今日は便秘の基礎講座ということで、お腹の中がどうなっているか
について簡単にお話をしたいと思います。
便秘をすぐに治したいという気持ちはよくわかりますが、そのためには多少の知識が必要です。
食事に関する知識や運動の方法、マッサージの方法なども当然大事ですが、どんな薬が便秘を引き起こしたり、どんなサプリメントや薬が便秘を治すために必要なのかなどなど
勉強することはものすごく大事です。
特に便秘に精通している医者が少ない以上、自分で勉強するんだという気持ちが大切です。
便秘LABOでは便秘や下痢に関わるいろいろな知識について解説し、もっと詳しく掘り下げていくつもりですが、そのためには皆さんにも少しは勉強していただく必要があります。
勉強しないと楽しくないですしね。
薬や便秘の病態を理解していくには、まず体に関する基礎について最低限知っておく必要があります。
なので今回は簡単にですが、お腹の中がどうなっているかについて解説していきたいと思います。
まず下の絵を見てください。

人のお腹の中はこんなふうになっています。
お腹の中は大まかにいうと消化器の臓器、泌尿器系の臓器、婦人科系の臓器の3つに分かれます。
もちろん婦人科系の臓器は女の人にしかありません。子宮や卵巣のことです。
泌尿器科系の臓器は腎臓、尿管、膀胱です。
この絵ではわかりやすく泌尿器系の臓器と婦人科系の臓器は省略してあります。
そして消化器系の臓器は大きく消化管と肝胆膵(かんたんすい)に分かれます。
肝胆膵(かんたんすい)とは肝臓・胆のう・すい臓の3つの頭文字をとったものです。
便秘に直接関わるのは消化管ですので、今回は消化管について理解していただければOKです。
消化管は口から始まって食道➡︎胃➡︎十二指腸➡︎小腸➡︎大腸➡︎肛門という一本の管になっています。
一本道というのがミソです。
全部で9メートルくらいあるとても長い一本道です。
では小旅行に行ってみましょう!
まずは口に入った食べ物は噛むことで細かく分解されます。
噛むことで唾液が出るので、唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素が
デンプンを麦芽糖に分解します。(全部ではないですが)
そのあと食道というトンネルを通って胃の中に送り込まれます。

口から食道の一番下までで40cmくらいです。
普通はさっと胃まで到達しますが、食道にガンがあったり、運動機能の異常があると食べ物がうまく胃まで運ばれないことがあります。
食べ物は胃の中に入ります。

胃の中には胃液がたくさんあります。胃液には胃酸という強力な酸があり、食べ物だけでなく、細菌やウイルスなどもしっかり倒してくれます。
ちなみに酸性度はどのくらいかというとPH1.5くらいなのでめちゃくちゃ強力です。
逆流性食道炎ってお聞きになったことがありますか?
テレビCMでもおなじみかと思いますが、最近はこの病気に対して胃酸を抑える薬を使います。
昔はガスターとかを使うことが多かったのですが最近はPPI(プロトンポンプインヒビター)という薬を使うことが多いです。
さらに最近はPCAB(ピーキャブと読みます。)と言って、さらに胃酸を抑える薬も使われるようになっています。
これだけ胃酸を抑えてしまうと体の中で弊害が出てしまうのは当たり前ですよね。
なのでこの手の胃酸を抑える薬を漫然と飲み続けることはお勧めできません。
この薬で慢性的に腸炎が起きてしまい、原因不明の下痢と言われている人は意外と多いです。(Collagenous Colitisという病気です。また今度説明します。)
胃ではペプシンというタンパク質を分解する酵素が分泌されるので
タンパク質を分解できます。
胃の中で食べ物はたくさんシャッフルされて次の十二指腸に運ばれます。

十二指腸も小腸の一部ですが、すごく大事な部位なので別枠で扱います。
十二指腸は小腸の入り口で、通常胃カメラの検査で観察できるのは十二指腸の途中までです。
十二指腸っていう名前の由来は手の指を横にして12本並べたくらいの長さだからです。
十二指腸には胆汁とすい液が流れ込んできます。
胆汁は肝臓で作られる液で、便秘とは深い関係があることは以前に説明しました。
詳しくは胆汁酸って何?〜胆汁酸は便秘の神様?〜を参考にしてください。
胆汁は脂肪の分解に深く関わっていて、脂肪を水になじみやすいミセルという形にしてくれます。胃では全く分解されなかった脂肪がここに来て初めて分解され始めます。
ちなみに胃の出口が胃がんとかで封鎖されている人は、胃の中が胃液や食物残渣で充満しているのですが、この水面には脂肪滴がたくさん浮いています。
やっぱり胃の中では脂肪は分解されないんですね。
もう一つはすい液です。
すい液はすい臓で作られます。
すい液は強力ですよ〜
すい液にはアミラーゼとかリパーゼとかいろんな酵素が含まれていて、今までに消化されたものをさらに吸収しやすい形に分解してくれます。
胃の中は胃酸がたくさんあって強い酸性だという話はしたと思いますが、
この胆汁とすい液はアルカリ性なので、ここで中和してくれます。
すい臓がんの手術(特に膵頭部ガンと言います)ではここを丸っととってしまうためいろんな害が出てしまいます。
十二指腸の次は小腸です。

小腸は大きく2つに分かれていて、前半は空腸、後半は回腸と言います。
食べ物が空腸に入るとここでも消化酵素がたくさん存在していて、吸収できるほどの小ささまで食物を分解します。
空腸では消化、後半の回腸で吸収します。(大きく分けると)
回腸は食べ物の吸収というすごく大きな役割を担っています。
食べ物からとった炭水化物、脂肪、タンパク質はここでほとんど吸収され尽くします。
中心静脈栄養と言って、栄養分を太い血管から補わないと生きていけなくなることも多いんや。
・口から入った食べ物は9メートルもの長い旅をする。
・胃や十二指腸、小腸ではそれぞれ役割が決まっている。
・最終的には回腸でほとんどの栄養分が吸収される。
そして最後が便作りにもっとも重要な大腸です。
少し長くなってきたので次回にします。
ではでは〜