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妊娠中や授乳中にどんな便秘薬を飲んだらいい?
こんにちは。
今回は妊娠中や授乳中に飲んでもいい便秘薬には一体どんなものがあるのか
について解説していきたいと思います。
なかなか繊細な問題ですが、一緒に考えていきましょう。
妊娠中と授乳中では若干考え方が異なりますので、ここでは分けて説明していきたいと思います。
色々考え方はそりゃ変わってくるわな。
妊婦さんに使える便秘薬について
どうして妊婦さんは便秘になっちゃう?
妊婦さんはかなりの割合で便秘になってしまうことが知られています。
何で便秘になってしまうのでしょうか?
それには色んな理由が絡み合っているんです。
①運動量が減ってしまう
そりゃそうですよね。
お腹に赤ちゃんいながらランニングなんてできないですもんね。
これはすんなり納得できます。
他には
②黄体ホルモンが優位になる
➡︎交感神経が活発になる
➡︎便秘になる
副交感神経が活発になる時に腸管は動いてくれるのでしたね。
逆に交感神経が活発になってしまうと腸管の動きは止まってしまうのです。
③子宮が腸の動きを邪魔する
子宮がどんどん大きくなってくると、内臓は圧迫されてしまいます。
腸管ももちろん圧迫されて動きにくくなるので、便秘になりやすくなってしまうのです。
④痔になってしまうから
妊婦さんは直腸や肛門の周りの静脈がうっ血してしまい、痔になりやすいのです。
切れ痔になったら痛くて、うまく息めないこともありますから、さらに便秘になってしまうのです。
なので妊婦さんは常に便秘の危険にさらされている
というわけです。
妊婦さんに薬を使うときの一般的な注意点
妊娠中に薬を使うときは当然お腹の赤ちゃんに与える影響を考えなくてはいけません。
大きく2つに分けると
1、催奇形性
2、胎児毒性
まず催奇形性ですが、これは妊娠初期に問題になります。
薬によって赤ちゃんの奇形を誘発してしまうんじゃないか
というリスクのことですね。
妊娠4〜7週が薬剤絶対過敏期と言われていて、影響を受けやすい時期と言われています。
なのでこの時期の投薬は注意が必要です。
とは言ってもこの時期に注意するのは普通無理ですよね。
妊娠8〜12週は大まかに器官の形成が終わっているので奇形を起こしうるとしても小さな奇形と言われています。
逆に13週を過ぎてくると、奇形は起こさないのですが胎児毒性について考える必要があります。
ただ、ここでポイントがあります。
薬を使用しなくても流産は15%、先天異常は3%ある!!
そうです。別に薬を使わなくたって、流産のリスクもありますし、奇形のリスクだってあるのです。
これはみなさん忘れがちですが、大事なことなのです。
ちなみにこの自然なリスクのことを
ベースラインリスクと言います。
もう一つポイントがあります。
薬の添付文書は意外とエビデンスがまちまち。
これは意外ですよねえ。
エビデンスとは科学的根拠のことでしたね。
妊婦さんが安心して使える薬が増えるとこちらも助かるんですけどねえ。
ちなみに妊娠と薬情報センターというものがあります。
妊婦さんが直接、もしくはかかりつけ医を通して問い合わせることができます。
一定の手続きが必要ですので確認してくださいね。一応リンクを貼っておきます。
一つだけ言っておきたいのは
お腹の赤ちゃんの健康を気遣うことは素晴らしいことですし、不必要な薬は避けるべきですが、
もしも流産や奇形のある赤ちゃんが生まれたとしても薬が原因である確率は思っているよりも低いということです。
なので
あの時あの薬を飲んでしまったせいで
流産してしまったかもしれない
奇形ができてしまったのかもしれない
と、自分を責めるのはやめてほしいのです。
妊娠と薬情報センターはしっかりとしたデータを出してくれていますので
その点でも本当にありがたいですよね。
妊婦さんにはどんな便秘薬を使う?
薬の添付文書をもとに表を作ってみました。
妊産婦 | 授乳婦 | |
アミティーザ | ❌ | ❌ |
リンゼス | ▲ | ▲ |
酸化マグネシウム | ❓ | ❓ |
グーフィス | ▲ | ▲ |
ラグノス | ▲ | ▲ |
モビコール | ▲ | ▲ |
コロネル・ポリフル | ▲ | ▲ |
ガスモチン | ▲ | ❌ |
セレキノン | ▲ | ❌ |
大建中湯 | ▲ | ▲ |
大黄甘草湯 | ❌ | ▲ |
麻子仁丸 | ❌ | ▲ |
プルゼニド | ❌ | ▲ |
ラキソベロン | ▲ | ▲ |
*酸化マグネシウムは記載がありませんでした。
当ブログで取り上げている便秘薬について全部調べた結果です。
ちなみに一つ一つの便秘薬について詳しく知りたい方はこちらを参考にしてくださいね。
実際に妊婦さんが飲んでいい便秘薬はあるんでしょうか?
様々な報告を確認したところ
酸化マグネシウムはOKのようです。
ただ、添付文書にも乗っていない、妊娠と薬情報センターも情報を出していないので、そこは不安要素です。
また刺激薬であるピコスルファートナトリウム、ラキソベロンは通常用量ならOKです。
ただし、大量内服では子宮収縮を引き起こしてしまう可能性があるので通常用量までにしておきましょうね。
もちろん処方してもらう時はしっかりとかかりつけ医の先生とご相談ください。
ちなみにアロエは胎盤を通して胎児の腸管を刺激します。
羊水の中に胎便が混じってしまう可能性がありますのでやめておきましょう。
市販の便秘薬はお勧めできません。
なぜなら一般の方が成分表を見て判断するのはかなり難しいからです。
便秘薬は病院にかかって、きちんと相談した上で飲むのが良いと考えます。
・酸化マグネシウム
・ラキソベロン・ピコスルファートナトリウム
授乳中に内服できる便秘薬
授乳と薬
授乳中って病院にかかっても
薬を飲む時は授乳は控えてくださいね〜と言われませんか?
実は多くの薬は母乳に移行するんですけども、量がめちゃくちゃ少ないので
赤ちゃんへの影響は限りなく低いことが多いんです。
なので結構飲める薬がありますよ。
一応リンクを貼っておきますね。
僕は授乳婦さんに薬を処方する時は毎回ここでチェックしてます。
患者さんに何と思われても、中途半端に覚えていて間違うことの方がよっぽど怖いですからねえ。
こんなに覚えることは不可能ですしね。
授乳のメリットは計り知れません。
・赤ちゃんの栄養
・赤ちゃんの感染症予防、神経の発達
・お母さんの子宮収縮を促してくれる
・お母さんの乳がんや卵巣癌のリスク低下
・お母さんの糖尿病予防
などなどいっぱいあります。
また、薬のせいで授乳を中止すると、母乳の出が悪くなりますし、中断期間が長くなると下手すると再開できなくなる可能性もあります。
なのでできるだけ薬のせいで授乳を中止するということは避けたいですよねえ。
薬を使う時は添付文書を見るよりもこのリンク先を見て頂いた方が正確
と思って頂いて良いと思います。
先ほどの表を見てもらうと
全然使える薬はないがな!!
となるとは思いますが、妊娠と薬情報センターによると
以下の薬が使えます。
・硫酸マグネシウム
・アローゼンやプルゼニドなどのセンナを含む刺激薬
・ラキソベロン・ピコスルファートナトリウム
酸化マグネシウムについては記載がありませんでした。
硫酸マグネシウムでないといけないかというと・・・
何とも言えませんね。
実は妊娠と薬情報センターにも電話で問い合わせしてみましたが、患者さんからの依頼でないと答えることは難しい、とのことでした。
現在僕の担当している患者さんで、便秘に悩まれている妊婦さんはいらっしゃらないので、確かな情報は得られませんでした。
ただ、硫酸マグネシウムにしておいた方が安全かと思います。
マグネシウムと刺激性下剤があれば何とか乗り切れそうですよね。
刺激性下剤は頻回に使用すると習慣性や常習性、薬剤耐性が問題になりうるのでした。
なので、授乳が終わっても便秘が続くようなら、他の便秘薬に変更することをお勧めします。
海外ではどうなのか?
今日の治療薬2018という本を参考に、表を作成してみました。
妊産婦 | 授乳婦 | |
アミティーザ | 米C | なし |
リンゼス | なし | L3 |
酸化マグネシウム | なし | なし |
硫酸マグネシウム | なし | L1 |
グーフィス | 未 | 未 |
モニラック(ラグノス) | 米B | なし |
モビコール | 未 | 未 |
コロネル・ポリフル | なし | なし |
ガスモチン | なし | なし |
セレキノン | なし | なし |
大建中湯 | なし | なし |
大黄甘草湯 | なし | なし |
麻子仁丸 | なし | なし |
プルゼニド | なし | L3 |
ラキソベロン | なし | なし |
ビザコジル | 豪A | L2 |
センナ | 豪A | L3 |
まず米とか豪とかLの意味について説明しますね。
①米・・・米国FDA基準のことです。安全な方から順番にA,B,C,D,Xまであります。
A:試験で胎児への危険性があると証明されなかったもの。つまり安全
B:人では試験はされていないが、危険性があるという証拠がない。つまりそこそこ安全。
C:人では試験されていない。有益性が胎児への危険性より大きいときだけ使用する薬。つまりケースバイケースであるが、便秘の治療では有益性が上回る場合は少ないのではないか。
D:胎児には明らかに危険と証明されている。危険とわかっていても妊婦が生命の危機にさらされている時などは使用が容認されるもの。
X:禁忌
②豪・・・豪州ADEC基準のこと
A:多数の妊婦に使用されていた薬であるが、胎児への有害性は全く証明されていない。つまり安全。
B:妊婦への使用経験はまだ限られたもの。B1,B2,B3に分けられるが、どれも人の胎児への影響は報告されていない。
C:胎児に有害作用を引き起こす可能性がある薬。胎児に副作用が出ても、元に戻ることもある。
D:胎児に奇形や元に戻らない障害の発生頻度が高まると疑われる薬
X:禁忌
③L・・・Medications and Mothers’Milk 2017の評価基準です。
L1:多くの授乳婦が使用するが、乳児への有害報告なし。試験でもリスクは示されなかった。つまりかなり安全。
L2:少数例の研究で乳児への有害報告なし。リスクの可能性がある根拠はほとんどない。
つまり安全。
L3:授乳婦への試験はない。乳児に不都合な影響が出る可能性がある。または、試験でごくわずかな有害作用しか示されていない。有益性が上回る場合のみ投与。つまりケースバイケース。
L4:乳児にリスクがあるという明らかな証拠があるが、有益性が乳児へのリスクを上回る時は許容。つまり、どうしてものときだけ内服。
L5:禁忌
難しいですね。
でも薬の添付文書のように「有益性が上回る場合のみ投与」みたいに逃げ腰でなく、しっかりとランキングをつけてくれるというのはとてもありがたいことです。
最終的にもっとも安全なのは?
まとめてみましょう。
以上の全てを合わせて考えると以下のような結論になると思います。
おそらく酸化マグネシウムも安全なので、使えるとは思うのですが、妊婦さん・赤ちゃん・授乳婦さんにとって最も安全なものは何か?と考えると若干使いづらくなります。
・便を柔らかくするならラグノス(酸化マグネシウムもおそらくOK)
・ラキソベロンやピコスルファート
・便を柔らかくするなら硫酸マグネシウム
・ラキソベロンやピコスルファート
もちろんこれが完璧な答えというわけではありません。
今日の説明を踏まえて
センナもいけそうじゃないかとか
酸化マグネシウムにしてみようとかも
間違いではありません。
ちなみにビサコジルは座薬しかないのかと言われたら
実は市販薬のコーラックはビサコジルです。
おそらく大丈夫なのですが、科学的な検討がどうかと言われれば正直よくわかりません。
なので使用するのであれば、かかりつけ医としっかり相談した上で納得して使用してくださいね。
以上駆け足で説明しました。
いかがでしたか?
添付文書通りにやっていたら何にもできないこともご理解いただけたかと思います。
添付文書も全てエビデンス(科学的根拠)に基づいているわけではないんですね。
わからない時、不安な時はかかりつけ医に相談していただくか、妊娠と薬情報センターに問い合わせてください。
皆さんのお役に立ちたいと思い便秘LABOを運営しておりますが、実際に診察していていない以上、内服の可否の判断はできません。
くれぐれも実際の内服に関しては、当ブログは責任を負いかねますので、よろしくお願いいたします。
こちらも復習して見てくださいね。
お疲れ様でした。
自分に合った便秘薬を見つけよう!!〜実際の症例から具体的に考える〜https://note.mu/benpilabo/n/n12fe85f23c8b
終わり方を知ると人生が動き出す〜お腹のガンになったらどうなるの?〜https://note.mu/benpilabo/n/na7a4c302f873