便秘・下痢

便秘と貧血ってどんな関係があるの?

 

こんにちは。

今日は便秘と貧血の関係について説明していきたいと思います!

 

 

まず始めに。

便秘➕貧血で考えるべき疾患は本当に多岐に渡ります。

 

そして

この2つの愁訴だけで診断をつけることができる病気は非常に限られているのです。

 

今回ここでお話しする内容は全てを語り尽くせているわけではありませんし、僕の今までの医者としての経験に基づいている部分もありますので、その点はご了承ください。

 

それではお付き合いください。

 

便秘と貧血って関係があるの?

 

そもそも便秘と貧血って関係があるんでしょうか?

 

答えはイエスでもありノーでもあります。

 

一言ではなかなか言えないんですよ。

 

というのは便秘も貧血も、ものすごくありふれたものだからです。

 

便秘と貧血がたまたま同時に起こっていることも多々あります。

 

便秘についてここで語り尽くすことはできませんし、貧血についても同様です。

どちらも何冊も本がかけるほど、奥が深い愁訴ですが、ここで医学の教科書のように羅列して書いたところで全く意味がないので、要点や注意点を絞ってまとめてみます。

 

便秘と貧血の両方に関係がある病気というものもやはり存在するので、それらの病気に絞ってわかりやすく説明していきますね。

 

ちなみにここでは貧血というのは、血液検査でしっかりと証明された貧血のことを指す

と考えてください。

 

立ちくらみがする

動悸がする

などの症状だけでは本当に貧血かどうかもわからないからです。

 

たとえば立ちくらみというのは医学的には起立性低血圧と言います。

 

起立性低血圧は貧血が原因のこともあれば

ただの体質的な問題のこともありますし、

自律神経の障害のこともあれば、

脱水の可能性もあります。

 

なので立ちくらみがあるから貧血である、とは全く言い切れないわけです。

 

 

 

 

それでは便秘➕貧血ではどんな病気が考えられるのか

についてお話ししていきます。

 

まず前提としてお伝えしたいのが、

年齢によって考えるべき病気が全く変わってくる

ということです。

 

どういうことか?

医学では病気を診断するときに大事な考えがあります。

 

 

オッカムのカミソリ、ヒッカムの格言

 

 

 

どういう意味かというと

 

オッカムのカミソリ➡︎いろいろ症状があっても結局のところ原因は一つの病気

 

ヒッカムの格言➡︎いろいろ症状があったら原因はたくさんある

 

 

真逆ですね。

どんな風に考えるかというと

 

50歳以下の人➡︎オッカムのカミソリ

50歳以上の人➡︎ヒッカムの格言

 

つまり

若い人はいろんな症状があっても結局原因は一つであることが多くて、年をとってくると原因がたくさんあることが多い

ということです。

 

なので便秘と貧血の関係性について考えるときにも、年齢がものすごく重要なファクターであることを覚えておいてくださいね。

 

高齢者の便秘➕貧血ではたくさんの病気が考えられますし、そもそも便秘と貧血が全く関係がなくて、たまたま2つの症状があるという可能性もあります。

 

高齢者の場合は便秘➕貧血があるだけでは病気を絞りきることができません。

つまり、それだけではほとんどの場合診断に結びつかないのです。

なので高齢者のお話しはここでは控えさせてくださいね。

 

 

 

あと、

男性と女性を分けて説明させてください。

 

 

というのも男性の貧血と女性の貧血では少し考え方が異なってくるからです。

 

 

 

男性の貧血というのは何か深刻なことが起きている可能性が高く、

逆に女性の貧血はとってもありふれたことなんです。

 

ここは押さえておいて下さいね。

 

まとめ

・年齢によって考えるべき病気が違う

・若い人は一つの病気が原因のことが多く、高齢者はたくさんの原因があることが多い

・男性と女性で考えるべき病気が変わってくる

 

 

男性の便秘➕貧血

それではまず男性から考えていきたいと思います。

 

男性が貧血になったときには

何か悪いことが体の中に起こっている可能性が高い。

こう考えてください。

 

というのも男性には生理がないからです。

 

男性はそもそも貧血になりにくいんですね。

 

なので、

男性が貧血になったら検査を受けるべき。

これは間違いないです。

 

 

男性の便秘➕貧血で一番に考えるべき病気は大腸ガンです。

 

大腸ガンは本当に怖い病気なのです。

 

受けるべき検査は内視鏡検査です。

 

大腸カメラのことですね。

 

誰だって受けたくない検査です。

下剤もたくさん飲まなきゃいけないですし、1日仕事で大変な検査なのは間違いないです。

空気でお腹も張りますし、痛みも多少あります。

 

ただ、もしも大腸ガンを早期発見できれば大腸カメラで治すことができます。

進行癌になっていても早期に手術すれば、治ることも多いです。

 

他のガンと比べると大腸は比較的予後がいいんですね。

 

便潜血検査といって、健康診断で行う便の検査だけでも悪くはないんですが、

便潜血検査では100%の大腸ガンをキャッチできるわけではありません。

 

そもそも便秘➕貧血という明らかな症状があるのであれば、大腸ガンである確率がある程度高いので(少なくとも健康診断を受ける集団に比べれば)、便潜血を受けても大腸ガンを否定できないのです。

(これを医学的には検査前確率が高いと言います。)

 

なので男性で便秘➕貧血があれば大腸カメラを受けてください。

 

1に大腸ガン

2に大腸ガン

3に大腸ガン

 

これくらいのイメージで大丈夫です。

 

あとは便秘がひどい方で、痔のせいで貧血になっている場合があります。

この場合はまず間違いなく血便を自覚されていますけどね。

 

痔もひどくなれば立派な貧血の原因になります。

 

赤血球数が平均男性の半分くらいなくて、輸血しなければならない時もたまにあります。

 

ここまでひどい方は稀ですけどね。

 

でも便秘➕貧血では考えなくてはいけない病気です。

 

 

しつこいようですが、

痔だと思っていたら大腸ガンだったという事例はかなり多いです。

痔と大腸ガンを同時に発症されている可能性だってあるんです。

なので、

くれぐれもご自身で診断することはやめてくださいね。

 

 

あとはお酒をたくさん飲む人は貧血になることが多いです。

葉酸ビタミンB12が足りなくなってしまうことが多いからです。

 

 

ただ、お酒を飲む人は基本的には下痢になる傾向があるので、便秘➕貧血というパターンもありますが、下痢➕貧血の方が多いかもしれませんね。

 

 

 

他にはSIBO(シーボ)と言う病気があります。

 

簡単にいうと色々な原因のせいで小腸の機能がおかしくなっている病気です。

 

あまり知られていない病気ですし、医者の中でも知らない人はたくさんいます。

 

どれくらいの数の患者さんが日本にいるのかもまだはっきりしていませんが、原因不明の便秘の方はSIBOの可能性があります。

 

軽症のSIBOであれば貧血になることは稀ですが、重症のSIBOでは貧血になる可能性があります。

 

詳しくは別のブログでまとめていますので、こちらを参照してくださいね。

 

 

その他にも様々な胃腸の病気や全身の病気が考えられますが、便秘と貧血以外にどんな症状があるのか、貧血以外の血液検査データはどうなっているのか、など様々な角度から診断する必要があるので、この先は病院でご相談ください。

 

腎臓や肝臓、心臓の病気や薬剤の影響など考えるべきことがたくさんあるんです。

男性の便秘➕貧血は大腸ガンを疑え

 

女性の便秘➕貧血

 

女性の場合は話が変わってきます。

 

そもそも

女性は特に病気がなくても便秘になりやすく貧血にもなりやすいからです。

 

女性ホルモンの関係上、女性は便秘になりやすいことが知られています。

 

さらに生理が周期的にくることで、男性よりも貧血になりやすいというのは少し考えたらわかることかと思います。

 

単純に見積もっても4日に1日は血を失っているわけですから。

子宮筋腫などがあって過多月経になっていると、さらに貧血が進みやすいです。

 

生理がひどい方や貧血で悩まれている方は一度婦人科外来に受診されることをお勧めします。

場合によっては子宮筋腫に対する手術や治療などが必要になることもありますので。

 

 

さらに、妊婦さんやピルを飲まれている方は葉酸が不足しやすく、貧血になりやすいと言われています。

 

鉄分も葉酸も不足しやすい女性は、常に貧血のリスクにさらされている

のですね。

 

 

 

なので、男性に比べると女性は便秘➕貧血があっても病気がないということが多いです。

・女性はそもそも便秘や貧血になりやすい。

・便秘+貧血があっても必ず病気があるわけではない。

 

 

ただ、当然注意すべき病気もありますので

これから説明していきたいと思います。

 

女性の便秘+貧血で考える病気

・大腸ガン

・過剰なダイエット

・甲状腺の病気

・お酒の飲みすぎ

・SIBO

 

・大腸ガン

・お酒の飲みすぎ

・SIBO

この3点に関しては男性と同様な考え方になりますので、ここでは省略させて頂きます。

 

過剰なダイエット

 

若い女性は過剰なダイエットをされている方が多いです。

 

そもそも栄養のバランスが崩れていたり、栄養が足りていないというわけです。

 

食べてないのに便がたくさん出るわけがないですよね。

 

ダイエットの正しい方法を理解できていない方が大勢いらっしゃいます。

 

〇〇だけダイエットとか

〇〇抜きダイエットとか

 

あれはほんとにあかんです。

 

本当に痩せたいならしっかりと品数の多い食事を規則正しく食べて、筋肉をつけて、基礎代謝をあげる必要があります。

 

 

ちなみに運動はマラソンのようなほとんど一定のペースで行う有酸素運動よりも、筋トレの方が効果的です。

 

筋トレなんて、そんなボディービルダーみたいにムキムキになりたくないし

 

って思われうかもしれませんが

女性はそもそも男性に比べて筋肉がつきにくいので、普通にトレーニングしているだけではあんな体にはなれません。

 

ボディービルダーの方たちは並々ならぬ食事コントロールとものすごい重量を扱っているのであんな体になれるのです。

 

普通の肉体、精神力では無理ですので安心してください。

 

そしてしっかりと筋トレを行っていればリバウンドしない体になれるのです。

 

 

ダイエットに関しては様々な情報が溢れているので、誤解されている方も多いですね。

 

 

運動もせずに食事を減らしていたら、健康を損ねるのは当然の結果です。

 

 

それだけならいいのですが、わけのわからないダイエットサプリメントや漢方薬を飲んでいる方もいらっしゃいます。

 

本当にやめることをお勧めします。

 

例えば

漢方薬の痩せ薬は

甘草(カンゾウ)と呼ばれるものが入っていることが多いです。

 

体の電解質というバランスが崩れてしまって体が動かなくなってしまう人もいるんです。

最悪呼吸がしにくくなることもあるので命の危険まであります。

 

漢方薬については別のブログでまとめてあるので参考にしてみて下さいね。

 

 

とにかく怪しいサプリメントや巷に溢れている漢方薬をダイエットのために飲むのは間違っています。

くれぐれも控えて下さい。

 

甲状腺の病気

 

甲状腺(こうじょうせん)

どこにあるかご存知ですか?

首の前面にある、ホルモンを分泌してくれる器官です。

 

甲状腺の病気は男女差があって、

女性に多い病気です。

 

甲状腺の機能が落ちてしまう、甲状腺機能低下症では便秘になることが多いとされています。

 

そして

甲状腺と貧血も密接に関わっているのです。

 

 

甲状腺疾患で貧血になる原因

・鉄分の使いすぎ

・葉酸やビタミンB12の利用・吸収の障害

・腎臓で作られるエリスロポエチン産生の低下

・自己免疫性溶血性貧血

・胃潰瘍からの出血

 

厳密に言えば甲状腺機能の亢進と低下で貧血への関与の仕方は違いますが、ざっとこんな感じで関わりがあります。

 

奥深すぎますね。

 

女性は何となく体調が悪いとか、やる気が出ないとか、よくわからない多彩な症状があるときは一度甲状腺ホルモンを血液検査で測定することをおすすめします。

 

ちなみに甲状腺ホルモンを測定するくらいなら、普通の内科にかかってもらえれば可能です。

異常があれば内分泌内科にかかりましょう。

 

まとめ

 

便秘+貧血のまとめ

・年齢や性別で考えるべき病気は違う。

・男性はとにもかくにも大腸ガンを否定してください。

・女性は病気がなくても便秘+貧血になりやすい。

・それでも考えるべき病気はたくさんある。甲状腺異常や過剰なダイエットには注意が必要。

 

 

以上、ざっとですが便秘➕貧血ではどのような病気を考えなくてはいけないか、について解説させて頂きました。

 

先程も言いましたが、便秘も貧血も原因となる病気はたーくさんありますので、体の不調が取れない場合はぜひ医療機関にかかってご相談下さいね。

 

ではでは〜

 

 

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医