便秘・下痢

消化酵素剤って何?便秘とか下痢と関係ある?

 

今日は消化酵素剤という、皆さんが普段聞きなれない薬剤について解説したいと思います。

 

 

消化酵素剤って何やねん?

 

という感じですが、市販のものやと

キャベジンなどに含まれています。

 

 

古い薬が多く、最近の薬ではリパクレオンという薬くらいしかありません。

 

ちなみにリパクレオンは日本ではひどい慢性膵炎や膵臓癌の手術後の脂肪便に対して使うことがほとんどです。

 

僕ら世代の医者は消化酵素剤としてはリパクレオンくらいしか使うことがないんやないかな〜と思います。

 

僕も最近までリパクレオン以外は処方していませんでした。

 

 

でもある論文をみてこれは使った方がいいんやないかなと思い、最近はよく処方しています。

 

もうひとつ世代が上の開業医の先生がたはリパクレオン以外の消化酵素剤をむしろ使われることが多いかと思います。

 

ちなみに消化酵素剤について簡単に説明しておくと

 

人間の体は食べ物を食べた後、それを消化して吸収するというステップが必要です。

 

食べ物にはデンプンとかタンパク質とか脂肪が含まれています。

 

それぞれそのままの形では吸収できないので、それを消化する必要があります。

 

消化に必要な酵素が消化酵素です。

 

具体的にはアミラーゼとかプロテアーゼとかリパーゼとかいう名前がついています。

 

何か聞いたことある名前やないですか?

 

その消化酵素をブタとかウシの体から取り出して製剤にしたものが消化酵素剤です。

 

 

なので珍しいですけどブタとかウシのアレルギーの人は飲まない方がよいです。(リパクレオンはブタアレルギーの方のみやめた方がよいです。)

 

 

どんな時に飲むのがよいかというと、

なんか胃の調子おかしいわあ

とか

消化悪い気がするわあ

とか

そんな感じの方が飲む薬です。

 

 

ちなみに僕はそのような症状を訴える方々にも処方はしますが、もっと積極的な意味で使う場合があります。

 

それはSIBO(シーボ)という病気を疑った時です。

 

色んな原因で小腸の中に細菌がたくさん繁殖してしまい、その細菌たちがガスを出したり、色んな悪い物質を出して

その結果便秘になったり下痢になったりお腹がはったりする病気です。

この病気についてはまた別の機会にまとめる予定です。

 

 

 

今日のブログの元ネタは

 

我が国で処方可能な各種消化酵素製剤の特徴とそれに応じた使い分けという慶應義塾大学の洪先生の書かれた論文です。

 

 

どんな論文かというと

リパクレオンはヨーロッパでできた新しい薬で高い薬やけど、昔からあるほかのやっすい消化酵素剤で十分補充できてるんちゃうの?

 

ということをテーマにした論文です。

 

じつは日本とヨーロッパでは薬の強さの測り方が違っていて、それをしっかりと同じ基準ではかったら意外と昔からあるやっすい消化酵素剤もいけてるんちゃうんか、という話です。

 

内容に移ります。

 

食べ物は消化管の中をすすんでいくのですが、消化管の場所によってPH(酸性度)が変わって行きます。

PHはペーハーって読みます。

 

例えば胃の中はとても酸性度が高いのでpHは1.5くらいです。

逆に小腸の中ではpHは8くらいまで上がります。

ちなみに中性は7くらいなので1.5というとだいぶ酸性度が強いです。

 

このpHでは昔の消化剤は効果がいいけどリパクレオンはあかん

とか

逆にこのPHでは昔の消化剤はあかんけどリパクレオンはええ

とか

そんなことを議論しています。

 

ちなみに昔の消化剤の名前を具体的に挙げるとこんな感じです。

昔の消化酵素剤

・エクセラーゼ

・オーネスN

・タフマックE

・日局パンクレアチン

・パンクレリパーゼ←これがリパクレオンのこと

・フェルターゼ

・ベリチーム

・ポリトーゼ

 

この中で

おっ!こいつはデータとしてええんちゃうんか?と思ったのは

オーネスN

でした。

 

もちろんリパクレオンは効果がすごいんですけど、そもそも薬の値段が高いんですよ。

 

オーネスとか昔の消化酵素剤は安いんで、そこまで効力に差がないならオーネスとか使いましょうよ

 

っていう話です。

 

ちなみに今僕が勤めている病院ではリパクレオンの他にはエクセラーゼしかありません。

オーネスの方が良さそうですが、エクセラーゼでもまずまずって感じですね。(エクセラーゼは食物繊維を分解する力は強いです。)

 

病院には何個も何個も同じような薬をおけないシステムになっているんで仕方がないことなんですけどね。

(自分で申請して案が通れば変えられます。ただ、労力が必要です。。)

 

 

この論文では、

昔からの消化酵素剤も十分いけてますぜ

もっと使って行きましょうよ

安いし

最近は胃の調子が悪い人は胃酸を強く抑え込む薬ばっかりやけど、それやと消化が悪くなるし逆に消化酵素剤で消化をよくしてあげましょうよ

 

っていう感じの結論でした。

 

(参考までに言っておきますと、この論文ではPHごとに薬を比べているんですが、そのPHの値は数個しかありません。本当は消化管の中は逐一PHがかわっていくのでもっと全体で議論できるようにするべき。そのためには新しい試験方法が必要やと書いてあります。)

 

胃が重いけど医者にもらった胃薬は全然聞きませんわ、っていう人はぜひ飲んでみるといいですね。

 

あとはさっきも取り上げましたけど、SIBO(シーボ)を疑ったら内服してもらったほうがいいと思います。

 

今までどこの病院にいっても原因の分からなかった便秘や下痢の人はSIBOの可能性があるので、この薬が治療薬の一つとして使える可能性があります。

 

なかなか古き良きもの的な視点で書いた論文は珍しかったので、紹介させていただきました。

 

ではでは〜

まとめ

・消化酵素剤は見直されるべき存在

・新しい高い薬もわるくないけど、ほとんどの症例では昔の消化酵素剤で十分でしょ

・とゆうかリパクレオンは適応外で使われすぎている

・胃の具合が悪い人は胃薬でダメならはやめにやめて消化酵素剤を使ってみましょ

 

 

 

 

 

 

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医