便秘・下痢

便秘に効くバイオフィードバック療法ってどんなの?

便秘に効くバイオフィードバック療法ってどんなの?

 

こんにちは。

 

今日は当ブログでも何度か登場してきた、バイオフィードバック療法について解説していきたいと思います。

 

お付き合いください。

バイオフィードバック療法ってそもそも何?

 

日本バイオフィードバック学会によると、

バイオフィードバック療法とは

意識にのぼらない生体情報を工学的な手段によって意識上にフィードバックすることにより、体内状態を意識的に調節することを可能とする技術や現象の総称

と定義されています。

ガンコちゃん

はっ??

 

べんぴ先生

まあ、そうなるわな。

 

わかりづらいですねえ。

 

簡単にいうと

筋肉の動きや血圧などを数字や画像などに変換することで、

目で見たり音で聞いたりできるようにして、筋肉や血圧などをうまくコントロールできるようになりましょう

という訓練です。

 

ガンコちゃん

・・・

 

べんぴ先生

これでもわかりにくいか・・・

 

便秘診療におけるバイオフィードバック療法はどんなふうに行うの?

 

便秘の場合はどんな感じなのでしょうか?

 

便秘におけるバイオフィードバック療法は

腹筋と肛門の筋肉の動きを画像データに変換して、その画像を見ながらうまく排便できるように訓練する

 

というものです。

 

具体的には

お腹に筋電計をはって、お尻の中には筋電計を入れます。

 

お尻の中に入れる筋電計やお腹の筋電計はこんな感じです。

 

ちなみにお腹のどこに筋電計をはるかと言うと、横っ腹(側腹部といいます)がいいと言われています。

 

何でかというとお腹の真ん中の筋肉(腹直筋といいます)では、十分に腹腔内圧が上がらないと言われているからです。

 

お腹の他の筋肉(腹横筋・内腹斜筋・外腹斜筋)の総合的な活動を見るためには横っ腹が良いということですね。

 

腹筋と肛門の筋肉の動き、強さを患者さんと一緒に見ながら訓練していく

というイメージです。

 

 

排便するときというのは基本的には

腹筋によってしっかり腹圧はかかっているけれども、お尻の力が緩んでいる

というのがベストです。

 

これに近づけるように訓練していく

ということです。

ガンコちゃん

意識してなかったですけど、お腹とお尻で真逆の動きをしていたんですねえ。

 

べんぴ先生

考え出すとわけがわからんくなるから、体で覚えよう!というのがバイオフィードバック療法やで。

 

どんな人がバイオフィードバック療法の適応になる?

 

便秘で悩む人みんなが、バイオフィードバック療法を行えば良いのでしょうか?

 

実は便秘で悩む人みんなに行うと、バイオフィードバック療法の効果は出にくいと言われています。

 

数字でいうと

骨盤底筋協調運動障害には約70%有効であったけれども

大腸通過遅延型便秘には8%しか効果がなかった

という報告があります。

 

 

骨盤底筋協調運動障害??

大腸通過遅延型便秘??

という方は以下の記事を参考にしてくださいね。

 

ちなみに骨盤底筋協調運動障害というのは排便時に腹圧がかかっても、骨盤底筋がうまく緩まないか、もしくは逆に収縮してしまう、という病気です。

機能性便排出障害の一つです。

 

 

つまりバイオフィードバック療法の一番の適応は

排便困難型の人。その中でも機能性便排出障害の人です。

 

あとは便秘とは若干ずれますが、

便失禁(便を漏らしてしまう)に悩まれる方にも効果があります。

 

便排出障害の患者さんには、腹圧をかけながらお尻の力を緩める訓練を行います。

便失禁の患者さんには、腹圧をかけずにお尻に力を入れる訓練を行います。

 

真逆ですね。

 

バイオフィードバック療法の適応

・機能性便排出障害

・便失禁

 

ただ、例えば直腸瘤などの器質性便排出障害などでもいきなり手術になる患者さんは少ないので、バイオフィードバック療法や薬剤による治療などをまずやってみる、ということが多いです。

 

特に直腸瘤では手術をしたところで、必ず排便障害の症状が治るというわけではありません。術後の満足度はそこまで高いわけではなさそうです。

 

ちなみに直腸瘤のせいで膣の後ろ側が膨らんでくるという症状に対しては、手術による改善率が高いと言われています。

 

直腸瘤については以下の記事を参考にしてくださいね。

 

便排出障害の治療はバイオフィードバック療法・バルーン排出訓練と薬剤による治療が重要です。

バイオフィードバック療法はとても大事な治療なんですね。

バイオフィードバック療法はどんなスケジュールでやるの?

 

基本的には月1〜2回で合計5、6回くらい行います。

もちろん早くコツをつかんだ人は、そこで終了しても良いです。

 

もう一つバルーンによる感覚検査・排出訓練というものがあります。

バイオフィードバック療法とバルーン訓練を2週間ごとに繰り返すという方法もあります。

 

この辺りは病院によってスケジュールも違いますし、患者さんの都合もあるので、その都度相談して決めていくことになると思います。

 

あとはお家でもしっかりと訓練した内容を思い出しながら、日々リハビリに励むことが必要です。

最後に

 

排便するときには

腹圧はしっかりかかっているけれども、お尻の力は抜けている

これがベストだとお伝えしました。

 

でも最近の研究によると

正常な人でも排便時に肛門内圧は通常時よりも低下しない人がほとんど

という報告があります。

 

つまり

お尻の力は抜けきっていない、むしろ少し力が入っている人がほとんど

ということです。

 

お尻の力が少し入っても、それ以上に腹圧がかかるので、その圧の差(圧格差)で便を出す

というイメージでしょうか?

 

なのでバイオフィードバック療法では

 

肛門の筋肉も多少力がはいるけど、力の入りすぎはよくないよ

という感じに訓練することが良いのではないかと思います。

 

あと女性に多いのは実はお尻の力が抜けないということよりも

腹圧がしっかりかけられない

という人が多いと言われています。

普段から腹筋トレーニングをしっかり行っていくことも重要です。

 

腹筋の重要性については以下の記事を参考にしてくださいね。

 

 

少し細かい説明をすると

実は機能性便排出障害は大きく2つに分類されます。

 

機能性便排出障害

1.骨盤底筋協調運動障害

2.便排出力不足

 

男性は1の骨盤底筋協調運動障害が多く、

女性は2の便排出力不足が多いと言われています。

 

もともと男性の方が腹筋も強いですし、イメージとしてしっくりくると思います。

 

ちなみに男性の高齢者で、お尻がすごく締まる人は、バイオフィードバック療法の効果が出にくいと言われています。

このような患者さんは、レシカルボン座薬などで毎回排便することになってしまうことが多いです。

 

そうは言っても、先ほどもお伝えしたように骨盤底筋協調運動障害に対するバイオフィードバック療法の効果は70%もあるのです。

70%というとかなり良い数字ですよ。

そもそも合併症がない訓練ですので、チャレンジしてみる価値は十分あります。

 

以上です。

ではでは〜

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医