今日は直腸瘤という病気について勉強していきましょう。

直腸が膣の方に向かって飛び出してしまっていますね。
この直腸が前に飛び出している部分を直腸瘤といいます。
ポケットみたいに見えるので、直腸ポケットと呼ばれることもあります。
特に便を出そうとして息んだ時に前の方に飛び出して、このポケットにスポッと便がはまり込んでしまうんです!
なのでいくら頑張って息んでもうまく便が出せません。
その結果トイレが終わった後でもいっつも便が残った感じがするのです。(残便感と言います。)
この病気の方は、1日に何度もトイレにいく傾向があります。
よくある医者と患者さんの会話は
だいぶ見落とされている病気です、直腸瘤は。
どうして直腸瘤になってしまうか?
直腸と膣の間にある壁が弱くなってしまうことが原因です。
直腸に比べて膣のほうが力が弱いので膣側に飛び出してくるというわけです。
ちなみに弱くなってしまう原因には、妊娠や出産、加齢、排便する時にすごく息む習慣がある、などがあります。
基本的には中年以降になる病気ですがたまに30代の女性もいらっしゃるようです。
あ、女性の病気ですからね。直腸瘤は。
ごく稀に男性もいらっしゃるみたいですが、ちょ〜レアです。
どんな症状が出るかというと2パターンあって、
1つ目は便秘や残便感。
2つ目は膣からポコっとしたものを触れる。
です。

どうやって診断するか?
症状が出るほどのものなら、指で触ればわかります。
具体的にはお尻の穴に指を入れて、お腹側をくいくいっと指で触って
ポケットがあるように感じれば直腸瘤の可能性が高いです。
ご自身でもできるかもしれませんね。
あんまりやりたくないとは思いますが。
実はあんまりにも症状がひどい人は自分で膣側から手で抑えて便を出している人もいらっしゃいます。
ご自身で自然に体得されているんですねえ。
ここまでいっちゃうと手術しないと治らないです。。
とゆうか早く病院へいきましょう。
一番大事な検査は排便造影検査です。デフィコグラフィーと呼ばれるものですね。
デフィコといったりします。
患者さんに簡易トイレに座ってもらい、便を出してもらっているところをレントゲンでパシャパシャ撮ったりビデオで撮ったりします。
実際にビデオとか写真をとるわけではなくてレントゲンでとります。
なので白黒です。
ちなみに本物の便じゃなくて擬似便と呼ばれるものです。
検査前に専用のチューブを使ってお尻の中に擬似便を入れておくのです。
おからとバリウムを混ぜて作ったりします。
この検査は大事です。
ものすっごい大事です。
なので羞恥心はあるのは重々承知していますが、みなさんに協力してもらわなければなりません。
デフィコについては
をご覧ください。
デフィコに代わる検査はMRIがありますが、MRIは座って撮れないので信憑性が乏しいです。
だって、寝ながら排便なんてできないですよね?
トイレは考える人のポーズでやるのがいいんです。(便秘にいいのは和式トイレ?洋式トイレ?を参考にしてください。)
デフィコで息んだ時に、直腸が前の方に飛び出しているのをキャッチできれば診断確定です。
内科的治療にはどういうのがあるかというと、
まずは運動、食事、睡眠をしっかり整える。
その上で、薬物治療です。便を柔らかくする薬や便の量を増やす薬、直腸を刺激する座薬などを使うことが多いです。
それでもダメならバイオフィードバック療法を行ってみるのも一つの手です。
ただ、すごく効果的というわけではないので、
「一回やってみましょか〜」という感じで行うことがあります。
ちなみにバイオフィードバック療法というのはお腹とお尻にセンサーをつけて筋肉の動きを見るものです。便をする時には腹筋には力が入っているけれども、肛門の力は抜けている必要があるのでしたね。
バイオフィードバック療法は検査と治療を同時に兼ねている優れものです。
バイオフィードバック療法については以下の記事を参考にしてくださいね。
これでダメなら手術を考えます。
・デフィコで直腸瘤の大きさが2cm以上の時。
・デフィコで擬似便がたくさん残る時。
・その擬似便は、指で膣や会陰を圧迫して排出したら残便感が失くなる。
直腸瘤があってもデフィコで擬似便をしっかり出し切れていたら、手術する必要がないかもしれませんもんね。
手術するかどうかは相談になります。
なぜなら手術をしても100%症状がよくなるわけではないからです。
もちろん残便感や便秘が改善する人が多いです。
でもどれくらいよくなったかは人によってまちまちです。
それに手術というのはどんなものでも合併症というものがあるので、
なんでもかんでも手術すればいいというわけではないのです。
ここら辺が難しいところですねえ。

1膣側から補強する
2肛門側から補強する
基本的にはどちらも肛門挙筋という筋肉をしっかり縫い付けてあげることで補強します。
ただ、膣側から補強する場合は、メッシュというものを入れ込むことで補強する場合もあります。
一番多いのは膣側から肛門挙筋という筋肉を縫い付ける方法ですが、患者さんにとってもっとも良い方法をその都度選ぶことになります。
例えばまだ30代と若くて、これから子供が欲しいとか性行為を行うという場合は膣側から手術をしてしまうと支障が出てしまう可能性があります。
なので内科的治療で様子を見るか、肛門側から手術を行うという選択肢が現実的かなあと思います。
成績がいいのは膣側から行う手術ですので、基本は膣側から、上のような例だと肛門側から行うというのがスタンダードになっています。
・排便困難型では直腸瘤の可能性あり。
・とにかくデフィコで診断。
・まずは内科治療。ダメなら手術。
・手術は2パターンあり、どれを選ぶかはその都度考える。
以上です。お疲れ様でした。
ではでは〜。