便秘・下痢

下剤を使っても残便感がある時はどんな病気が考えられる?

 

下剤を使っても残便感がある時はどんな病気が考えられる?

 

こんにちは。

今回は残便感について考えていきたいと思います。

残便感って苦しいですよね。

 

いっつもすっきりしない感覚って、言葉では言い表せないものと思います。

 

昔はあんなにバナナみたいな便が出ていたのに・・・

 

健康であった時と比べるとなおさら苦しくなるんでしょう。

 

 

ちなみに小さなコロッとした便は息んでも出しにくく、残便感になりやすいと言われています。

 

肛門はただの出口なのか?

 

ガンコちゃん

肛門ってただのうんちの出口じゃないんですか?

 

べんぴ先生

まあ、みんなそう思ってるわな。確かに便の出口であることは間違いない。そやけど、超優秀な出口なんや!

 

ガンコちゃん

はっ??

 

べんぴ先生

まあ説明しよう。

 

 

肛門は気体、液体、個体を識別することができる「優秀な出口」なのです。

 

おならが出そう、とか

下痢が出そう、とか

普通のうんちが出そう、とか

ガスが出そうやけど今息むとうんちが漏れてしまうな、とか

 

かなり鋭い感覚を持っているんですね。

 

なので便が少しでも残っていたりすると、肛門が敏感に感じ取ってしまうわけです。

 

ちなみに正常な人であれば、直腸には便がありません。

最後の最後にS状結腸から直腸に便が降りてきて、便をしたくなってトイレに行って出す

というのが普通です。

 

なので直腸に便が残っているというのは、あまり良いことではないんですね。

 

摘便はしても良いのか?

残便感の強い方はよく摘便(てきべん)をしますよね?

摘便というのは自分の指で便を搔き出すことです。

 

摘便をすると一時的には気分がよくなるかもしれませんが、実はあまりお勧めできません。

 

なぜなら肛門に傷ができてしまうからです。

 

肛門は先ほど申し上げた通り、すごく繊細なので、傷がついてしまうとうまく機能しなくなってしまうことがあります。

 

そうなるとどんな事が起こるかわかりますか?

 

便が漏れてしまうようになるんです。

 

これを便失禁と言います。

 

便失禁はQOL(Quality Of Life:生活の質)が劇的に下がってしまうので、なるべくなら避けたいですよねえ。

残便感がある時はどんな病気を考えないといけないか?

 

ここからが本題です。

 

残便感がある時はどんなふうに病気を突き詰めていけば良いのでしょうか?

 

ガンコちゃん

これって前にもやりませんでしたっけ?

 

べんぴ先生

復習や、復習。1回では誰も覚えられへんからね。

 

まず残便感の定義ですが、ここでは

お尻の近くに便が残っていることを残便感と呼びます。

 

お腹に便が残っている感じがするのは、普通の便秘と考えますので別の思考回路が必要です。

これについては以下の記事を参考にしてくださいね。

 

残便感を伴う便秘を排便困難型の便秘と呼ぶことが多いです。

 

それでは排便困難型の便秘ではどんな病気を考えなくてはいけないのでしょうか?

 

排便困難型の便秘

・硬便による排便困難

・便排出障害(機能性・器質性)

・排便強迫神経症

 

よくわからないと思いますので簡単に説明しますね。

硬便による排便困難

 

まず一番上から。

硬い便を出そうとすると、誰でも排便困難になります。

そりゃそうです。

 

下剤を使って柔らかくした時には残便感がない

という方はこの硬便による排便困難に分類されます。

 

この場合は排便困難型ではなく排便回数減少型に分類されます。

排便回数減少型についてよくわからない方はこちらの記事を参考にしてくださいね。

 

排便強迫神経症

 

これは本当は便なんか溜まっていないのに

直腸に便が溜まっていると感じてしまい、トイレに行っても行っても出ないかちょっぴりだけ出る

という病気です。

幻の便秘

と呼ばれたりもします。

 

刺激性の下剤を連日使用している人に多い印象です。

 

刺激性下剤を連日使用するのはそもそもお勧めできません。

理由については以下の記事を参考にしてくださいね。

 

本当に排便強迫神経症かどうかを判断するためには、しっかり便を出せていることを確認する必要があります。

 

それにはデフィコグラフィーという検査が必要です。

 

デフィコグラフィーという言葉は普通の人はお聞きになったことがないと思います。

デフィコグラフィーについては以下の記事でまとめていますので、参考にしてみてくださいね。

 

この検査で

「ほら、しっかりと便は出せていますよ。大丈夫です。」

と言ってあげるだけで治ったりもします。

もちろんもっと根深い問題がある人はいらっしゃいますが。

 

便排出障害

 

便排出障害についてはこのブログで何度か取り上げてきました。

ここが今日の一番のポイントです。

 

便排出障害には器質性と機能性の2つに大別されるのでした。

 

器質性とは簡単に言うとパッと見てわかる形などの異常

機能性とは動きの異常

なんですね。

 

器質性と機能性をどう分類するかというと

やっぱりデフィコグラフィーという検査が必要です。

 

デフィコグラフィーはリアルタイムに動きや形を観察でき、残便があるかどうかもあっさりわかってしまうんですね。

 

他に必要な検査は

バルーン排出テスト直腸肛門内圧検査です。

この2つについてもしっかり復習しておきましょうね。

 

ではこれらの検査でどんな病気がわかるのでしょうか?

まず器質性便排出障害から見て見ましょう。

 

器質性便排出障害

・直腸瘤

・直腸粘膜脱、直腸重責、直腸脱

・巨大直腸

・小腸瘤

・S状結腸瘤

 

これだけでも結構あります。

これらは直腸の形態に異常があるので、デフィコグラフィーでほとんど診断できそうです。

小腸瘤やS状結腸瘤は通常のデフィコグラフィーでは診断が難しいので、事前にバリウムなどの造影剤を飲んでもらったり、お尻からバリウムを流し込んでおく必要があります。

 

だいたい先ほどのデフィコグラフィーの記事で説明していますが、直腸瘤だけは別記事にまとめてあります。

直腸瘤について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてくださいね。

 

次に機能性便排出障害です。

機能性便排出障害

①骨盤底筋協調運動障害

②怒責力不足

③直腸感覚低下

④直腸収縮力低下

こちらは動きの異常です。

排便の際には腹圧と肛門内圧というのが非常に重要になるのですが、

通常は腹圧はしっかりとかかるけれども肛門内圧は力が抜けている

というのがベストです。

 

そのバランスが崩れていたり、腹圧がかからなかったりするとこのように

便排出障害になるのです。

 

こちらはしっかりとした治療があります。

それはバイオフィードバック療法と呼ばれるものです。

これはものすごく大事な言葉ですので覚えておいてくださいね。

 

バイオフィードバック療法については以下の記事を参考にしてください。

まとめ

以上駆け足で残便感を感じた時にどんな病気を考えなくてはいけないか、について解説しました。

下剤を使用して、便が柔らかいのに残便感がある、という時は何か体の中に異常が起きている可能性が高まります。

 

しっかりと検査を受けて治療につなげましょうね。

ではでは〜

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ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医