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便秘に対する手術の適応や方法についてまとめてみたで
便秘に対する手術は頻繁に行われる?
慢性便秘症の多くは、手術をせずにコントロールすることが可能です。
手術みたいに体を傷つけずに行う治療を保存的治療と呼びます。
便秘に対する保存的治療にはどんなものがあるのか、まとめてみましょう。
・食事・運動などの生活習慣を改める
・薬による治療
・バイオフィードバック療法
・バルーン排出訓練
バイオフィードバック療法やバルーン排出訓練については以下の記事を参考にしてくださいね。
・手術をしたら必ず便秘が治るわけではない
・特殊な手術が多く、手術ができる施設は限られている
どんな時に手術を考えるか
①高度大腸通過遅延型便秘症
②直腸瘤
③直腸重責
④小腸瘤
⑤難治性排便障害
ざっと書き出してみるとこれくらいのパターンが考えられると思います。
これらの病気があるからといって必ず手術が必要というわけではありませんし、手術をしたら必ず治るわけではないということは覚えておいてくださいね。
①高度大腸通過遅延型便秘症
つまり大腸が全然動いていない時、ということですね。
大腸が動いてなさそうだ。➡︎よし!手術しよう
とはなりません。
しっかりと大腸通過時間検査を含めたたくさんの検査を受けて、他の病気がしっかりと否定できていることが重要です。
高度大腸通過遅延型便秘症は大腸の直径が正常か異常かで2つに分かれます。
・結腸無力症(直径は正常)
・巨大結腸症(異常に拡張)
手術するための条件
実際に手術を行うためには4つの条件をクリアしていることが必要
と言われています。
①最大種類・最大量の下剤を使っても十分に便が出ない。(大腸通過時間検査を行って客観的に確認する必要あり)
②胃や十二指腸に異常がなく、慢性偽性腸閉塞が否定できる
③デフィコグラフィーなどで便排出障害がないことを確認できる
④高度な精神・心理的障害がない
大腸通過時間についてご存知ない方は以下の記事を参考にしてくださいね。
デフィコグラフィーについてご存知ない方は以下の記事を読んでみてくださいね。
慢性偽性腸閉塞というのは非常に稀な病気です。あんまり深く覚える必要はありませんが、
慢性偽性腸閉塞は必ず嘔吐(吐いてしまう)があります。
結腸無力症や巨大結腸症だけでは嘔吐することはほとんどありませんので、嘔吐する場合は注意が必要ということですね。
慢性偽性腸閉塞に手術をしても治らないので。
手術の術式
手術はほぼすべての大腸を切除してしまうことが多いです。
よく行われる手術は
結腸全摘+回腸直腸吻合
です。

つまり大腸をほぼ全て切除してしまって、小腸と直腸をつなげるという手術です。
動いていない大腸は全部取ってしまおうという考えですね。
他の術式としては
バウヒン弁を残した結腸亜全摘+盲腸直腸吻合術

結腸部分切除術

などがあります。結腸部分切除術は、大腸通過時間検査を行ってマーカーがたくさん残存している箇所を切除するというものです。
・結腸全摘+回腸直腸吻合
・バウヒン弁を残した結腸亜全摘+盲腸直腸吻合術
・結腸部分切除術
これらの手術をして改善が期待できるのは
排便回数の増加です。
逆に言うとお腹の張りや痛みなどの他の症状は、改善しない可能性があるのです。
しかもアメリカの術後調査でわかったことがあります。
・腸閉塞などの合併症が多い(15%くらい)
・再手術率が高い(13%)
・入院の頻度は術後にむしろ増加(原因は腹痛)
アメリカのデータなのでそのまま日本に当てはめることはできませんが、少しショッキングですねえ。
それでも全体としての手術の満足度は86.6%とのことなので、術前よりは症状がよくなる可能性が高いんでしょう。
大事なことは、手術をする前にしっかりと検査をして、手術すべきかどうかをしっかり考える必要があるということですね。
手術前にしっかり検査して、しっかり考える
②直腸瘤
直腸瘤については以下の記事を参考にしてくださいね。
直腸瘤ではどんな時に手術を考えるのでしょうか?
少し復習してみましょう。
・デフィコで直腸瘤の大きさが2cm以上の時。
・デフィコで擬似便がたくさん残る時。
・その擬似便は、指で膣や会陰を圧迫して排出したら残便感が失くなる。
この3つの条件をどれだけ満たすかで、手術で症状が取り除けるかどうかある程度判断できると言われています。
0個➡︎50%
1個➡︎60%
2個➡︎70%
3個➡︎80%
手術をしたら異物感などは取り除けますが、排便困難感を取り除くのは比較的難しいと言われています。
なので、便秘に対して手術を行う時は、じっくり考える必要がありますね。
③直腸重責
直腸重責も排便困難などの症状がひどく、デフィコグラフィーで重責が確認されれば手術適応になります。
ただ、直腸瘤と同じく、手術をするかどうかはしっかりと考えないといけません。
直腸重責についても以下の記事で軽く説明してありますので、参考にしてくださいね。
手術方法
最近はventral rectopexyという手術を行います。
腹腔鏡やロボットを使って行うことが一般的です。
ventral:お腹側の
rectopexy:直腸固定術
つまり直腸のお腹側にメッシュを縫い付けて、口側に吊り上げて仙骨(背骨)に縫いつけます。

ちなみに直腸重責の結果、先っぽの粘膜に潰瘍などが起こることがあります。
これを粘膜脱症候群と言いますが、これに対してもrectopexyの効果があります。
ある報告では手術後にデフィコグラフィーでしっかりと直腸重責の改善が確認できたのに、
便秘症状は41%しか改善しなかったようです。
④小腸瘤
小腸瘤はダグラス窩という場所に小腸が入り込んでくる病気ですね。

普通のデフィコグラフィーでは診断できないので、口から造影剤を飲んだ上で、デフィコグラフィーを行う可能性があります。
治療としてはこの異常に深くなってしまったダグラス窩を閉鎖する手術を行います。
手術をして排便困難の症状が治るかどうかはなんとも言えません。
⑤難治性排便障害
なかなか治らない排便障害に対して順行性洗腸法を行う時があります。
順行性洗腸法とは、虫垂・盲腸に穴を開けてお腹の外からボタンを埋め込むんですね。
そこから水やグリセリン浣腸を流し込んで腸を洗って便を出しやすくする、という方法ですね。

順行性とは普通の生理的な流れの向きということで口➡︎肛門の向きを意味します。
逆行性とは逆向きということなので肛門➡︎口の向きという意味です。
なので普通のお尻から行う浣腸は逆行性ということですね。
適応は?
普通の内科的な治療ではコントロールできないけれでも大腸切除などはしたくない
という方です。
大腸通過時間遅延型便秘症でも便排出障害でもどちらでも適応になります。
つまりほぼすべての便秘症が適応ですね。
デメリット
お腹に穴を開けてボタンを取り付けるので、見た目がよくないですよね。
お腹からボタンが出ているので。
まとめ
いかがでしたか?
便秘の領域の手術は、ガンなどの分野とは少し違います。
ガンであればこれは手術すべきだとかある程度わかりやすいですが、そうはいきません。
しかも手術したとしても症状が改善する可能性も高いとは言えないのです。
やってみないとわからないのが便秘領域の手術の難しさですね。
今は新しい便秘薬も出てきており、大腸切除も減っているようです。内科的治療のさらなる発展を願いますね。
今日の内容は少し難しかったですね。
お疲れ様でした。
自分に合った便秘薬を見つけよう!!〜実際の症例から具体的に考える〜https://note.mu/benpilabo/n/n12fe85f23c8b
終わり方を知ると人生が動き出す〜お腹のガンになったらどうなるの?〜https://note.mu/benpilabo/n/na7a4c302f873