便秘・下痢

男性が便秘になった時、原因は何がある?

 

こんにちは。

 

今回は男性が便秘になった時にどんな病気を考えなくてはいけないのか、について考えていきたいと思います。

今回はもともと便秘の男性ではなくて

便秘なんて経験したことがなかったのに、60歳くらいから便秘になり始めた

という方に限って話をしていきたいと思います。

 

便秘の原因の一般論については以下を参考にしてください。

 

実際、若い男性の便秘というのはすごく少なくて、僕の外来に訪れる患者さんもほとんどが女性です。

 

それが60歳くらいから徐々に男性の患者さんは増えていき、80歳以上になると男性の方が多くなるくらいです。

 

今まで便秘なんてなったことがない人が急に便が出なくなると、それはそれは焦ると思います。

女性は若い時から女性ホルモンの関係もあって便秘で悩んでいる方が多いので、

「また便秘になってるわあ。」くらいの感じで対処できる場合が多いのですが、男性の場合はそれができない。

 

便の気張り方もわからなくなったという男性も実際におられるくらいです。

・若い男性はほとんど便秘にならない。

・いざ60歳くらいで便秘になるとどうしていいかわからなくなる。

 

前置きはこれくらいにして本題に入っていきたいと思います。

 

なぜ男性が60歳くらいから便秘になりやすくなるかわかりますか?

 

考えてみてください。

 

わかりましたか?

 

 

それは

定年退職するのが60〜65歳くらいだからです。

 

もちろんこれからお示しするような病気の方もおられますので、一概に「定年退職が便秘の原因だ!」とは言えませんが、少なくとも定年退職と便秘は相関していると思います。

 

定年退職すると、男性はよっぽど趣味がある人以外はほとんど動かなくなります。

 

家事もせずに家でだらだらしていると、奥様から粗大ゴミ扱いされるのが関の山ですね。

 

運動量が大幅に低下すると食事量も落ちて、睡眠の質も悪くなって、という風にどんどん悪いループに入っていってしまう。

 

便秘になったことがないから対処法もわからず、病院を受診する、という流れがとても多いように感じます。

 

定年した後に便秘になり、病院を受診し、検査をしたけれども病気は見つからない、という方には運動、食事、睡眠の重要性を説明し、軽い下剤を処方するくらいでほとんどの場合はよくなります。

ただ、見逃してはいけない怖い病気があることは忘れてはいけません。

 

忘れてはいけない病気

大腸ガンとパーキンソン病(レビー小体型認知症)

 

僕は60〜70歳の便秘を主訴に来院した男性を見たら、この2つの病気だけは絶対見逃さないぞ!!と言う気持ちで診療に当たっています。

 

 

まずは大腸ガンから見ていきましょう。

 

大腸ガン。

めちゃくちゃ多いですよ。

 

ちなみに最近僕が勤める病院の消化器内科・外科合同カンファレンスで提示される症例の中で大腸ガンが占める割合を自分で数えていたのですが、

30%くらいは大腸ガンです。

胆石と大腸ガンの手術依頼だけでだいたい60%くらいです。

ちなみに消化器内科・外科合同カンファレンスとは、手術が必要そうな患者さんについての会議みたいなものです。

 

いやあ、多いですね。

最近本当に多いです、大腸ガンは。

 

男女合わせると、日本で一番多いがんは大腸ガンです。

他の肺ガンや胃ガンに比べると予後は比較的良いですが、それでもガンはガンなので、放っておくといつか確実に死にます。

 

よくあるのは

血便が出ていたけど、痔だと思っていたから放っておいた。

というパターンです。

 

定年退職すると検診が義務じゃなくなるので受けなくなる、という方が非常に多いです。

そういう背景もあって大腸ガンも増えてくるのでしょうね。

 

みなさん、大腸ガン検診は必ず受けましょう。

便の検査をするだけですから。痛くもかゆくもありません。

 

それで異常がなくても、便秘の症状があれば一度は大腸カメラを受けることを僕はお勧めします。

 

大腸ガンは早期に発見すればほとんどの場合再発せずに治りますので。

(検診で防げるガンと防げないガンがあります。大腸ガンはほとんどの場合、防げます。)

 

ガンの怖さは僕らは十分わかっているつもりです。

いいですか?男性のみなさん。迷ったら消化器内科を受診してくださいね。

 

ポイント

大腸ガンはなめてはいけない。迷ったら必ず受診してください。

 

 

忘れてはいけないもう一つの病気はパーキンソン病(レビー小体型認知症)です。

 

パーキンソン病は神経の病気で、手の震えやうまく体が動かないという症状が出現します。

現時点では完全に治すというのは難しく、薬で治療しながら上手に付き合っていく、という病気です。(レビー小体型認知症も同じです。)

 

これらの病気は手の震えや体が動きにくいといった症状の前に

便秘嗅覚異常

の2つの症状が出やすいことが多いと言われています。

 

医学的に言うと、αシヌクレインと言う物質が初期には脳ではなくて大腸に蓄積されることが最近判明したようです。

 

つまりこれらの病気の初期には、体の動きにくさなどはなく、便秘だけを訴えて病院を受診する可能性があるということです。

 

なので検査をしたけれでも大腸ガンなどの病気もなく、通常の便秘薬も効きにくい、という場合はパーキンソン病やレビー小体型認知症の可能性が否定できないので、慎重にフォローしていく必要があるのです。

 

こういった方には

体の動きにくさや手の震えなどありませんか?

と定期的にお聞きするように僕はしています。

便秘だけでなく、嗅いも感じにくくなったら要注意!

 

60〜70歳くらいで初めて便秘になられた男性はこの2つの病気には注意が必要です。

迷ったら一度受診することをオススメします。

 

今日は以上です。

ではでは〜

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医