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便秘の診断にはレントゲン検査が必要だ!
こんにちは。
今日はレントゲン検査について解説していきたいと思います。
お付き合いくださいね。
お腹のレントゲン検査をなぜ未だに行うか?
確かにCTやMRIの方が得られる情報は多いことには間違いないです。
それでもレントゲン検査が残っているのにはわけがあります。
少なくとも僕は重宝していますね。
・被曝量が少ない
・腸管の情報はそこそこ得られる
・早い
・安い
早い、安い、うまい
まるでラーメンのようですね。
これはお腹のCTと比べたメリットです。
値段は安いし、さっと終わります。
これも大事なファクターの一つですよね。
被曝も考えてしまいますよね。
被曝による発がんのリスクは、単純にどれくらい被曝すればガンのリスクがこれくらい上がる、というのを簡単に述べることは難しいですが、だいたい100mSvを超えると発がんリスクが優位に上昇するというのが専門家の見解のようです。
ちなみにお腹のレントゲンは1回0.5mSv、CTでは8.8mSvくらいと言われていますので、お腹のレントゲンはだいぶ少ないというのがわかります。
まあ、CTを何度か撮影したくらいでは問題なさそうではありますけどね。
妊婦さんにレントゲンを撮ったくらいではおそらく問題にはならないようですが、そうは言っても僕は撮ることはありません。この辺りは難しい問題ですね。
便秘診療においてお腹のレントゲンが必要な理由
これは医者によって意見が分かれる所ですね。
ここからは僕個人の意見がものすごく入っています。
①総腸間膜症の診断
②便やガスの現在の状況を知るため(小腸ガスも含めて)
シンプルにこの2つのためだけに僕はレントゲンを使います。
検査を行う時というのは、その検査によって「何を知りたいか」をはっきりさせる必要があります。
例えば30歳の男性が右下腹部をすごく痛がっている。
この場合には虫垂炎(いわゆる「もうちょう」)や憩室炎(けいしつえん)という病気があるかどうかを知りたいので、CTを撮ります。
この場合はお腹の超音波検査(エコー検査)やレントゲン検査では不十分です。
虫垂炎の診断はCTがもっとも感度の良い検査ですし、憩室炎という病気はレントゲンでは診断できません。
CTでないとわからない病気もあるんですね。
じゃあレントゲンはどうか?
①の総腸間膜症の診断はCTではできません。
総腸間膜症の診断にはレントゲンが必要なんです。
つまり、「総腸間膜症の診断のためにお腹のレントゲンを撮る」ということですね。
これは良い検査の行い方です。
②便やガスの現在の状況を知るため(小腸ガスも含めて)
こちらはどうでしょうか?
これに関してはCTの方が正直優れています。
CTを撮れば便やガスの状況を知るだけでなく、大腸ガンがあるかどうか(進行癌ならある程度CTで判断できます)や腸管以外の病気についても知ることができます。
CTというのはとにかく情報量が多いんですね。
それでも便やガスの状況を知るためにレントゲンを撮るのは、CTに比べて安いし、早いし、何より被曝が少ないからです。
②として僕がレントゲンを使う場合には、3ヶ月〜半年に1回くらいは行います。
もちろん撮影間隔は患者さんと相談の上、行いますが、平均するとこれくらいです。
毎回CTを撮るというのはさすがに馬鹿げていますし、レントゲンでもある程度の情報は得ることができます。
簡単にまとめると
①は診断のために②はフォローアップのために撮影する
僕はこのように使い分けて診療を行っています。
総腸間膜症って何?
総腸間膜症はいわゆる落下腸のことです。
普通ならお腹の後ろ側にしっかりと固定されているはずの大腸が、生まれつき固定されていません。
寝ている時は普通なのですが、立ったり座ったりすると大腸が骨盤の中に落ち込んでしまって、大腸の動くスペースがなくなってしまうのです。
満員電車の中で動けずに苦しくなっているイメージですね。
落下腸については以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてくださいね。
この落下腸ってやつは、CTやMRIで診断できるのでしょうか?
CTやMRIを受けたことがある方はお分かりかと思いますが、撮影する時は寝ていますよね?
立ったままCTやMRIは受けませんので、この落下腸の診断には向いていないのです。
なのでレントゲンが落下腸の診断のゴールドスタンダードです!
お腹のレントゲンが総腸間膜症(落下腸)の診断のゴールドスタンダード
便秘のフォローアップのためのレントゲン検査
みなさん受診された時には、おそらく一通り検査を受けられることになるかと思います。
軽い便秘で、他の病気で受診したついでに便秘の相談をされるなら、特に検査をせずに便秘薬のみ処方されるかもしれませんが、便秘がメインの症状で受診されるなら、おそらくなんらかの検査を受けることにはなると思います。
これらの検査は具体的な便秘の症状にもよりますが、普通はCTや大腸カメラなど受けることが多いかと思います。
それらで特に異常がなく、排便困難型であれば専門施設でデフィコグラフィーなど受けることが多いですね。
排便困難型とかデフィコグラフィーとか意味がわからない方は以下の記事を参考にしてくださいね。
どんな病気でもそうですが、検査というのは病院にかかり始めた時に多いものです。
まずは診断をつけるためです。
便秘も他の病気と同じで、しっかりと分類して診断するためには始めにこのような検査を行っておく必要があります。(もちろん途中で、この分類ではないのではないかと疑問を持ち、検査を行うこともありますよ)
問題はそのあとですね。
便秘が今、実際に改善しているのか、悪化しているのかなど調べるために、またCTとかデフィコグラフィーとか毎回行うわけにはいきませんよね?
これをフォローアップというのですが、
便秘のフォローアップにはレントゲンが非常に向いている
と僕は思います。
レントゲンでは便もある程度見えますし、ガスの分布もわかります。
患者さんが便秘が治っていないとおっしゃっても便がほとんどない場合もありますし、
逆に便秘が治ったとおっしゃっても全然変わっていないこともあります。
便秘の症状は結構主観的なので、客観的にレントゲンなどで評価するというのはすごく大事なことなんですね。
ちなみにお腹の超音波検査(エコー検査)で便秘のフォローアップをされている先生もいらっしゃると聞いたことがあります。
被曝もなく、すごく良いなあと思いますが、
本当にフォローアップできているのか、僕にはよくわかりません。
なぜなら超音波というのは空気に非常に弱いからです。
大腸には空気がもちろんありますので、あまり良い検査にならない可能性が高いです。
腸炎などで大腸の中が水びたしになっていたり、腸閉塞になっているなどの特殊な状況ではエコー検査も威力を発揮しますが、それ以外の場合に自分だったらしっかり評価する自信はないですねえ。
あとはレントゲンで小腸のガスもある程度わかります。
お腹が痛くて小腸ガスがたくさんある時は腸閉塞を疑います。
逆に症状が何もない時には小腸まで動きが悪いことがわかります。
というのも基本的には小腸には少量のガスしかないはずだからです。
この場合はSIBOの可能性はないかなあ
などと考えながら診療します。
ちなみにSIBOに関しては以下の記事で解説していますので、参考にしてくださいね。
まとめ
CT検査というのは非常に優れた検査です。
情報量も圧倒的に多いですし、その点に関してはレントゲン検査では正直太刀打ちできません。
ですが、レントゲン検査にもいろいろメリットはあることをご理解いただけたのではないでしょうか?
総腸間膜症の診断
便秘のフォローアップ
この2つに関しては現状お腹のレントゲン検査がNo.1と考えます。
今日はここまでです。
実は今回noteという媒体を使って電子書籍を書かせていただきました。
当サイト便秘LABOでは便秘と下痢にターゲットを絞ってブログを書いていますが、普段は消化器内科医として勤務していますのでお腹の癌の患者さんの診療に毎日当たっています。一度お腹の癌についてしっかりとまとめたいと思っていたんですね。
ご家族や友人にお腹の癌を患われている方がいらっしゃる方や、まだ若いけれども癌について興味のある方に読んでいただきたい内容になっています。
もちろん今現在癌にかかっているけれども、これから一体どんなことが自分に起こるのか知りたいという方にもぜひ読んで頂きたい内容です。
有料ではありますが、一度読んで頂けると幸いです。
終わり方を知ると人生が動き出す〜お腹のガンになったらどうなるの?〜