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便潜血検査2日法って、便秘の人にとっては難しくないかな?
こんにちは。
今回は便潜血検査について説明したいと思います。
お付き合いください。
便潜血検査を便秘の人が行う時の問題点
便潜血検査とは、便の中に血が混じっているかどうかを調べる大腸ガン検診の事です。
便を専用の棒でこすり取って提出するだけの検査です。
基本は2日連続で便をこすり取って提出します。
排便の悩みがない健康な人にとっては簡単な検査です。
しかし、もともと便秘で悩まれている方にとってはなかなか厄介な検査なのです。
例えば排便が4日に1回しかない人に、2日連続で便を出せと言われてもなあ。
それこそ無理して息んで、痔から出血するのが目に見えています。
ここで検査キットの説明書を読んでみました。
ふむふむふむ
採便(便を採取する)から検査までは3日以内が望ましい
なるほど
つまり72時間で2回排便をする必要がある
ということですね。
72時間で2回かあ・・・
便秘の治療が相当うまくいっている人なら大丈夫。
でも便秘外来に通っているような人なら・・・ハードルは高いなあ。
なぜ排便してから提出まで3日以内が良いのか?
これは時間が経てば経つほど便の中のヘモグロビンが減っていってしまうからです。
今の便潜血検査は免疫学的測定法という測定法を用いていますが、これは便に含まれるヒトのヘモグロビンに抗体がくっつくことで検出しています。
ヘモグロビンが時間とともに減ってしまうと、本当は陽性(+)だったのに、陰性(−)の結果になってしまうということが起こりうるわけです。
なので検査結果に支障をきたさないためには、最長でも3日が限界というわけです。
ちなみに便の中のヘモグロビンは高温にも弱いので、冷蔵保存してくださいね。
なぜ2回分も便を提出する必要があるのか?
これは1回分よりも2回分提出した方が感度が上がるからです。
要は大腸ガンを見落としにくい、ということです。
これは今までの研究ではっきりと示されています。
どうしても1回分しか提出できない時は、1回分出すしかないですが、大腸ガンを見落とす可能性が高まってしまうということですね。
仮に感度100%の検査があるとしたら、もしその検査で陰性(−)であれば、まず大腸ガンの可能性はないということです。
感度が低いということは、検査で陰性(−)でも大腸ガンの可能性が否定できないということです。
少し難しいですね?
ちなみに便潜血検査2回法の大腸ガンの感度は
進行癌➡︎85.6%
早期癌➡︎61.3%
(Hisamichi S et al.1991)
進行癌の人を100人集めたら、便潜血検査を2回行っても14人は陰性(−)の結果になってしまうということです。
早期癌の人を100人集めたら、38人は陰性(−)になってしまうということです。
実際のところ、感度や特異度という言葉はあんまり検査を受ける側の人にとってはピンとこないものです。
本当に検査を受ける人が知りたいのは陽性的中率と陰性的中率です。
陽性的中率:検査が陽性(+)の場合に実際に癌である確率
陰性的中率:検査が陰性(−)の場合に癌じゃない確率
こっちですよね、本当に知りたいのは。
大腸ガン検診の場合は
陽性的中率:2〜5%
陰性的中率:99.9%
つまり便潜血検査で陽性(+)と出てしまっても、実際に大腸ガンの人は20〜50人に一人しかいない。他の人は空振りというわけです。
便潜血検査で陰性(ー)であればほぼ大腸ガンの人は1000人に1人くらいしかいないというわけです。
(細かい話をすると、実は的中率というのは有病率というファクターが関わってくるので集団ごとに変わってしまうのですが、まあだいたいこのくらいと覚えておいて頂いてよいと思います。)
的中率の結果を見てどう捉えるかは、ご本人の性格によるところも大きいですね。
1000人に1人か、まず大丈夫やん!
となるのか
1000人に1人もおるんか、自分がその一人ちゃうやろか?
となるのか。
偽陰性について
偽陰性(ぎいんせい)とは何でしょうか?
「大腸ガンが実際にあるのに検査が陰性(ー)になってしまうもの」
これを偽陰性と言います。
これが一番嫌ですよね?
①血液の付着・混入が一部分にあったが、 血液のない部分から採便した
②大腸癌からの出血が、検査した時にたまたまなかった
③便の保存方法が悪かった
①を防ぐためには便の表面をまんべんなくこすり取ることが勧められています。
②は運が悪かったと思うしかないんですかねえ。
③は冷蔵保存や3日以内というルールを守ることで解決しそうです。
実際便秘の人はどうやって2回便を出すか?
話がそれましたね。
今日の課題は、どうやって便秘に悩む人が72時間で2回出すかです。
排便コントロールがしっかりとできている人にとっては大した問題にはならなさそうです。
コントロールできていない人は・・・
いろいろ考えましたが、ピコスルファートナトリウム・ラキソベロンなどの刺激性下剤を使うのはどうでしょうか?
刺激性下剤は頓服で使う分にはほぼ問題にならないので、1年に1回の検診のためであれば良い使い方かなあ、と思います。
浣腸などでは下痢になってしまう可能性が高く、検体不良となってしまいます。
刺激性下剤も下痢にならない程度の量で使うことをお勧めします。
それでも3日以内に2回便が出せないようなら
もういっその事大腸カメラを受けるのはどうでしょう?
痔からの出血が明らかにあった場合は検査は行うべきではないですし、
生理中には便の検査は行わない方が良いですし。
そんなこと言っていたら、便秘に悩んでいる人が便潜血検査をこなすというのは難しくないですか?
大腸カメラ検査は半日〜1日がかりの検査ですが、受けて異常がなければすっきりするんじゃないでしょうか?
検体がうまく取れていない便潜血検査をするよりは、良い検査になると思います。
まとめ
便潜血検査は簡単な検査ですが保管方法や検査の特性など、考え出すと奥が深いです。
特に便秘で悩まれる人にとっては3日の間に2回もちゃんとした便を出す必要がある、なかなか難しい検査です。
場合によっては便潜血検査をすっ飛ばして大腸カメラを受けてしまう、というのも一つの手ではないかと思います。
以上です。
お疲れ様でした。