便秘・下痢

落下腸とかねじれ腸って何?

落下腸とかねじれ腸って何?

今日は下剤を飲むと痛みがでてしまうタイプの便秘についてお話ししたいと思います。

まずはこちらの動画を見ていただくと後の解説もわかりやすくなるかと思いますのでお勧めです。

 

実際にこの手の患者さんはたっくさんいらっしゃいます。

 

特に若い女性に多い印象がありますねえ。

 

まず皆さんに安心していただきたいのが、

 

痛みのある便秘は、痛みのない便秘よりも良くなる可能性が高い

 

ということです。

 

 

いやいや痛い方が苦しいし、痛みが無い方がましやろ〜

 

って声が聞こえてきそうですけど、そんなことありません。

 

普段から便秘になると痛みがでるとか、下剤を飲んだら痛くなるという方は

大腸自体はしっかり動いている

ことがほとんどです。

 

つまり大腸にハリがあるということです。

 

逆にいうと下剤を飲んでもうんともすんとも言わない方は大腸の動きが鈍くなっている可能性が高いです。

 

 

こっちは高齢の方に多い印象で、治すのが難しいです。

 

大腸の動きをよくする薬もありますが、一度動きの鈍くなってしまった大腸の目を覚まして、ぐいぐい動くように持っていくのは時間がかかります。

 

ポイント

便秘になるとお腹が痛くなる人、下剤を飲むとお腹が痛くなる人は、腸はしっかり動いている可能性が高い。

まずは大腸ガンを否定しよう

それでは具体的にどうすればいいのか?

 

若い女性はとりあえずおいておいて、

 

40歳くらい以上の方はまず大腸ガンを否定しましょう。

 

大腸ガンで閉塞していれば、消化管一本道なので便は出ません。

 

大腸ガンで道が塞がっている状況で下剤を飲んでも、もちろん便は出ないし、出たとしても細い便がちょろっとでるか、下痢になります。

 

 

それですめばいい方で、最悪大腸の内圧が高まって破裂してしまう恐れもあるので注意が必要です。

 

 

なので40歳以上くらいの方で便秘+腹痛があって大腸の検査を受けたことがない人は病院にかかることをお勧めします。

 

検便の検査(便潜血検査といいます。)もしくは大腸カメラを受けましょう。

 

ポイント

ただの便秘と思っていたら大腸ガンだった、という可能性もあるので40歳を越えたら一度は検査を受けましょう。

 

腸の形の異常

ここからは大腸に腫瘍や炎症などの病気がない前提で話をしていきますね。

 

じゃあ実際に下剤を飲んでお腹が痛くなる人や、ふつうに便秘でお腹が痛くなる人はどんな人が多いかという話をしていきます。

 

単刀直入にいうと

大腸の形がおかしい

ひとが多いです。

 

 

どういうこと?

大腸の形なんてみんな同じじゃないの?

 

と思われるかもしれませんが、大腸の形は人それぞれ違います。

 

大腸はいわゆるの「の」の字のイメージがあると思いますが、日本人できれいな「の」の字の形の大腸を持っている人は少ないと言われています。

 

ちなみにヨーロッパの方々の腸は綺麗な「の」の字をしていることが多いみたいですよ〜

 

これが大腸のデフォルトです。

みんなこんな形をしていれば困らないんですけどね〜

 

では大腸の形がおかしい人はどんな形をしているかというと

 

こんな感じに右側(画面でいうと左側)がぐるっと巻いていたりとか

 

 

 

右側だけじゃなくて左側もぐるっと一周してたりだとか

 

 

色んなところでぐるぐるしたりだとか

 

おんなじ場所で2回転したり、もうわけがわからなくなっている人もいます。

 

大腸と便の関係は実はものすごく物理的な関与が大きいので、

ぐるぐる回っていたり、ねじれていたりすると当然便は出にくくなります。

 

車だってまっすぐな国道の方がグネグネした山道よりも進みやすいですよね。

 

 

では、どうやったら自分の腸の形がわかるかというと

大腸のバリウム検査大腸CTという検査を受ければわかります。

 

そんな検査なんか受けたくないわ

という方はただのお腹のレントゲンでも多少わかります。

正確に全部がわかるわけではないですが。

 

 

そして実は大腸CTではわからないけどお腹のレントゲンならわかる腸の形の異常があります。

 

大腸CTは結構お金がいります。たしか3万円くらいやったと思いますが、お腹のレントゲンはもっと安いです。

 

お腹のレントゲンは安いしそこそこ優秀なんですよ。

 

 

どんな形の異常がレントゲンでわかるかというと

総腸間膜症(そうちょうかんまくしょう)というものです。

 

 

いわゆる落下腸とよばれるもので、寝ているときは普通の形をしているんですが、立っているときは大腸が重力の影響で全部下に落ちちゃうんです。

 

寝ているときは普通の形です。

 

これが立った瞬間に

 

 

なんか窮屈そうですよね。

なんでこんなことが起きるかというと

 

黄色の丸で囲った場所(画面の左が上行結腸、右が下行結腸といいます)が普通は生まれつきお腹の後ろに固定されているのですが、なぜか固定されずぶらぶら浮いている人がいます。

これを総腸間膜症というんです。

漢字で書くとけったいな漢字がしますが、ようは腸がぶらんぶらんですよ

ということ。

 

立っているときは重力に逆らえず、下の方に押さえつけられることになります。

 

せまいところ(骨盤内といいます)に大腸がぎゅーぎゅー詰めにされているので、動きにくいは動くと痛いわで便秘になってしまうので、腹痛が出てしまうんですね。

 

ちなみにぽっこりお腹の女性っていらっしゃいますよね。

 

痩せているのに立つと下腹だけ出る方はこの総腸間膜症の可能性があります。

 

 

 

このように腸の形の異常はたくさんあります。

 

 

大腸の形の異常があるひとが刺激の強い下剤を飲んでしまうと痛みが強くでてしまうというわけです。

 

落下腸やねじれ腸の治療

じゃあどうすればいいの?

という話になると思うんですが、

 

まずは運動とマッサージです。

 

全然医学的ちゃうやんか

 

と思うかもしれませんがこれがめちゃくちゃ大事で、歯磨きと同じくらいの感覚で毎日やる必要があります。

 

毎日?めんどくさっ

 

と思われるかもしれませんが、腸の形は基本的には一生変わらないので(お産や急にやせるなどで変わる人もいます。)一生付き合っていく覚悟が必要です。

 
 

 

便秘でしんどいのにそれどころじゃないよと思われるかもしれませんが、家に引きこもっているとますます悪化してしまいます。

 

ちなみに運動は腰をよく捻るものがよいと言われています。

テニスとか特にいいと思います。

 

 

マッサージについては

マッサージは便秘に本当に効果がある?

を見てください。

 

何度もいいますが下剤で痛みが出るタイプの方は、腸の形の異常の可能性があるので刺激の強い下剤を飲まないことをお勧めします。

 

飲むのであれば便を柔らかくする薬にしましょう。酸化マグネシウムとか。

他にも最近はいっぱいいい便秘薬が出てきているので病院で相談すると良いです。

 

間違ってもコーラックなどは飲まない方がいいですよ〜

 

ご自身の腸の形を知りたければ病院に一度かかることをおすすめします。(消化器内科がいいですよ)

 

まとめ

・便秘になると腹痛があったり、下剤を飲むと痛くなるひとは腸の形の異常が原因の可能性がある。

・このタイプの方はなるべく刺激の強い下剤は飲まない方がいい。

・運動とマッサージを習慣化しましょう。

・下剤を飲むならマグネシウムなどの便を柔らかくする薬にしましょう。

 

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医