便秘・下痢

便秘の基礎講座②

 

前回に引き続き、便秘の基礎について解説していきます。

便秘の基礎講座を読んでからこちらをご覧ください。

 

前回は小腸まで解説しましたね。

 

今回は大腸について説明します。

 

大腸は長さ1メートルから1.5メートルくらいの長さがあります。

基本的にはたくさんの水分と少しのビタミンを吸収してくれる臓器です。

 

一言で言うならばうんち製造工場です。

 

 

小腸は6メートルくらいあるのに十二指腸、空腸、回腸の3つにしか分けられていません。

 

大腸は1メートルから1.5メートルくらいしかないのに場所によってたくさん名前がつけられています。

 

 

一つずつ一緒に見ていきましょう。

これがすごく簡単に描いた大腸の絵です。でも本当は日本人のほとんどはこんなに綺麗な形をしていません。

 

もっともっとごにょごにゅぐるぐるした形をした人が多いです。

 

特に便秘に悩んでいる方は大腸の形が複雑なことが多いです。

ちなみに大腸CTとか大腸のバリウム検査を受けるとご自身の大腸の形を知ることができますよ〜。

 

まずは虫垂から見ていきましょう。

「ちゅうすい」と読みます。

この細い管のことを虫垂と言います。

虫垂炎って聞いたことがありますでしょうか?

いわゆる「モウチョウ」のことです。

あのお腹が痛くなる病気です。

みなさんがモウチョウと呼ぶところは実は虫垂という場所です。

基本的に虫垂はほとんど仕事はしていないと言われていますし、便を作ることに関してはまず仕事はしていないと考えてよいと思います。

 

こちらが正真正銘のモウチョウです。

盲腸自体にはそこまで機能はありませんが、バウヒン弁と呼ばれる大事な弁があります。

回盲弁とも言われるものですが、回腸と盲腸をつなぐ弁という意味です。

小腸の最後の回腸末端と呼ばれる場所と盲腸をつないでくれていて、なおかつ一度大腸に入った食物残渣や大腸内の腸内細菌が回腸に逆戻りしないように防いでくれています。

 

このバウヒン弁はめちゃくちゃ大事です。

この機能がなんらかの理由で弱ってしまったり、手術で切除されてしまったりすると大腸から小腸に簡単に逆流してしまい、色々な不具合が起きてしまいます。

 

あとバウヒン弁とか回腸末端には病変が出やすいことが知られています。

リンパが豊富な場所なのでいろんな病気が出やすいんですね。

 

なので大腸カメラを行うときは特に注意して観察します。

少しでも病気を疑う所見があれば生検と言って、組織をとって顕微鏡の検査に出すことが多い場所でもあります。

 

盲腸の次は上行結腸です。

虫垂や盲腸はすこーし特殊な場所なので上行結腸からがやっと大腸という感じがしてきます。(個人的には)

 

盲腸や上行結腸は後腹膜といって、体の後ろ側に固定されています。

ちなみにあとで出てくる下行結腸と直腸も後腹膜に固定されています。

 

つまり、固定されていないのは本来は横行結腸とS状結腸だけなのです。

 

でも生まれつき、上行結腸、加工結腸がお腹の後ろ側に固定されていない人たちがいます。

 

その人たちは総腸間膜症と言っていわゆる落下腸と呼ばれる人たちです。

 

IBSと落下腸(総腸間膜症)についても参考にしてみてくださいね。

 

 

こうなってしまうと固定されているのは盲腸と直腸だけなのでぶらんぶらんです。

 

大腸全体がくっしゃくしゃになって骨盤の中にねじ込まれてしまうので便秘になってしまうのです。

 

上行結腸の時点では便はほとんどなく、ほぼ水分という状態です。

ここから大腸が水分を吸収しながらこねこねと便をこねて固形にしていくんです。

 

次が横行結腸です。ここでも便をこねこねして水分を吸収していくことに変わりはないのですが、何と言っても横行結腸は形の個人差が大きいです。

 

下にだらーんと垂れている人もいればくるっと回転している人もいます。

 

大腸カメラをやっていて、この人は難しいなと思うときはだいたい横行結腸が長い人ですねえ。

 

 

横行結腸の次は下行結腸です。

下行結腸までくるとだいぶ便が固形になってきます。

下行結腸も本来は後腹膜に固定されているはずですが、生まれつきぶらぶらしている方がいます。

総腸間膜症の方は心してマッサージを頑張る必要があります。

マッサージに関してはマッサージは便秘に本当に効果がある?を参考にしてください。

 

 

下行結腸の次はS状結腸です。

ここは横行結腸とともにもっとも可動性のある部分であり、本当に千差万別です。

 

S状結腸に運ばれた便はもう普通の固形便で、大蠕動という大きな運動刺激がくるのを待ちます。

それで1日に数回訪れる大蠕動がくると一気に直腸に流れ込んで便になって出るのです。

 

 

 

最後が直腸です。

今説明しましたように便は基本的にS状結腸に溜められるので、通常便意がなければ直腸は空っぽのはずです。

 

なので便意がないのに直腸に便があるというのは普通ではありません。

 

排便困難型の便秘などの病気を持っている可能性が高まります。

 

直腸はガンが多い場所でもあるので注意が必要ですよ。

 

 

 

以上簡単に盲腸(虫垂も)〜直腸まで説明しました。

最後になりますが、大腸が便を作り出して排出することにおける胆汁酸との関わりについて触れておかなくてはいけません。

 

胆汁酸が大腸に流れ込んでくれるおかげで大腸の動きが活発になり、しかも大腸の粘膜に働きかけて粘液をたくさん分泌させてくれるのです。

 

粘液があることで便はつるっと排出することができるんでしたね。

この辺りは胆汁酸って何?〜胆汁酸は便秘の神様?〜を参考にしてくださいね。

 

まとめ

・大腸は基本的にうんち製造工場

・大腸は場所によって色んな名前がついている

・大腸は固定されている場所とぶらぶらの場所がある。

・胆汁酸は超がつくほど大事

 

便秘の基礎知識について駆け足で解説していきました。

他のブログを読んでわからないことがあればここに戻ってきて確認していただけると幸いです。

 

ではでは〜

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医