便秘・下痢

プルゼニドなどのセンナを含む薬は便秘解消のために毎日飲んでいい?

 

こんにちは。

 

今日はプルゼニドなどの便秘薬に含まれているセンナや、漢方薬に含まれる大黄について考えていきたいと思います。

 

お付き合いください。

こちらの動画をご覧になってからブログを読むと理解が深まると思います。偽メラノーシスの写真も載せておきました。 

プルゼニドなどのセンナを含む薬は便秘解消のために毎日飲んでいい?

 

毎日飲んでもいいものなのでしょうか?

 

実はこれはなかなか難しい問題です。

 

ゆっくりと考えていきましょう。

 

プルゼニドに含まれるセンナや漢方薬に含まれる大黄ってどんなもの?

 

 

まずセンナや大黄(ダイオウ)というのはどんなものかを説明します。

 

これらは刺激性下剤と呼ばれるもので、大腸を無理矢理刺激することで便秘を改善する薬です。

 

馬にムチを打って走らせるイメージですね。

 

アントラキノン誘導体というものを含むので、アントラキノン系と言われたりします。

 

ちなみにアントラキノン誘導体を含む生薬は以下のものがあります。

 

アントラキノンを含む生薬

・アロエ

・カスカラサグラダ

・ケツメイシ

・センナ

・大黄

 

アントラキノン系の薬剤もたくさん種類があるので下に挙げてみますね。

 

主なクスリ

・プルゼニド

・センノシド

・アローゼン

・セチロ

・ヨーデルS

・アジャストA

・いろんな漢方薬

 

市販の便秘薬やサプリメント、お茶などにはかなりの割合で含まれているので、ご自身で飲まれている商品に、上に挙げた生薬が含まれているかどうかを確認することをお勧めします。

アントラキノン系のクスリは体にいいの?悪いの?

 

結論から言います。

基本的には体に悪いと考えてください。

 

なぜか?

 

習慣性、依存性、薬剤の耐性

があると言われているからです。

 

 

まるで麻薬ですね。

 

体も心も下剤に依存してしまうというわけです。

 

 

混乱させてしまうようで申し訳ないのですが、

実はアントラキノン系下剤の薬剤耐性については明確なエビデンス(科学的根拠)はないようです。

 

ただ、僕の実感としては、やはり同じ量を毎日飲んでいるとだんだん効きにくくなってくる、これはその通りだと考えます。

 

効きにくくなったら飲む量を増やす。

 

また効きにくくなったら飲む量を増やす。

 

こんな風にどんどん内服量が増えていくことがほとんどです。

 

医学的に許された量の10倍とか20倍くらい飲んでいる人もたまに見かけます。

 

怖いですね。

 

こんな大量の薬を飲んで、体に良いわけがないと思いませんか?

 

 

 

 

 

 

 

アントラキノン系の薬がどうやって大腸に作用するかというと

 

例えばセンナを内服すると

 

まず小腸で吸収されます。

➡︎血液に乗って大腸に運ばれます。

➡︎腸内細菌の働きで活性化される。

➡︎腸粘膜に直接刺激を与える。

➡︎腸管の神経にも刺激を与える。

➡︎大腸がガンガン動く。

 

腸粘膜への刺激➕腸の神経の刺激のダブルパンチで大腸を動かしているんです。

 

強そうですね。

 

アントラキノン系の下剤を毎日飲んでいると大腸は「自分は動かなくても大丈夫や。」

と勘違いしてしまいます。

 

ずっとぐうたらしていると、大腸の機能はどんどんどんどん低下していってしまうというわけです。

 

ご高齢の方も筋肉を使わずに寝てばっかりいると立てなくなるじゃないですか?

 

これと同じような感じです。

 

大腸偽メラノーシスってなんだ?

 

実はセンナや大黄などのアントラキノン系のクスリを飲み続けていると、大腸偽(ぎ)メラノーシスになってしまうんです。

 

大腸の粘膜が黒っぽくなってしまうのです。

 

イメージでいうと

色の悪いワニの皮みたいな感じです。

ガンコちゃん

ワニ・・・わからんでもないですね。鱗みたいにも見えるわ。

べんぴ先生

鱗もええなあ

 

ちなみに本来の大腸粘膜の色はピンク〜赤色です。

べんぴ先生

血管も透けて見えるやろ?

ガンコちゃん

確かにさっきは見えなかった。。。

アントラキノン系のクスリを飲み続けているとだいたい1年前後で大腸偽メラノーシスになるという報告もあります。

 

 

なぜ偽(ぎ)と呼ぶか?

 

そもそもメラノーシスというのは皮膚の病気です。

 

メラノーシスはメラニン色素が皮膚に沈着することでおきますが、

大腸ではリポフスチンという物質が粘膜に沈着することでおきます。

 

見た目は似ていても、沈着している物質が違うので偽(ぎ)とつけるのです。

 

ちなみに大腸偽メラノーシスはアントラキノン系の下剤を休薬することで治ることが多いです。

ただこれにも1年くらいかかると言われています。

 

個人差もあるのでもっと早く治る人やもっと長くかかる人もいらっしゃるとは思います。

 

センナや大黄を飲み続けると大腸ガンになりやすい?

 

これは患者さんからもよく聞かれる質問です。

 

答えは・・・

 

 

わかりません。

 

 

まだ詳しくわかっていないのです。

 

大腸に腫瘍ができやすくなるという文献もあれば、全く関連がないとしている文献もあります。

 

それを統合して考えると、

正直大腸ガンになりやすいと裏付ける決定的な根拠はないようです。

 

 

じゃあ飲んでもええやん

 

とは思わないですよね?

 

だって大腸ガンになるリスクも否定できていないんですよ。

 

リスクが否定できていない以上、飲まないのが正解です。

 

 

慢性便秘症診療ガイドライン2017(医者のための教科書のようなもの)にはこのように書いてあります。

アントラキノン誘導体が長期間、大量に投与されれば、大腸腫瘍のリスクを高め、壁内神経叢の障害と大腸運動以上を引き起こす可能性は否定できない。

 

こう書かれるとやっぱり内服しにくいですよね。

 

だって可能性は否定できてないんですもん。

 

僕やったら飲みません。

 

 

 

ちなみになんですけど

こんなこと言うとどこかから怒られちゃうかもしれませんが

 

消化器内科の目線で考えると

あながち悪いことばっかりではありません。

 

偽メラノーシスになるとポリープが見つけやすくなるんです。

 

ポリープの色自体はアントラキノン系の薬を飲んでも変わらないので、周りが茶色になると浮き出て見えるんです。なので3mmくらいのポリープでも結構目立つんですよ。

 

ポリープの見逃しが減るんですね〜。

 

だからと言って飲んでもいいと言っているわけでは全くないですよ。

 

 

今までずっとセンナを飲んできたけど止めると心配。

 

もちろん心配ですよね。

 

わかります。

 

でもやめた方がいいです。

 

 

もちろんいきなりゼロにするのはオススメしません。

 

まず間違いなく便秘になるので。

 

肉体的にも精神的にもセンナのような下剤に依存しているので、急には止めようとすると失敗します。

 

僕が一番良いと思う方法は

他の便秘薬を始めながら、徐々に内服の間隔を延ばしていく

です。

 

これが一番良いです。

 

薬を徐々に止めていく方法には2パターンあると僕は思っています。

 

薬を徐々に止める方法

・1日当たりの飲む量を減らしていく

・1日に飲む量は変えずに投与間隔を延ばす

 

エビデンス(科学的根拠)はありませんが、僕個人の経験として

 

1日に飲む量は変えずに投与間隔を延ばす

 

こっちの方がうまくいくことが多いです。

 

はじめは1日おきに。

慣れてきたら2日おきに。

どんどん間隔を長くしていき、

最終的には

3、4日でない時だけ頓服で飲む。

 

これが理想です。

 

 

そうです。本来はセンナや大黄などの刺激性下剤は頓服で飲むものなんです。

これが正しいです。

 

これを実現するためには

他の便秘薬の助けを借りることが必要です。

 

そんな言われてもどうせセンナがなかったら出ないもん。

 

こんな声が聞こえてきそうです。

 

確かに今まではそうやったかもしれません。

 

 

というのもここ最近まで

便秘薬といえば酸化マグネシウムと刺激性下剤しかなかった

と言っても過言ではないからです。

 

 

でも今は違います。

新しい便秘薬がどんどんどんどん出てきているんです。

 

新しい便秘薬

・アミティーザ

・リンゼス

・グーフィス

・ラグノス

・モビコール

 

お聞きになったことのない名前もちらほらあるんやないでしょうか?

便秘薬ブームがきたんです。

(ちょっと通り過ぎましたけど。)

 

 

こちらも気になる方は参考にしてもらえると幸いです。

 

なので諦める前にこれらの薬を試したり、

マッサージをしたり、

運動をしたり、

やるべきことはたくさんあります。

 

まずはセンナなどの刺激性下剤を止めようとする努力、

いや、そこまでいかなくても頓服に変えようとする努力

が大事です。

 

果たしてみんなセンナを止められるのか?

 

これは難しい問題です。

 

正直なところ、センナや大黄は麻薬と同じなので、精神的・肉体的に依存しきってしまっている方は止められないこともあります。

 

個人的な経験でお伝えすると、

 

成功率は80%。

 

つまり5人に4人は頓服か、もしくは止められます。

 

ただ、残りの1人は残念ながら難しいですね。

 

 

たまに経験するのが、

僕とは薬をやめるように努力しますと約束していたのに、

他のかかりつけのクリニックでセンナをもらっていた。

 

という患者さんです。

 

とても残念な気持ちにはなるんですが、

ここまで依存しているともうどうしようもありません。

 

 

こんなになるまで放っておいた医療者側の責任もあるんです。

もっと昔に良い便秘薬が出ていたら

もっと僕ら医療者が昔に何かアクションを起こせていたら

 

いろんな「もしも」、「たられば」を考えてしまいます。

 

 

そうはいっても全員が全員、薬をやめる必要はないと考えています。

 

医療というのはゼロイチ理論ではないんです。

 

 

例えば90歳の方で、もう寝たきり状態である。

長く見積もっても後1年くらいの余命しかない。

 

 

この場合はどうでしょうか?

 

30歳の健康な女性と同じように考えた方が良いですか?

 

 

そんなことはないですよね。

この方にセンナをいますぐ止めて、違う便秘薬を試していきましょう!!

とはなりません。

 

 

 

このように例外もありますが、ほとんどの場合はセンナなどの刺激性下剤の常用は

やはりお勧めできません。

 

まとめ

 

現時点でセンナなどのアントラキノン系下剤が大腸ガンを誘発するというエビデンス(科学的根拠)はありません。誘発しないエビデンスもありません。

 

ただ、習慣性・依存性・薬の耐性の3点から考えるとやはり止めるべきと考えます。

 

今は新しい便秘薬がたくさん発売され、選択肢も広がっています。

 

まずは刺激性下剤をやめる努力をしてみる、というのが正しいスタンスであると僕は思います。

 

今日のまとめ

・アントラキノン系下剤はなるべく中止。無理なら頓服に。

・アントラキノン系下剤を飲み続けると大腸ガンになりやすいかどうかは不明。

・いろんなサプリメントやお茶に入っており、知らず知らず常用していることが多いので注意が必要。

・特に漢方薬にはほとんど大黄が入っており、お勧めできない。

・いろんな新しい便秘薬を試しながら、一緒にやめる努力をしましょう!!

 

以上です。

お疲れ様でした。

 

ちなみに漢方薬について詳しく知りたい方は

を参考にしてくださいね。

 

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医