便秘・下痢

便秘の診断に役立つ直腸肛門内圧検査

便秘の診断に役立つ直腸肛門内圧検査

 

こんにちは。

 

今日は肛門内圧検査について解説していきたいと思います。

 

お付き合いくださいね。

直腸肛門内圧検査ってどんな検査?

 

カテーテルを肛門から入れて直腸の圧と肛門の圧を測る検査です。

 

特に浣腸など、検査前にやることはありません。

体の左側を下にして、横になって頂いた状態で検査を行います。

 

カテーテルは細いので、大腸カメラ検査などに比べると楽な検査と言えます。

 

・ゆったりしている時

・お尻を閉めた時

・怒責(息んだ)時

に測定します。

 

検査方法は3つあります。

1、カテーテルを手動で引き抜きながら直腸内圧や肛門内圧を測定する方法

2、カテーテルを自動引き抜き装置を使って測定する方法

3、1つのカテーテルに数個の測定チャンネルがついていて、引き抜く必要がない方法(つまりじっとしていれば良い)

 

まあ、この辺りは検査のしんどさにはほとんど関係しません。

病院の持っている機材によりけりというところですね。

 

圧を測るだけなので、そんなに時間もかかりません。だいたい10分くらいじゃないでしょうか。

 

内圧検査で何がわかる?

 

便秘の患者さんでは

直腸内圧と肛門内圧の関係が大事と言われています。

 

本来は怒責(息んだ)時に直腸内圧が上がって肛門内圧が下がる

というのがベスト、という話は以前からしていると思います。

 

それ以外は一応異常とされています。

ちなみに直腸内圧が高まるということは、腹圧がしっかりかかっていると考えて良いと思います。

 

 

例えば

直腸内圧⬆︎肛門内圧⬆︎=骨盤底筋協調運動障害

直腸内圧⬆︎肛門内圧➡︎=骨盤底筋協調運動障害

直腸内圧⬆︎肛門内圧⬇︎=正常

直腸内圧➡︎=怒責力不足

 

難しいですか?

この検査で得られるデータで一番大事なのはおそらく

直腸内圧が上がらないこと

です。

 

どういうことかというと

便排出障害は

器質性便排出障害と機能性便排出障害に分かれるのでしたね?

器質性というのは簡単に言うと目で見てわかる形の異常、機能性というのは動きの異常でしたね。

そのうち機能性便排出障害は

①骨盤底筋協調運動障害

②怒責力不足

などに分けられるのでした。

 

機能性便排出障害のうち、②の怒責力不足は

この直腸肛門内圧検査のみで診断できる

と言われています。

 

なので直腸内圧が上がらないというのは、結構大事なことなんですね。

 

機能性便排出障害の②の怒責力不足は女性に多いと言われています。

そしてバイオフィードバック療法のみでは改善しないこともあり、排便促進療法と呼ばれる

人工便を用いて排便訓練を行ったり、横隔膜トレーニングを呼ばれる訓練を行う必要があります。

 

ちなみに細かいことをいうと直腸内圧➡︎の中でも肛門内圧が⬆︎➡︎⬇︎の3パターンによって分けることができるので、全部で6パターンあることになります。

ただ、ここまで詳しく分ける必要はないんじゃないか、とも言われています。

 

難しいですよね?

 

 

怒責力不足の話はこれで終わりです。

 

次は機能性便排出障害のうち①の骨盤底筋協調運動障害について話します。

 

以前もお伝えしましたが、実は便秘のない正常な人でも息んだ時に直腸内圧が上がって、肛門内圧も上がる人が多いということがわかってきています。

 

なので

直腸内圧⬆︎肛門内圧⬆︎と

直腸内圧⬆︎肛門内圧➡︎

が骨盤底筋協調運動障害と確定していいかどうか?という議論があります。

 

現状ではこれだけでは判断してはいけない

となっています。

 

つまり

骨盤底筋協調運動障害を診断するためには直腸肛門内圧検査だけでなく、

デフィコグラフィーとバルーン排出テストを行うべきということです。

難しいですね。

 

デフィコグラフィーとバルーン排出テストについては以下の記事を参考にしてくださいね。

 

この3つを合わせて診断していくということですね。

便排出障害の復習

 

今日は少し難しい話でしたね。

 

少し便排出障害について説明したいと思います。

 

便排出障害は大きく分けて

器質性便排出障害と機能性便排出障害があるのでした。

器質性とか機能性という言葉は、便排出障害に限らず、いろんな分野で使われる言葉ですので覚えておいて損はないと思います。

器質性と機能性

・器質性=目で見てわかる異常

・機能性=パッと見てわからない動きの異常

このイメージで良いと思います。

 

器質性便排出障害には以下のようなものがあるんでしたね。

 

器質性便排出障害

・直腸瘤

・直腸粘膜脱、直腸重責、直腸脱

・巨大直腸

・小腸瘤

・S状結腸瘤

 

特に直腸瘤は頻度が多い病気なので要チェックです。

 

機能性便排出障害にはこんなものがあるんでしたね。

 

機能性便排出障害

①骨盤底筋協調運動障害

②怒責力不足

③直腸感覚低下

④直腸収縮力低下

 

さっきは①骨盤底筋協調運動障害と②怒責力不足しかないって言ったじゃないか、

と言われそうですが、実は①と②しかないというのはRome基準というものに基づいています。

Rome基準はとても有名ですが、少し雑にまとめすぎではないかとも指摘されています。

 

まあ、一応これくらいの病気はあるよ

くらいに思って頂けたら良いです。

 

器質性、機能性便排出障害の病名をざっと見ていても

やっぱりデフィコグラフィーとバルーン検査、直腸肛門内圧検査の3つでほとんど診断でき

そうです。

 

細かい病名を覚える必要はもちろんありません。

この3つの検査をやればだいたいわかるよ〜ってことを分かって頂けたらOKです。

 

今日は以上です。

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医