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よくわからないお腹の張り、便秘、下痢、腹痛の原因はSIBO だった?
今回はSIBOについて説明したいと思います。
SIBOって何やねん?
という話から始めたいと思います。
今まで病院にかかっても便秘や下痢、お腹の張りの原因がわからないと言われた方はこのSIBOという病気の可能性があります。
SIBOって一体どんな病気?
SIBO=Small intestinal bacterial overgrowth
小腸内細菌増殖症
シーボと呼ばれることが多いです。
僕のブログを普段読んでくださっている方は、なんとなくお聞きになったことがあるかもしれません。
どんな病気かというと、
小腸の中で腸内細菌がたくさん増えてしまう病気
です。
腸内細菌って聞いたことありますよね?
皆さんが普段から使われている腸内細菌という言葉は、基本的には大腸に住んでいる腸内細菌を指すものと考えてもらってよいです。
腸内フローラ(フローラとはお花畑のこと)とか。
実は健康な人の小腸の中にも腸内細菌はいます。
ただ、大腸の中の腸内細菌と比べると圧倒的に少ないんです。
小腸の中の細菌は1ccあたり1000から100万
大腸の中の細菌は1ccあたり1兆個から10兆個
くらいです。
小腸の中でも十分多いやないかと思うかもしれませんが、大腸とは桁が全然違いますね。
この小腸の中の腸内細菌が何倍も増えてしまって体にいろんな異常が起こってくるのがSIBOという病気です。
定義としては簡単ですね。
SIBO=小腸の中の細菌が異常に多くなる病気
海外では研究がたくさん行われていますが、日本ではそこまで普及した考えではありません。
比較的新しい考えなので正直なところ
これがSIBOや!!こうやって診断して治療するんやで!!
みたいにしっかりと定まったものがないというのが現状です。
そもそも小腸はすごく長い臓器で(6メートルくらいあります。)、今まで検査する方法がなかったため、あまりよくわからない臓器とされていました。
(小腸が何かよくわからない方は便秘の基礎講座を参考にしてくださいね。)
しかしここ最近、新しい内視鏡が発売されたり、カプセルを飲み込むだけで小腸の中を見ることができるようになったりして、いろいろ研究が進んできた、という段階です。
なのでSIBOもこれからどんどん病気の概念が定まっていって、検査や治療方法も確立していくと考えてください。
これから詳しくSIBOについて説明していきますが、この前提は忘れないようにしてください。
・SIBOは小腸の中で腸内細菌が異常に増える病気。
・小腸は最近になってようやく研究がすすんできた。
・SIBOはまだまだ分かっていないことが多い。これからもっと色々なことがわかってくるはず。
SIBOではどんな症状がでる?
1、ガスでパンパンになって痛い。
2、短鎖脂肪酸が多すぎてお腹が正常に動かず痛みや便秘、下痢が出現する。
3、リーキーガット症候群になっていろんな症状が出る。
4、栄養不良によりいろんな症状が出る。
それでは一つずつみていきましょう。
ガスでパンパンになって痛い
小腸で腸内細菌が異常に繁殖するとどうなるか?
ある種類の炭水化物を腸内細菌が食べて、発酵させます。すると水素ガスやメタンガスとよばれる気体を作り出してしまうんです。
小腸がガスでパンパンになるともちろんお腹が張って苦しくなりますよね。
小腸はもともとガスがあまり出ない臓器なので、ガスに慣れていないんです。
なので張りに弱いので痛みが出やすいんですね。
ちなみにですが、
下痢になるか便秘になるかはある程度お腹にたまるガスの種類で決まっているそうです。
例えば
水素ガスが多い人は下痢気味に
メタンガスが多い人は便秘気味に
みたいな感じです。
どんな種類の腸内細菌が多いかで決まるんでしょうね。
2、短鎖脂肪酸が多すぎてお腹が正常に動かず痛みや便秘、下痢が出現する。
小腸の中の腸内細菌が食べ物を食べた時に水素ガスやメタンガスと一緒に作り出す物質があります。
これを短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)と呼びます。
これも僕のブログで何回か出てきている言葉ですね。
具体的には酪酸や乳酸、酢酸などです。
みんな酸がついているのですっぱそうな名前ですね。
この脂肪酸は、本来は腸を動かしてくれて便秘を解消してくれるとってもいいやつなんです。
でもこの量が増えすぎると悪いことをしてしまうんですね。
腸の中の酸度があんまりにも強くなってしまうと、腸の動きがストップしてしまうんです。
腸がガスでパンパンなのに、さらに腸の動きが止まってしまうとガスを体の外に出せずにますますお腹が痛くなってしまいます。
3、リーキーガット症候群になっていろんな症状が出る。
これだけならまだいいのですが、小腸っていう臓器は実は基本的にほとんどガスがない臓器ですね。
CTを見るとよくわかるんですが、正常な人の大腸には空気がよくたまるのですが、小腸には少ししかありません。
なのでCTやレントゲンを撮影して、小腸にたくさんガスがたまっていると腸閉塞という病気を疑ったり、SIBOなどの小腸の病気を考えなくてはいけません。
小腸に水素ガスやメタンガスがたくさんたまるとどうなるか?
先ほども言いましたが、小腸はそもそもガスがたくさんたまっても良いように作られた臓器ではないので、パンパンになると粘膜に傷がつきます。
パンパンになったりしぼんだりを何度も何度も繰り返すことで小腸の粘膜にダメージが蓄積します。
もともと小腸では栄養分を吸収するような仕組みがあるので、ちいさな穴ぼこが開いています。
しかし、その穴がどんどん大きくなっていって、結果的に本当は通してはいけいない毒素や腸内細菌、まだまだ消化しきれていない食べ物を体のなかに入れてしまうんです。
これは大問題です。
毒素や腸内細菌が血管の中に入ったりしたら体に悪いということは簡単にイメージできますよね?
(ちなみに血管の中は本来無菌です。)
これをリーキーガット症候群と言います。
どこかででてきましたね?
リーキーガット。
そうです。便秘薬アミティーザのブログで説明しましたね。
読んでいない方は一度読んでみてくださいね。
リーキーガットを直訳すると
リーキーは漏れる、ガットは腸で
漏れる腸
です。
いろんな物質が体内に漏れ出ちゃうんですね。
リーキーガットも比較的新しい概念ですが、まだまだこれから研究がすすんでいく領域です。
ちなみに血管の中に細菌や毒素が入り込むと人間の体はそれをやっつけるために抗体(こうたい)と呼ばれるものをいつもよりたくさん作るようになります。
そうすると、自分の体を作ってくれている正常な物質に対しても間違えて抗体を作ってしまうことがあるんです。
自分で自分を攻撃してしまう。
この病気をまとめて自己免疫性疾患(じこめんえきせいしっかん)といいます。
自己免疫性疾患はたーくさんありますが、一般の方には聞きなれない名前が多い病気です。
有名なものやと関節リウマチですね。
4、栄養不良によりいろんな症状が出る。
あと、忘れてはいけないのが栄養障害です。
小腸の粘膜が傷ついてしまうことは説明した通りです。
小腸の粘膜がダメージを受けると、アミノ酸を含めた色んな物質がうまく吸収できなくなります。
そうなると栄養状態が悪化することは当然の結果ですね。
それだけならまだいいのですが、異常に繁殖した腸内細菌も上から流れ落ちてくる食物をばくばく食べてしまいます。
ダブルパンチですね。
はっきり言ってたーくさんの栄養素を吸収できなくなるので、ここですべてをお伝えするのは難しいです。
強いて一つあげるなら
ビタミンB12ですかね。
腸内細菌がこのビタミンB12をばくばく食べてしまうわけです。
ビタミンB12をうまく体に取り入れなくなると
貧血になったり
痺れが出たり
体のバランスがとれなくなったり
わかっていただきたいのは、人間の体の中で栄養分を吸収する臓器は小腸である
ということです。
この小腸がSIBOのようにうまく機能しなくなると、本当に色んな症状が出てしまうということを理解してください。
ここまでよろしいですか?
今まで過敏性腸症候群(IBS)と言われていた人はSIBOの可能性がある。
今まで読んでいて、
あれ?っと思った方はいらっしゃるかもしれません。
というのも、SIBOで引き起こされる症状は
膨満感 腹痛 下痢 便秘
そうですよね。IBSとSIBOは症状がそっくりなんです。
今までIBSと診断されていた人が、実はSIBOやったという可能性があります。
ただ、
SIBOがIBSそのものなのか?
SIBOのせいでIBSになるのか?
IBSのせいでSIBOになるのか?
正直まだわかっていません。
今後この辺りもわかってくると思います。
論文によってもどれくらいのパーセンテージでSIBOとIBSが同じかというデータもまちまちです。
84%という報告もあれば10%という報告もあるようです。
どんだけ幅がでかいんや・・・
という感じもありますが、新しい病気の概念ができるときはどんな病気でもはじめはこんな感じなんでしょう。
でも今までIBSと診断されていて、もうできる治療はありませんと言われていた人にもまだ治せるチャンスが残っていると思うとウキウキしてきますね。
・今まで原因不明の腹痛や腹部膨満と言われていた人はSIBOの可能性がある。
・SIBOではお腹の症状以外にも痺れや様々な症状が引き起こされる。
・IBSとSIBOはとても似ている。
SIBOの原因は何?
SIBOの原因はいろいろあると言われています。
ただ、やっぱりまだまだわかっていないのが現状で、下に書いたものも確定とは言いれないと僕は考えます。
とりあえずざっと挙げてみますね。
・消化管の運動障害
・慢性膵炎
・胃酸の減少
・胃腸炎の後
・抗生剤治療
・食事内容
・胃腸の物理的な問題・バウヒン弁の異常
SIBOの原因①消化管の運動障害
消化管の運動障害、つまり
胃腸の動きが悪い人
です。
胃から大腸まで、特に小腸が蠕動運動を頑張っているおかげで腸内細菌が小腸に繁殖しにくくなっているのです。
どういうことか?
水の流れと同じですね。
流れが速い川とほとんど流れがない静かな池。
どちらが住みやすそうですか?
静かな池の方がおそらく住みやすいですよね?(もちろん色んな条件があります。あくまでもイメージの問題です。)
小腸も同じで、蠕動が止まってしまうと細菌が繁殖しやすく、どんどん小腸が動くと細菌が大腸まで簡単に流されてしまうんです。
なので何かしらの理由で小腸の動きが止まってしまうとSIBOになりやすいということです。
よくあるのが薬の副作用と全身の病気です。
まず薬の副作用から説明します。
薬の副作用で腸の動きがストップしてしまうのですね。
例えば抗コリン薬が有名です。
抗コリン薬は風邪薬やアレルギーの薬にも入っているので注意が必要なんでしたね。
他にも精神科の薬などたくさんあります。
腸は色んな薬の影響を受けやすい臓器ということです。
もう一つは全身の病気です。
・糖尿病
・パーキンソン病などの神経の病気
・膠原病(こうげんびょう)
・甲状腺の病気
・アミロイドーシス
などなど。
いっぱいありますね。
ここでは一つ一つ解説することはやめておきますが、糖尿病やパーキンソン病は特に有名ですね。
糖尿病にかかっている方はめちゃくちゃ多いので、かなりの数の患者さんがSIBOにかかっている可能性があるということです。
パーキンソン病の便秘を治すのも至難の技であるという話は、僕のブログで何度かさせて頂いているかと思います。
SIBOの原因②慢性膵炎
慢性膵炎(まんせいすいえん)は膵臓に長い間炎症が起こってしまう病気です。
原因としてはアルコールが多いです。
他には胆石や遺伝、自己免疫(自分で自分をやっつけてしまう病気でしたね。)などが原因として考えられます。
ちなみに女性では特発性と言って、原因不明のことも多いです。
膵臓には内分泌(ないぶんぴつ)機能と外分泌(がいぶんぴつ)機能があります。
何のこっちゃという感じですが、
内分泌というのはインスリン(血糖を下げる)などのホルモンを分泌するということで
外分泌というのは消化酵素を小腸に分泌するということです。
膵臓と小腸はすごく密接に働きあっているので、膵臓に炎症が起こってうまく機能しなくなると小腸にも影響が及ぶのは当然のことですね。
慢性膵炎ではSIBOが多いというのもうなずけます。
SIBOの原因③胃酸の減少
胃酸の減少がSIBOの原因になっている可能性は高いです。
2018年1月に発表されたメタアナリシス(かなり信頼できるものです。何個もの研究結果を統合して分析したものです。)で
PPIという胃薬とSIBOは中等度関連があるということが示されました。
ちなみにPPIとはプロトンポンプインヒビターのことで、
タケプロンとかネキシウムという薬が有名です。
最近では胃薬として処方されることがすごく多いんじゃないかなと思います。
いや、むしろ使われすぎている
と僕は思います。
このPPI(ピーピーアイと読みます)という薬は胃酸を思いっきり抑制するので
胃酸が減ってしまうんです。
胃酸というのはめちゃくちゃ酸度が強いという話は以前させて頂いたと思います。
もちろん酸度が強いのにはちゃんと意味があります。
食べ物を消化するのはもちろん、
ばい菌をやっつけてくれるのです。
めちゃくちゃ酸度が強い中で生き残るのには特殊な能力がいるんです。(ピロリ菌は特殊能力があります。)
なので食べ物に含まれる細菌たちはまず胃酸で殺されるのです。
しかし胃酸が減っている状況では細菌を叩き切ることができないんです。
そのまま小腸に細菌が流れていき定着してしまう
というわけです。
なので
何でもかんでも胃が痛かったらPPIというのは間違っています。
SIBOの原因④胃腸炎の後
これは意外かもしれませんが
ひどい胃腸炎にかかった後もなかなかお腹の調子が戻らない
ということを僕らは日常診療でよく経験します。
急性腸炎後の過敏性腸症候群(IBS)もこれと同じ現象を見ている可能性があります。
いろいろな原因で急性胃腸炎の後に小腸がうまく動かなくなってしまい、腸内細菌が小腸に住み着いてしまうのです。
飛んだ災難ですね。
SIBOの原因⑤抗生剤治療
抗生剤はみなさんが思っているよりも破壊的な力を持っています。
抗生剤を飲むと、腸の中を焼け野原にしてしまいます。
悪い菌だけボコボコにしてくれればいいんですが、体に良い菌もろともやっつけてしまうんです。
もちろん腸内細菌のバランスが崩れてしまい、小腸の中の腸内細菌のバランスも変化してしまいます。
その結果SIBOになる可能性があるのです。
腸内細菌の観点から言っても抗生剤を飲むのはあまりお勧めできないということです。
ちなみにみなさんは風邪をひいた時に抗生剤を飲まれますか?
絶対やめてくださいね。
もしかかりつけのお医者さんが風邪に対して抗生剤を処方するようなら、その病院には近づかない方がいいかもしれませんね。
風邪の話をしておくと
咳、のど、鼻の3つの症状がそろって熱が出ている時はほとんどの場合風邪です。(風邪というのはウイルス感染です。細菌とは違います。)
このうちどれか一つの症状だけ突出している時は、ただの風邪じゃない可能性が高いと言われています。
例えばのどや鼻症状が全然ないのに、咳がすごくひどくて熱が出ている場合。
これは急性肺炎の可能性があります。
逆にのどの症状だけやたら強い時は細菌性の咽頭炎や甲状腺炎などが疑われます。
鼻症状だけ強い時は細菌性の副鼻腔炎という病気かもしれません。
こういう場合には抗生剤が考慮されます。
いいですか皆さん?
安易に抗生剤を飲むとえらい目にあいますよ。
自分の体は自分で守りましょうね。
SIBOの原因⑥食事内容
まずSIBOの原因の一つは食べ過ぎ。
腸内細菌がばくばく食べて、どんどん太っていくのをイメージしてください。
どんどん水素ガスとかメタンガスを出して、お腹がパンパンになっちゃいます。
もう一つはFODMAP(フォドマップ)を食べ過ぎ。
FODMAPについてはまたの機会にしっかりと説明しますが、簡単に言うと
腸で吸収しにくい炭水化物
のことです。
具体的にはオリゴ糖、乳糖、果糖、ポリオールのことを指します。
小腸で吸収しにくいFODMAPを腸内細菌が食べてガスを出しまくってしまうんですね。
なのでSIBOが疑われる人やIBSと言われている人はFODMAPの少ない食事をとるのがいいと思います。(実はSIBOに対してはエビデンスは低いです。)
SIBOの原因⑦胃腸の物理的な問題・バウヒン弁の異常
まずは胃腸の物理的な問題です。例えばガンなどの腫瘍で詰まってしまったりして、うまく食物が流れないときにはSIBOになりやすいと言われています。
胃腸は一本道なので、どこかが詰まってしまうとどうにもこうにもならなくなってしまうのでした。
具体的にどんなことが物理的な問題として考えられるのか、リストアップしておきますね。
・腫瘍
・お腹の手術後の癒着(ゆちゃく)
・放射線治療の後の癒着
・炎症性腸疾患( IBD)による狭窄
・お腹の手術で変なふうに胃腸をつないでしまった
ではバウヒン弁の異常について説明します。
バウヒン弁って何かわかりますか?
回盲弁とも言われるものですが、回腸と盲腸をつなぐ弁です。
小腸の最後の回腸末端と呼ばれる場所と盲腸をつないでくれていて、一度大腸に入った食物残渣や大腸内の腸内細菌が回腸に逆戻りしないように防いでくれています。
詳しくは便秘の基礎講座②をみてくださいね。
例えば大腸ガンや虫垂炎の手術でこの部位を切除してしまったり、炎症性腸疾患(IBD)という病気でバウヒン弁が炎症でボロボロになって、ぽっかり開いた状態になってしまうと
腸内細菌が常に症状に逆流してしまい、SIBOになってしまう
という理屈です。
これはなかなかえぐいですね。
炎症性腸疾患(IBD)ならうまく治療できれば治る可能性もありますが、一度切除してしまったら元には戻せないですからね。
なかなか治療が難しくなってしまいます。
ざっと駆け足でSIBOの原因について解説させていただきました。
難しかったですか?
分からなければ何度か読み返してくださいね。
・SIBOの原因はたくさんある。
・SIBOを防ぐためにも無駄に抗生剤や胃薬を飲まない。
・食事内容だけでなく、量も重要。
まだ聞いていなかった気がします。
SIBOの診断
SIBOと診断するためには大きく分けて2つ方法があると考えてください。
ひとつは小腸の腸液を培養する方法
もうひとつは呼気検査と呼ばれる方法です。
①小腸の腸液培養
②呼気検査
まずは小腸の腸液培養から説明します。
どうやって行うかというと、小腸の腸液を採取してそれを培養するんです。
原理は簡単ですが、なかなか辛い検査です。
鼻から小腸の中に長いチューブを挿入して、そこから腸液を回収してきます。
鼻からチューブを入れられるというのはかなり辛いです。
自分やったら・・・
ぞっとしますね。
その回収した腸液を培養するのですが、そもそも腸内細菌は嫌気性菌といって酸素に弱いものが多いので、全部が全部ちゃんと培養することはできないのです。
なので正確な細菌の数を測定することは困難、と言われています。
しんどい上に正確さに欠けるのであれば普及しないですよね。
なので呼気試験がSIBOの診断に使われることが多いです。
どんな試験かというと
朝から絶食にして頂いた上で
ラクツロースという糖分を飲んで頂きます。
ラクツロースを腸内細菌が食べると水素ガスやメタンガスを発生させる。
➡︎腸に流れる血液がガスを吸収する。
➡︎血液が流れ流れて肺に到達する。
➡︎水素ガスやメタンガスが呼気としてでてくる。
➡︎呼気に含まれるガスの量を測定する。
こんな感じです。
20分ごとにガスを測定して合計3時間かかります。
けっこう大変ですね。
しかも保険適応ではないので原則は
自費
です。
値段設定は病院やクリニックによって違うので注意が必要ですし、そもそもこの検査を行なっている施設はかなり少ないです。
ここまで説明しておいて申し訳ないですが、
まだまだこの検査はSIBOの診断を確定させるほどの能力はありません。
文献によってその診断率もマチマチです。
うーむ。
難しいですね。
夢のある検査なのでこれからどんどんデータがたまって、ゴールドスタンダードになることを願っています。
現時点での僕のスタンスとしては
SIBOは病歴と画像所見で疑うようにしています。
・お腹が張る、便秘や下痢がある。
・SIBOの原因で挙げたような病気の既往がある。
・CTやレントゲンで小腸ガスが目立つ。
・内視鏡検査ではっきりした胃腸の異常がない、もしくはちょっとだけ炎症がある。
これらが揃ったらSIBOを疑うようにしています。
データはないですが、個人的にはこれでもそこそこ診断率は高いんじゃないかなと思います。
僕はこんな感じでSIBOと診断しています。
SIBOの治療
治療は5つのステップで説明するでえ。
①細菌を減らす。
②小腸を強くする。
③原因を取り除く。
④元気な小腸を維持する。
⑤栄養補充(必要があれば)
①細菌を減らす
細菌を減らすというのは理にかなっていますよね。
SIBOというのは小腸で異常に細菌が増殖してしまう病気でしたよね?
なので正常な量まで腸内細菌を減らしてあげればいいんです。
それには2つの方法があります。
一つは抗生剤です。
2つ目は食事療法です。
1抗生剤
2食事療法
まずは抗生剤から説明します。
今までのSIBOの説明を理解されている方は???
となっているかもしれません。
抗生剤はSIBOの原因になるって言ってたやん!
と思いますよね?
そうです。一見矛盾していますが、一度SIBOになってしまったら一回リセットしてしまうのがいいんです。
抗生剤にはリファキシミンという薬が一番使われます。
この薬はほとんど体内に吸収されないので、腸管だけに効果を発揮してくれる比較的安全な薬です。
でも問題があります。
リファキシミンが使われるのは海外での話なんです。
日本では肝性脳症という病気、つまり肝臓が悪くなってその結果意識状態がおかしくなる病気にしか適応がないんです。
なので現状、日本では使えません。
じゃあどうするか?
他の抗生剤を使うしかないですよね?
例えばネオマイシン、メトロニダゾール、アモキシシリンクラブラン酸などの抗生剤が使われることがあります。
色々制約はありますが、
やれる範囲でやっていく。
これ大事です。
二つ目の食事療法という手段もあります。
これは簡単です。
絶食にすればいいんです。
食事がこなかったら腸内細菌も餓死してしまうので、撲滅できそうですね?
ただ、ずっと絶食にしていると栄養状態が悪くなってしまうので、入院して点滴をするなどの処置が必要ですね。
入院なんかできないよという場合は
エレンタール
という栄養剤を飲んでもらいます。
これは成分栄養剤といって消化がほとんど要らない優れた栄養剤です。
小腸からの吸収がすごく良くて、腸内細菌の餌になりません。
エレンタールは通常量でも1日に1800キロカロリーはとれるのでなかなか良いですよ。
ちなみにエレンタールはSIBOに効果があるという科学的根拠がしっかりあります。
一番良くエレンタールが使われるのはクローン病という病気です。
炎症性腸疾患(IBD)の一つで、食事療法がものすごく大事な病気です。
②小腸を強くする
そうです。小腸を強くしてあげればいいんです。
簡単ですね。
腸内細菌を減らして、小腸を強くすればいいんです。
言葉でいうのは簡単ですが、なかなか難しいんですけどね。
・がんがん小腸を動かしていく
・小腸に優しい薬を使ってあげる
・食事療法
・プロバイオティクス
まずは小腸をガンガン動かす方法について説明します。
まずはしっかり寝ましょう。
しかもお腹を空かせて寝ましょう。
というのも小腸の運動(MMCといいます)はお腹がすいているときに活発になるからです。
このMMCという小腸の運動は、小腸の中の腸内細菌を大腸へ流し込んでくれるのです。
MMCを自然に起こさせるにはお腹を減らした状態で寝る、
これが一番いいんです。
実際、外来診療で
睡眠不足になってから胃腸の調子がおかしくなった
という人はよくおられます。
睡眠は大事ですよ。
そのほか小腸の運動を活発にするために
薬を飲むのもよいです。
僕がここに挙げた薬は比較的安全なので、ある程度の期間飲み続けても問題はないかと思います。
間違ってもセンナとか大黄みたいに刺激系の下剤はのんじゃだめですよ。
つぎは小腸に優しいクスリを使ってあげる、について説明します。
小腸を守ってくれる薬はそんなに種類がありません。
ここでは2つ挙げますね。
・アミティーザ
・ムコスタ
この2つの薬は小腸を守ってくれる可能性があります。
アミティーザに関しては
を参考にしてください。
ムコスタは皆さんも飲んだことがあるかもしれません。
どんな時によく使われるかというと
痛み止めでロキソニンを処方されたときに
医者に「胃薬も一緒にだしておきますね〜」と言われたことはないですか?
このロキソニンと一緒に出される胃薬こそがムコスタです。
ムコスタは小腸を守ってくれるクスリでもあるんですね。
次に食事療法について説明します。
ここで紹介する食事療法とは
低FODMAP療法です。
過敏性腸症候群(IBS)に対して行われる食事療法ですね。
原理的に考えると僕は効果があると思っているのですが、SIBOに対してはしっかりとしたエビデンス(科学的根拠)はまだないようです。
(ちなみにIBSに対してはエビデンスがあります。)
うーむ。
まあでも迷ったらやってみればいいと思います。
ただ、低FODMAP療法を続けるのはかなり難しいので、
意識だけしてみる。
というのも悪くないと僕は思います。
例えば僕らが日常的に食べているお米。
これは低FODMAP食です。
逆に小麦は高FODMAP食です。
なので、なるべくパンやパスタなどは食べずに主食はお米にする。
これだけでも随分変わるんでないでしょうか?
これくらいなら続けられそうですよね。
次はプロバイオティクスについて説明します。
乳酸菌やビフィズス菌のことですね。
抗生剤で叩き切ったあとに飲むといいと言われています。
一回焼け野原にして綺麗なお花だけ植えていくイメージです。
プロバイオティクスだけではSIBOの発生は抑えられないという報告がありますが、SIBOの患者に使うと腹痛はある程度抑えられて、呼気試験のデータもよくなるようです。
ただ、下痢は抑えられないみたいですけどね。
まあでも、迷ったら使えばいいんちゃいますか?
④原因を取り除く
これは大事ですよ。
なんでもそうです。
上っ面だけ治してもだめやということです。
といってもなかなか難しいですよね。
例えば慢性膵炎が原因でSIBOになっていたとしたら、
慢性膵炎を治すってことですもんね。
根本的な解決は難しそうですね。
でもやれることはあると思います。
お酒が原因ならまず断酒するとか
胆石が原因なら胆石を除去するとか
自己免疫が原因なら抑える薬を内服するとか
色々できそうでしょ?
糖尿病が原因ならしっかりと食事制限して糖尿病のコントロールをよくするとか。
PPIという胃薬や痛み止めのロキソニン、睡眠薬などを飲んでいるならやめる努力をするとか。
もっというと胃腸の物理的問題でSIBOになるという話をしましたが、
お腹の手術で変なふうに胃腸をつないでしまう場合があります。
特に随分昔に手術をした方に多いです。
その場合はもう一度手術をして胃腸を良い形につなぎ変えることもできます。
余談ですが、3年前くらいに経験したのが
原因不明の低栄養があります
と言って他の科の先生から紹介がありました。
原因を探るために「まずは胃腸のカメラでもやりましょか」と言って、胃カメラをやると
何と胃と大腸が直接繋がれていたのです。
なんか口からうんちの臭いがするなあと思ってたら
つまりそういうことでした。
この方は再度お腹の手術を行って胃と小腸をつなぐ手術をすると、
みるみるうちに栄養状態が良くなりました。
これは極端な例ですが、
つまり原因をしっかり取り除くということが大事やということです。
取り除けるものは取り除いてしまいましょうね。
④元気な小腸を維持する
これめちゃくちゃ大事です。
なんでか?
SIBOは再発率がすごく高い病気なのです。
リファキシミンで治療を行い、成功した後
80人中44人が1年後に再発したという論文があります。
半分以上ですよ。
異常に高いですね。
ちなみに再発したのはどんな人かご紹介しておきます。
・虫垂を切除した既往のある方
・高齢の方
・PPI(胃薬)を慢性的に飲んでいた方
今までにご紹介した、積極的に腸内細菌をやっつけたり原因をとりのぞいたりする治療のことを医学的に
寛解療法(かんかいりょうほう)と呼びます。
逆に治ってから再発を防ぐ治療のことを
維持療法(いじりょうほう)
といいます。
この2つを分けて考えるのが医学的には普通なんですよね。
維持していくには
規則正しい生活をこころがけてください。
これが大原則です。
その上で少しの薬剤に頼っていくのが正しい維持療法やと
僕は考えます。
⑤栄養補充(必要があれば)
必要があればと書いたのには訳があります。
それは
SIBOはかなり重度にならないと栄養障害を起こさない
と言われているからです。
その頃には血液検査でもわかるくらい栄養障害がでていると思います。
どんな栄養を補充すれば良いかというと
・・・ここでは言い尽くせません。
というのも血液検査データなどをみながら、その都度栄養補充は考えていくものやからです。
あえて一つだけご紹介すると、ビタミンB12というものはSIBOでは欠乏しやすいとお伝えしたと思います。
このビタミンB12は内服薬を処方される先生も多いとは思いますが、小腸が原因で欠乏しているときは内服では効果がありません。
注射で補充しないといけないんです。
ビタミンB12はあくまで一つの例であって、他にも考えるべき栄養素はたーくさんあります。
長くなってしまうのでここらへんで終わりにしたいと思います。
・SIBOとは何か、原因や検査方法、治療についてお伝えしました。
・病気として捉えられたのが最近であるので、まだまだデータや論文が多くありません。
・これからどんどん明るみにでると思います。
・今まで原因不明と言われたお腹の張り、腹痛、便秘、下痢の人はSIBOの可能性があります。希望を捨てずに治療をしてみましょう。
以上です。
お疲れ様でした。
ではでは〜