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便秘に使う漢方薬のオススメはこれだ!!
今日は便秘改善のために使われる漢方薬について説明していきます。
結論からいうと
便秘に対しては大建中湯(だいけんちゅうとう)という薬以外はほとんど使いません!!
言ってしまいましたね。
なぜ大建中湯以外は使わないのか?
逆になぜ大建中湯は使えるのか?
について説明していきたいと思います。
僕が大建中湯以外の漢方薬をあまり使わない理由
①エビデンスレベルの高いものが少ないから
こんなことを言っちゃうと漢方薬が好きな先生に怒られてしまいそうですが、決して漢方薬を否定している訳ではありません。
使い方によってはいい薬やと思っています。
ちなみにエビデンスとは科学的根拠のことです。
要はちゃーんと研究して、その治療を行う裏付けがありますってことです。
漢方薬を使う国は限られているので、エビデンスレベルが高くなりにくいんですよね。
日本って実は特殊な国なんです。
漢方薬がすごく身近な薬になっていますよね。
(薬と思っていない人が多数)
②便秘薬として漢方薬を使う場合、ほとんどにダイオウが含まれているから
大黄(ダイオウ)
お聞きになったことありますか?
ダイオウはセンナなどと一緒で刺激系下剤の一つです。
刺激系下剤は文字どおり、大腸を刺激して無理矢理便を体の外に出す薬です。
ちなみにダイオウが入った漢方薬を使い続けると、大腸の粘膜は茶色に変色してノビノビになってしまいます。(ピンク色が正常です)
これを大腸偽(ぎ)メラノーシスと言います。
大腸がノビノビになって、うまく動かなくなる
➡︎さらに刺激が必要になる
➡︎刺激薬を増量せざるをえない
➡︎さらに大腸はノビノビに・・・
悪いサイクルに入ってしまうんです。
医学的に認められていないほどたくさんの量をご自身で飲まれていることが多々あります。
こうなってしまうときついですよね。
こんな風にしてしまった僕ら医療者も悪いので、責任を感じます。
こんなことになる前にどこかのタイミングで病院に来てくれてたら
ってよく思います。
ちなみにダイオウなどの刺激系下剤と呼ばれるものは、依存性や常習性があります。
肉体的にも精神的にも蝕まれてしまうんです。
怖い怖い。
ただ、一つだけ言っておくと、大腸偽メラノーシスは、刺激性下剤をやめて年月がたつと元に戻ることが多いと言われています。
なので今からでも遅くないです。
悪いサイクルは断ち切れるんです。
③甘草(カンゾウ)を含む薬が多いから
カンゾウも有名な成分です。
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)とかが有名ですね。
カンゾウも便秘薬として使われる漢方薬によく含まれています。
カンゾウを使い続けるとどうなるか?
偽アルドステロン症という病気になってしまう可能性があります。
カンゾウは腎臓の中の尿細管(にょうさいかん)と呼ばれる場所に働きかけて
ナトリウムイオンを吸収してカリウムイオンを排出するのです。
その結果体の中のカリウムイオンが少なくなって
低カリウム血症と呼ばれる病態を引き起こしてしまう可能性があるのです。
低カリウム血症は実際に診療していてよく遭遇します。
とってもありふれています。
低カリウム血症になるとどうなってしまうか?
まず体の筋肉に力が入りにくくなってきます。
さらに放っておくと心臓の筋肉もおかしくなってきて、不整脈がガンガンでます。
最悪致死的な不整脈が起きて死んでしまう場合もあります。
本当に怖いですね。
ちなみに低カリウム血症では腸の筋肉も力が入りにくくなって便秘になります。
さらにひどいと麻痺性イレウスと言って腸閉塞みたいに全く腸が動かなくなってしまいます。
便秘改善のために漢方薬を使っているのに低カリウム血症のせいで便秘になってしまう。
皮肉です。
・科学的根拠の乏しいものが多い。
・刺激系下剤であるダイオウを含んでいるものが多い。
・カンゾウを含んでいるものが多い。
漢方薬は薬じゃない!!
なぜかこんなふうに考えている人が多いのは事実です。
なんででしょうね?
なので僕は患者さんにどんな薬を飲んでいるかお聞きするときは
三段階で聞いています。
「お薬は何か飲まれていますか?」
「漢方薬は飲まれていますか?」
「サプリメントは飲まれていますか?」
こんなふうに言うとしっかり答えてくれることが多いです。
実際にどんな漢方薬が便秘に使われる?
・大黄甘草湯
・麻子仁丸
・潤腸湯
・桂枝加芍薬大黄湯
・防風通聖散
・大建中湯
・桂枝加芍薬湯
この他にもあると思いますが、ざっとこんな感じです。
これだけでも使い分けるのは結構難しいですよ。
じゃあどうやって分類すればいいのか?
これは先ほど申し上げたように
ダイオウとカンゾウがどれくらい入っているかで考えるのが良いと思います。
下の表をみてください。
ちなみにこの表は中島先生の文献から拝借させていただきました。
ダイオウ | カンゾウ | |
大黄甘草湯 | 4グラム | あり |
麻子仁丸 | 4グラム | なし |
潤腸湯 | 2グラム | あり |
桂枝加芍薬大黄湯 | 2グラム | あり |
防風通聖散 | 1.5グラム | あり |
大建中湯 | 0グラム | なし |
桂枝加芍薬湯 | 0グラム | あり |
漢方薬の中でも大建中湯が重宝される理由
大建中湯は前にあげた3つの条件をクリアしています。
つまりエビデンスレベルがそこそこ高い。
ダイオウを含んでいない。
カンゾウも含んでいない。
なんか良さそうでしょ?
ここからは大建中湯について簡単に説明していきますね。
まず大建中湯はどんな成分でできているかというと
・山椒(サンショウ)
・乾姜(カンキョウ)
・人参(ニンジン)
・膠飴(コウイ)
この4つでできています。
ダイオウもカンゾウも入っていませんね。
大建中湯の適応は
お腹が冷たくて、張りやすい人
です。
大建中湯が一番よく使われているのは
お腹の手術後の腸閉塞予防
です。
お腹の手術、特に開腹手術のあとは腸の動きが一過性に悪くなってしまうんです。
あとは手術の後って、腸とその周りの組織がくっついてぐちゃぐちゃになりやすいので(癒着ゆちゃくと言います)、癒着予防にも使われます。
なので外科の先生が好んで使うイメージです。
どんな便秘の人に大建中湯を使うべきか
一言でいうと
腸が動いていなさそうな人
に積極的に使います。
糖尿病で神経障害が出ているとか
パーキンソン病や他の神経の病気で全然腸が動いていないとか
結構威力ありますよ。
ちなみに大建中湯は
小腸と大腸のどちらを動かすと思いますか?
あるいはどっちもでもいいですけど。
答えは小腸です。
小腸をガンガン動かしてくれるんですね。
じゃあどうやって小腸を動かすか?
少し小難しい話をすると
アセチルコリンを分泌させて副交感神経を活発にしたり
モチリンを分泌させて小腸を動かしたり
CGRPやADMと言う物質を作って小腸を栄養する血管を拡張させて、結果的に小腸に行く血流を多くしたり
こんなふうに色んな作用で小腸を動かしてくれるんです。
腸を無理矢理刺激するんじゃなくて、あくまでも自然な形で動かしてくれる薬って重宝しますよ。
ガスモチンとか
セレキノンとかもそうです。
小腸の動きが悪くなると細菌が異常に繁殖してSIBO(シーボ)と言う病気になってしまうんで、小腸の動きをよくしてくれる薬は貴重です。
ちなみに大建中湯とガスモチンやセレキノンを一緒に使うこともよくあります。
・大建中湯は小腸の動きを良くしてくれる。
・他の漢方薬とは一線を画している。
・腸を無駄に刺激せず、動かしてくれる薬は貴重
大建中湯は副作用も少ないイメージですが、たまに体に合わない人がいますね。
だるさが出てしまったり、逆にお腹が不調になってしまったり。
そういう方は粘らずに中止したほうがいいです。
他にも便秘薬はいっぱいあるので。
大建中湯は安全と言えどもやっぱり薬は薬なので副作用はあるということを覚えておいてください。
・便秘改善に漢方薬を使うなら大建中湯がオススメ
・他の漢方薬を使っても良いが、ダイオウとカンゾウには注意が必要
・ダイオウは依存性があるのでなるべく使わないことをオススメ。
ではでは〜