコちゃん

全身の血管の筋肉がゆるんで血圧が下がるっていうことですね?

 

べんぴ先生

簡単に言えばそんな感じや。そして腸管はもちろん内臓の一部なので、平滑筋でできている。カルシウム拮抗薬の影響を多大に受けるということや。

つまり腸管がうまく動かなくなる。当たり前やけど便秘になるっちゅうことや。

 

ガンコちゃん

そーゆうことなんですね。

 

べんぴ先生

カルシウム拮抗薬にはニカルジピン塩酸塩(ペルジピン®︎)ベニジピン塩酸塩(コニール®︎)なんかがあるね。

もしも変更できるんであれば他の降圧薬に変更した方がいいやろな。

 

ガンコちゃん

他の降圧薬は便秘にならないんですか?

 

べんぴ先生

一応薬の添付文書(説明書)に便秘と書いてあるものもあるけど、あんまり関係はないように感じるよ。例えばオルメサルタン(オルメテック®)の副作用に便秘という報告もあるけどむしろ下痢の方が多いように感じるね。

ただ、ヒドララジン塩酸塩(アプレゾリン®)という薬は麻痺性イレウスを引き起こすことがあるんや。麻痺性イレウスというのは腸が全然動かないことで腸閉塞みたいになってしまう病気や

 

ガンコちゃん

ちなみにイレウスというのは覚えておいた方がいいんですか?

 

べんぴ先生

便秘の鑑別には上がるから、覚えておいて損はないと思うな。

ヒドララジンはどういった仕組みで血圧を下げるのかというのはあんまりわかっていないみたいやね。普通はあんまり使われなくなっているけど、妊娠高血圧に対しては使われるんや。

僕は処方したことはないけど、産婦人科の先生は処方されるんじゃないやろか。

 

ガンコちゃん

やっぱり妊婦さんの治療は特殊なんですねえ。

 

べんぴ先生

そや。あとは狭心症のための薬でニコランジル(シグマート®)という薬がある。ATP依存型カリウムチャネル開口薬と呼ばれるもので、これも便秘を引き起こす。カリウムチャネルを通してカルシウムが細胞に入りにくくしてしまうんやね。それで平滑筋がうまく働かんようになってしまい、便秘になるんや。でも下痢になる時もあるようや。

 

ガンコちゃん

なるほどなるほど。チャネルとかは難しいんでよくわからんですけど、血圧の薬とか狭心症の薬でも便秘になるってことが分かりました。

 

べんぴ先生

あとは利尿薬かな。利尿薬というのはおしっこをいっぱい出すための薬やね。

利尿薬は総じて体の中から水分を尿として出すから自ずと便の方は硬くなってしまうのは仕方がないことや。

 

ガンコちゃん

体の中の水分は限られてますもんね。おしっこから出すのかうんちで出すのかってことですね。

 

べんぴ先生

そやね。あとは利尿薬によって電解質(ミネラル)のバランスが崩れてしまうことが結構あるんや。前にも言ったけど、低カリウム血症、高カルシウム血症というのは便秘と多尿を引き起こすことがあるんや。

 

ガンコちゃん

これは便秘の病態③で出てきましたね。

 

べんぴ先生

しっかり覚えていて感心感心!

フロセミド(ラシックス®)なんかは強い利尿効果があるし低カリウム血症にもなるし、注意が必要やね。

だいたい利尿薬は複数使われることが多い。例えばカリウム保持性利尿薬(血中のカリウムを低下させない)のスピロノラクトン(アルダクトン®)なんかと一緒に使ったりする。

 

べんぴ先生

特に僕の分野やと肝硬変(肝臓が硬くなってうまく働かない。文字通り肝臓が硬く変わる。)の方にはほとんど併用されているかな。フロセミド:アルダクトン=2:5の用量で使うといいと言われているよ。

要はうまいこと薬を併用したり調節して、電解質(ミネラル)バランスを崩さないように工夫するっちゅうことや!

 

ガンコちゃん

体のバランスを壊したらあかん、と。これはイメージしやすくてしっくりきますねえ。

 

べんぴ先生

それはよかった。利尿薬が便秘を引き起こすというのは分かりやすいと思うんやけど、じゃあ利尿薬をやめましょうっていうのは実臨床ではなかなか難しいことが多いんや。

心不全(心臓がうまく働かない)や肝硬変の患者さんは足を中心に浮腫(むくみ)がひどいことが多いんや。特に心不全の患者さんは利尿薬がないと心不全が悪化することが多いから、「利尿薬は便秘を引き起こすからやめましょうね。」とは言えないことがほとんどや。

 

ガンコちゃん

ということは・・・?

 

べんぴ先生

利尿薬は継続して、便秘対策で食事・運動療法や薬の調節をしましょうね、ということになる。

ここら辺の「いい塩梅で」というのが内科の難しさでもあり面白さでもあるんやけどな。

 

ガンコちゃん

単純に行かないってことですね。

 

べんぴ先生

そや。ただ、心不全や肝硬変の患者さんはすでにたくさんの薬を飲んでいることが多いから、便秘薬も少量でコントロールする必要があるんや。腕の見せ所やね。

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医