こんにちは、べんぴ先生です。
今日は少し怖いお話をしたいと思います。
便秘もこじらせると厄介な病気を引き起こしたり、最悪死に至ることがあります。
僕の臨床経験も含めて解説していきたいと思います。
こちらの動画を見てからブログを読むと理解が深まるかと思います。
ぜひご覧ください。
Contents
便秘で入院することや死亡してしまうことはあるのか?
僕は不安を煽るためにブログを書いているんでは決してありません。
便秘も放置しておくと危ないことがあるので、たかが便秘と思わないでしっかりコントロールしてきましょうね、ということが言いたくて書いています。
今日の話はさらっと聞き流してもらえたら、と思います。
お付き合いください。
大前提として便秘そのもので入院したり死亡するのは稀なことなんやで。
便秘で入院になったり死亡したりするのは、いったいどんな時か?
便秘が原因で病気が悪化したり、新たに病気になったりということは多々あります。
例えば以前にもお話ししましたが、便秘がひどいとトイレで息むのでその分血圧が一気に上がってしまう。
そのためくも膜下出血や心筋梗塞などの血管系の病気にかかるリスクが高くなる
というのは有名な話です。
他にもCOPD(肺気腫)と呼ばれる病気にかかっている患者さんが、トイレで息むと呼吸状態が悪化することも知られています。
便秘で息むことが体にはよくないんやで。無理に息んだらあかんよ。
ちなみにですが、たまに排便の正しい姿勢を知らない方がいらっしゃるので、正しい姿勢で排便しましょうね。
便秘になると大腸の内圧が上がってしまいます。
それによって例えば虚血性腸炎(きょけつせいちょうえん)や憩室炎(けいしつえん)という病気になってしまうことがあります。
・虚血性腸炎
・憩室炎
今日お話しするのはこのような病気ではなくて、もっと物理的な
わかりやすくいうと
硬い大きな便ができることで、
その塊そのものが悪さをする
そんな病気を紹介したいと思います。
糞栓(ふんせん)や宿便(しゅくべん)と僕らは呼んだりします。
これについては以下の記事を参照してくださいね。
便の塊そのものが悪さをする病気はかんたんに分けると3つです。
1、出血
2、腸閉塞
3、穿孔
便の塊そのものが悪さをするときは、出血・腸閉塞・穿孔が問題になるで
便秘で入院・死亡する可能性がある病気①出血
出血するのは直腸潰瘍という病気です。
機序としては
硬い便が大腸の粘膜を直接長時間圧迫する
➡︎血液の流れが悪くなる。
➡︎炎症や壊死が起こり、潰瘍になる。
ただ硬く大きな便があるだけでは潰瘍はできないのではないか
と言われています。
もともとその場所の血流が悪い、という前提がある。
➡︎そこに硬い便がはまり込んでさらに血流が悪くなる
➡︎潰瘍ができる
という説が支持されています。
出血。
怖いですよね。



・・・大丈夫です。
ほとんどは僕ら消化器内科医が止めることができます。
つまり、大腸カメラ(内視鏡)を使って止血します。
大腸カメラで止血できなければ手術となることがあります。
ただ、よっぽどのことでないと手術にはなりません。
というのも僕ら消化器内科医はあの手この手を使って、ほとんどの場合なんとか止血するからです。
基本的にはクリップと呼ばれるものでぱちっと血管を狙って止めるのですが、それができなくてもいろんな薬剤を血管の中や、血管のそばに打ち込むことでほとんどの場合止血することができます。
直腸潰瘍で手術になった患者さんをまだ僕は見たことがないくらいです。
それくらい内視鏡は発達しているんですねえ。(もちろん止められない出血もあると思います。その時は外科の先生にお願いすることになるでしょう。)
ほとんどの出血は大腸カメラで止められるで!
ちなみに潰瘍ができる部位は直腸やS状結腸が多いとされていますが、稀に上行結腸などにもできることがあります。


どんなふうに発症するかというと
突然の出血
です。
腹痛や肛門の痛みはたまにある、という程度です。
出血量はそこそこ多いので、半分程度の患者さんに輸血が必要となります。
直腸潰瘍は突然の血便で発症するで。
ただ、
一般的な若い患者さんがこの病気になることはまずない
と考えていただいて結構です。かなりレアですね。
少なくとも僕は見たことがありません。
どんな患者さんがなりやすいか、リストを作っておきますね。
・高齢者(70歳前後)
・寝たきりの人
・心不全
・腎不全
・精神疾患のある患者さん
・ガンの末期
・腸の動きを止める薬を内服している方
僕が今までで特に印象的であったのは、ガンの末期の方の直腸潰瘍ですね。
ガンの末期の方々は、血液が固まったり溶けたりするバランスが大きく崩れている場合が多いので、ドバッと出血するんですね。
なんとか止まりましたが、処置が終わった頃には部屋が血の海になっていました。
まあ、でも普通は止まるんで大丈夫です!
もっと詳しく直腸潰瘍について知りたい方は以下の記事を参考にしてくださいね。
普通に健康な人はなかなか直腸潰瘍にはならへんで!
便秘で入院・死亡する可能性がある病気②腸閉塞
医学的には糞便性イレウスと言います。
小難しい話をすると本当はイレウスというのは間違っていると僕は思います。
イレウスと腸閉塞はほとんど同じ意味で使われるのですが、
イレウスというのは本当は物理的な閉塞がないけれども腸が動いていないものを指します。
糞便で詰まっている時はイレウスじゃないですよね?
糞便による腸閉塞が正しいと僕は思います。
本当は糞便イレウスは間違いやけど、どうでもええっちゃどうでもええねん。
話を元に戻しましょう。
消化管というのは一本道でしたね。
なのでどこか1箇所でも事故が起こると交通渋滞になるのです。
この辺りは以下の記事を参考にしてください。
糞便性イレウスは
大きな硬い便が大腸のどこかで詰まることで、便がそれ以上進めなくなってしまう
という病気です。
田舎の県道にドカンと大きな岩が落ちたイメージです。
どうにもこうにも行き場のなくなった腸管の内容物で
お腹がパンパンに張ったり
嘔吐したり
お腹が痛くなったり
などなどいろんな症状が出てきます。
治療はどうにかして硬い便を取り除くことです。
摘便できる位置にあればいいのですが、もう少し奥のS状結腸などに詰まっていると急に難しくなりますね。
大腸カメラを使って衝撃波でパンパン破砕したりする技術もありますが、僕は糞便性イレウスに対しては使用したことがないです。
その代わりによくやるのが
大腸カメラを使って、造影剤と呼ばれるものを詰まっている便の近くでドバッと大量に撒いて帰ってくる
という方法や、
スネアと呼ばれる輪っかのようなものを使って砕くんですね。
この造影剤というのがぬるっとしていて滑りをよくしてくれるんですね。
あと少し刺激にもなるみたいです。
これでそこそこ出てくれることが多いですね。
あまり経験がありませんが、もしも硬い便が取れなければ手術になると思います。
ちなみに
硬い便が長時間詰まってしまうと
閉塞性大腸炎(へいそくせいだいちょうえん)
という病気になってしまうことがあります。

閉塞性大腸炎は大腸ガンが原因のことがほとんどなのですが、稀に糞便が原因になることもあります。
便が詰まってしまうことでそれより口側の腸の圧が高まってしまい、腸の粘膜の血流が悪くなってしまうこと。
腸の動きが止まってしまうことで腸内細菌が異常に増殖してしまうこと。
この2つによって閉塞性大腸炎は引き起こされると考えられています。
こうなってしまうと放っておくと死んでしまう可能性があるので
手術が必要です。
通常、腸閉塞の手術では色が悪くなっている腸管を切除するのですが、
閉塞性大腸炎は色が良いところでも(つまり、血流が良いように見える腸)壊死に陥っている可能性があり、切除範囲を慎重に選ぶ必要があります。
大腸だけでなく小腸まで壊死していることもあるとは
恐ろしい恐ろしい。
閉塞性大腸炎はやばい病気やで。
恐ろしいですね。
なので少なくともお腹の張りや腹痛、嘔吐などの症状が出てしまっている時は
自己判断で下剤や浣腸を使うのはリスキー
と頭の片隅に置いておく必要があるんですね。
症状があったら自己判断せずに病院に受診した方がええで。
便秘で入院・死亡する可能性がある病気③穿孔
穿孔というのは「破れる」という意味です。
潰瘍にしても
イレウスにしても
閉塞性腸炎にしても
破れたら手術です。
考えてみてください。
うんちでパンパンになった大腸が破裂したらどうなるか

恐ろしすぎますね。
これは緊急手術です。
抗生剤や血圧をあげる薬を使いまくってなんとか命を救うというレベルです。
致死率も高いです。
原因が何にせよ、破れたらまずいで。
まとめ
・便秘が引き起こす病気について解説しました。
・出血、腸閉塞、穿孔などが起こり得る。
・便秘から閉塞性大腸炎になることもあり注意が必要。
・腹痛やお腹の張り、嘔吐などあれば自己判断で下剤や浣腸を行うと危険です。病院に受診してください。
・日頃から便秘をコントロールすることが何よりも重要です。
くれぐれも、必要以上に心配することはありません。
今日挙げた病気は稀な病気ですので。
それでも、日頃から便通をよくするために努力することは重要です。
(このブログを読んでくれている方は、すでに努力し尽くしているかもしれませんが。)
当ブログで一緒に学んでいきましょうね。
お疲れ様でした。