お腹の病気

大腸癌ってどんな特徴があるの?

大腸癌ってどんな特徴があるの?

皆さんこんにちは。

べんぴ先生です。

今日は前回に引き続き大腸癌について解説していきたいと思います。

今回は大腸癌の特徴について解説したいと思いますので、お付き合いくださいね。

症状の特徴については前回お伝えした通りですので、そちらを参考にしてくださいね。

 

大腸癌の特徴について箇条書きにしてみたいと思います。

大腸癌の特徴

・他のお腹の中の癌に比べて予後が良い

・遠隔転移があっても手術ができる可能性がある

・化学療法にたくさんの種類がある

他のお腹の中の癌に比べて予後が良い

べんぴ先生

お腹の中の癌ってどんなものがあるかわかるかい?

ガンコちゃん

胃癌とか膵臓癌とかですか?

べんぴ先生

うん。他には肝臓癌、胆嚢癌、胆管癌、十二指腸癌、小腸癌などがある。

ガンコちゃん

腎臓癌とか子宮癌とかはどうなんですか?

べんぴ先生

腎臓癌は泌尿器科、子宮癌は婦人科が対応してる。僕は消化器内科が専門なので、そちらに関しては詳しくない。

ガンコちゃん

え〜医者なのに?

べんぴ先生

すまんね。ただ、消化器内科だけでも膨大な勉強量が必要なんや。他の臓器まで勉強する時間は正直ないのが実情や。

ガンコちゃん

わかりました。

 

話を元に戻しましょう。

大腸癌というのは一般的に他のお腹の中の癌よりも予後が良いことで知られています。

例えば今あなたがもう手術ができない状態(stageⅣ)で見つかったとしましょう。

もしも何も治療しないとして、あと何ヶ月生きられると思いますか?

ガンコちゃん

ステージⅣと言うともうダメだというイメージですね。3ヶ月から半年くらいですか?

べんぴ先生

惜しいね。もう少し長くて、だいたい8ヶ月と言われている。

ちなみに胃癌はステージⅣで見つかり、化学療法を行わなければ余命3〜4ヶ月と言われています。

それでは化学療法を行ったらどれくらい寿命が伸びるかわかりますか?

ガンコちゃん

化学療法って治す治療ではないんですよね?1年半くらいに伸びるんじゃないですかねえ?

べんぴ先生

これが30ヶ月まで伸びるんや。つまり癌がもう切除できない状態で発見されてから、頑張って化学療法を行えば30ヶ月生きられるんや。

ガンコちゃん

つまり約2年伸びるということですね?

べんぴ先生

そうや。その2年をどう捉えるかは人それぞれやけどな。

ステージⅣでも8ヶ月生きられる。

抗がん剤を行えば30ヶ月生きられる。

もちろんこれは平均の話であってみんながみんな30ヶ月生きるわけではありません。(厳密に言えば生存期間中央値なので平均ではないですが、「だいたいこれくらい」と思っていただいて間違いはないです)

ただ、化学療法を行って2年近く寿命が伸びるというのは相当良い方だと思ってください。

遠隔転移があっても手術ができる可能性がある

例えば胃癌とか膵臓癌について考えてみましょう。

遠隔転移というのは肝臓とか肺に腫瘍が転移しているということですね。

転移にはリンパを介したものや血管を介したもの、腹膜播種などがあります。

胃癌や膵臓癌では例えば肝臓に1つだけ、しかも1cmの転移巣があるだけで根治手術の適応にはなりません。

 

しかし大腸癌の場合は複数個肝臓に転移していても手術できる場合があるんです。

つまり大腸だけでなく、肝臓も手術で取ってしまうんですね。

 

もちろん肝臓がないと生きていけませんので、切除できる限界のボリュームというのがある程度決まっています。

それを超えない範囲で切除できるのであれば肝臓も一緒に切除してしまうんですね。

 

なんで大腸だけこんなことができるのか?

それは切除すれば寿命が伸びるエビデンス(科学的根拠)があるからです。

 

膵臓癌や胃癌の場合は切除するメリットが乏しいんですね。

 

こういう事情もあり、大腸癌には積極的に攻める治療というのが可能な訳です。

ガンコちゃん

一言で癌と言ってもいろんなものがあるんですね。人間と一緒だ。

べんぴ先生

その通りや。大腸癌の時は少しくらいは無理してでも手術することが多い印象かな。

化学療法にたくさんの種類がある

大腸癌で使うことのできる薬剤は実にたくさんあります。

一番初めに行う化学療法の種類を1次治療

2番目に行う化学療法の種類を2次治療

3番目に行う化学療法の種類を3次治療と呼ぶのですが、

大腸癌の場合は5次治療まであります。

しかも2019年1月に出版された大腸癌治療ガイドラインによるとペンブロリズマブという薬も使えるので最大6次治療まで行う可能性がありそうです。

もちろん副作用の兼ね合いもあるので、みんながみんな最後まで治療を行うことは難しいですが、選択肢が多いということは本当に良いことですね。

 

当然抗がん剤治療を行っていくうちに、はじめは手術適応ではないとされていても効果が出てきて、手術可能となる症例もあります。

これをコンバージョンセラピーと言います。

もちろんコンバージョンセラピーで手術を行うべきかどうかというのはケースバイケースですが、個人的には化学療法をずーっと続けていくとさすがに色々な副作用が出てきて、続けていくことが難しくなるので、切除できる可能性があるのであれば手術したほうが良いかな、と考えています。(もちろん色々な考え方がありますが)

 

ついでに話させていただくと、

大腸癌では遺伝子の変異を調べて、ありなしで治療が変わってきます。

今回2019年の大腸癌治療ガイドラインというものが出版され、大幅に治療が変わったんですね。

遺伝子診断を行うということはどういうことか?

それは治療が今までよりもオーダーメイド化されたということです。

つまり一人一人に合わせた治療が可能になりつつあるということです。僕の知るところでは肺癌が一歩進んでいた印象でしたが、大腸癌に関してもすごく進んできたなあという印象です。

そうは言っても

ここを勘違いされている方が多いのですが、まだ抗がん剤は夢のような治療ではないんですね。

今のところ、抗がん剤は治癒を期待して使うのではなく(もちろん治癒に至る方もいらっしゃいますが、ごくわずかです)あくまでも寿命をのばすために行うものです。

そして、寿命をのばす理由を明確にしておく必要があると僕は考えます。

例えば

息子の結婚式が何月にあるからそれまでは元気でいないと困るとか

仕事の関係でどうしてもここまでは頑張りたいとか

 

もちろん

抗がん剤で治癒に至るのが例えば1%でもそれにかける

これも良いと思います。1%とわかりながら頑張って化学療法を行うのですから、僕らも効果があることを祈ります。

 

逆に目標がなく抗がん剤治療を続けるのは難しいです。

 

病院には2〜3週間に一度は受診しなければならない

お金もかかる(高額療養費制度を使えば月10万円くらいです)

何より副作用が辛い

 

特に副作用ですね。大腸癌の抗がん剤治療では「しびれ」がキーポイントになってきます。key drugのオキサリプラチンを続けていくとまず間違いなくしびれが出てしまいます。

僕の経験で申し訳ないのですが、一度出てしまうとなかなか改善しないですね。

しかもしびれに効く良い薬がないのも実情です。

 

このような実情もあり、何のために抗がん剤を行うのかはっきりしておくのが良いと考えます。

厳しいようですが、何か目標があるとある程度人は頑張れるんですね。逆に明確な目標がないのに辛い治療を続けることは難しいと思います。(長生きしたいと考えるのは当然のことなので、そこに関しては全く否定する気はありません。)

実際に患者さんを診ていてそう思います。

 

まとめ

今日は大腸癌の特徴についてまとめさせていただきました。

最後の方は少し重い内容になってしまいました。

 

抗がん剤への考え方というのは本当に医者一人一人違います。

積極的に勧める医者もいれば、あくまでフラットに話をする医者もいます。

この辺りは人生観なども影響しているのでしょう。

 

何れにしても癌治療というのは、主治医と患者さんの関係が本当に大事です。

よく話し合って治療方針を決定されるのが良いかと思います。

 

また大腸癌に使用する抗がん剤については別のところで詳しく取り上げたいと思います。

今日はお疲れ様でした。

 

 

実は今回noteという媒体を使って電子書籍を書かせていただきました。

当サイト便秘LABOでは便秘と下痢にターゲットを絞ってブログを書いていますが、普段は消化器内科医として勤務していますのでお腹の癌の患者さんの診療に毎日当たっています。一度お腹の癌についてしっかりとまとめたいと思っていたんですね。化学療法や手術についての詳しい説明はしておらず、どちらかというと緩和医療に関する内容となっております。

ご家族や友人にお腹の癌を患われている方がいらっしゃる方や、まだ若いけれども癌について興味のある方に読んでいただきたい内容になっています。

もちろん今現在癌にかかっているけれども、これから一体どんなことが自分に起こるのか知りたいという方にもぜひ読んで頂きたい内容です。(覚悟が必要です)

有料ではありますが、一度読んで頂けると幸いです。

終わり方を知ると人生が動き出す〜お腹のガンになったらどうなるの?〜

 

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医