お腹の病気

大腸癌ステージ4に行う抗がん剤治療をわかりやすく解説してみる!①

大腸癌ステージ4に行う抗がん剤治療をわかりやすく解説してみる!①

こんにちは、べんぴ先生です。

今日から大腸癌ステージ4に行う抗がん剤治療について解説していきたいと思います。

お付き合いくださいね。

大腸癌の治療効果判定はどうやって行う?

ガンコちゃん

先生ステージ4でも大腸癌の場合は特別って言ってましたよね?

べんぴ先生

お腹の癌の中ではね。ステージ4でも根治術を狙いにいくことがあるからね。これは前回までに説明した通りや。

ガンコちゃん

実際に完治する人もいらっしゃるんですか?

べんぴ先生

完治というのは癌の場合なかなか言い切ることは難しいんや。僕は完治と呼ぶよりは再発しないで健康に生きると言うことが多いかな。

ガンコちゃん

なるほど。

完治。

言いたいですけどね。

でも、上述のように完治と言い切ることは癌治療の場合は結構難しいことなんです。

例えば胃癌の手術をして経過が良かったのに10年後くらいに再発する、なんてこともあるんです。

「あの時先生は完治って言ったじゃないですか?」

なんてことになってしまいますからね。

なので

再発せずに健康に暮らし続けられている

このようにいつも患者さんにはお伝えするようにしていますね。

 

CR,PR,SD,PDなどの医療用語についてお聞きになったことがあるでしょうか?

癌治療についてしっかりと勉強されている方はご理解されているかもしれません。

治療効果判定

完全奏効(Complete Response:CR)

部分奏効(Partial Response:PR)

安定(Stable Disease:SD)

進行(Progressive Disease:PD)

簡単に説明しましょう。

せっかく治療をするのだから、治療がどれだけ効果を発揮したかという指標が必要ですよね?

抗がん剤を使うだけ使っておいて、どれだけ効果を発揮したかを評価しないというのは許されることではありません。

これはどんな薬にでも言えることですが、特に抗がん剤は副作用が多いのでこの効果判定というものが大事になってくるんですね。

 

皆さんは僕ら医者がどんな感じで治療効果を判定しているかご存知ですか?

ガンコちゃん

大腸癌だったら内視鏡をもう一回見て、「大きくなったね」とか「小さくなったね」とか言うんじゃないんですか?

べんぴ先生

いや、内視鏡は効果判定には不向きや。もちろん使う場合もあるけどね。でも使い方はかなり限局的なんや。

ガンコちゃん

じゃあどうやって判断するんですか??

 

皆さん、ステージⅣは体の中がどんな状態になっているんでしたっけ?

 

そうです。遠隔転移があるんでしたね。

 

つまりCTで見てわかる転移巣があるということです。

 

この転移巣をCTを用いて評価するんです。

 

ガンコちゃん

大きくなったね、とかそういうことですか?

べんぴ先生

そうや。だけどしっかりとした基準に沿ってやってるんよ。何となく大きくなったとかそんなんじゃない。

 

そうなんです。

当然なんですが、僕らはしっかりと遠隔転移巣の長さを測って評価しているんですね。

 

RECISTガイドラインというものに沿ってなるべく正確に評価しています。

 

てきとうにやっているわけではありません。

 

ちなみにRECISTガイドラインはすべての「がん」に適応されるわけではありません。脳腫瘍や悪性リンパ腫などの病気には別のガイドラインがあります。

 

簡単にRECISTガイドラインについて説明しておくと

実は腫瘍の最大径を測定するんですね。

体積ではないんです。

この辺りが一番長そうだな、というところをCTで選んで長さを測るんですね。

それで例えば2個病変があればその最大径を足し算します。

 

CTを撮影するごとにその最大径を記録していくわけです。

 

例えば2つ転移巣があって

初回のCTでは20mmと25mmだったら

20+25=45mm

45mmと記録しておくわけです。

 

2回目のCTでは少し効果が出て

12mmと15mmになったなら

12+15=27

27mmと記録するんですね。

 

効果の判定の仕方もしっかりと定義があるのですが、それについては割愛します。

この場合はしっかりと効果が出ている、と判断できるわけです。

 

 

それではCR,PR,SD,PDについて簡単に解説しましょう。

つまりこれが治療効果判定に使われる用語のわけですが、

簡単にいうと

治療効果判定

CR=目で見てわかる腫瘍がなくなったね

PR=しっかりと治療効果が出て、小さくなったね

SD=あんまり変わっていないね(腫瘍のコントロールはできているね)

PD=・・・悪くなってしまいましたね

 

だから医者が「SDだな」とボソッと言ったら

「ああ、変わっていないんだな」

と思ってください。

 

こんなふうに治療効果判定は行われているんですね。

 

大腸癌の完全奏功(CR)って本当にあるの?

ガンコちゃん

先生、大腸癌がステージⅣまで進んでしまってもCRになることはあるんですか?

べんぴ先生

うん。あるにはある。

ガンコちゃん

どれくらいの割合であるんですか?

 

先ほどもお伝えしましたが、大腸癌の場合はステージⅣと言っても根治手術を狙える時があるんですね。

その場合はまた話が変わってくるので、今回は根治手術ができないステージⅣについて説明します。

 

ここでは大腸癌に対して使われることの多いレジメン(薬の組み合わせ)で説明してみたいと思います。

例えばmFOLFOX6+ベバシズマブというレジメンを1番目に使ったとします。

SOFT試験という試験の結果に基づいたデータでは

治療効果

CR:3%

PR:59%

SD:27%

PD:4%

PFS:10.2ヶ月

OS:30.9ヶ月

 

ガンコちゃん

CRが3%ですね。これは高いんですか?低いんですか?

べんぴ先生

高い低いというのは相対的なもの、つまり何かと比べた言葉やろ?そやから何と比べているかということが大事なんや。それをはっきりさせないと使えない。

べんぴ先生

この3%を高いと捉えるか低いと捉えるか。それは患者さん本人が決めることやと僕は思うよ。

ガンコちゃん

なるほど。私ならこの3%にかけてみたいかも・・・

べんぴ先生

うん。その考えはその考えでいいんじゃないかな?それぞれの価値観というものがあるから。もしもガンコちゃんが患者さんなら僕は応援していると思うよ。

ガンコちゃん

ありがとうございます。まだ患者じゃないけど。他に先生気になったことがあるんですけど?

べんぴ先生

なんや?

ガンコちゃん

PFSとかOSってなんですか?

べんぴ先生

まだ話をしていなかったな。この2つの用語についても説明していこう。

ガンコちゃん

なんか英語ばっかりで覚えられへんです。

べんぴ先生

必ずしも覚える必要はないけどね。でも今日出てくる単語は全部覚えておいても良いかもね。何を読んでも出てくるから。お金だったら円とかドルとかユーロとかそれくらい基本的な言葉や。

ガンコちゃん

・・・頑張って覚えます。

OSとPFSって?

この2つはとても基本的な用語なのですが、真に理解しようとすると本当に難しい言葉なんですね。

僕らにとっては本当に難しい意味を持つのですが、皆さんは簡単な概念だけを理解してもらえば十分です。

OSとPFS

・OS=Overall survival(全生存期間)

・PFS=Progression free survival(無増悪生存期間)

わかりにくいですね。

簡単に説明してみましょう。

OSとPFS

OS=とりあえずどれだけの期間生きられるか?

PFS=どのくらいの間、その薬で腫瘍を安定させられるか?

 

うーん。いまいちか。

 

OSはかなりざっくりした概念です。

ようは抗がん剤をやればどれだけ生きられるの?ってことです。

OS=30.9ヶ月であれば

この抗がん剤をやっていけばだいたい31ヶ月くらいは生きられるのね。

 

PFSはもう少し難しい概念ですね。

PFS=10.2ヶ月であれば

要するにこの薬を使えば10.2ヶ月の間、少なくとも悪化はしない可能性が高いですよ。

ということですね。

 

一概には言えないのですが、PFSが10ヶ月であれば

この薬を続けられる期間はだいたい10ヶ月で、10ヶ月経ったら違う薬に変える可能性が高いですよ。

ということです。

 

一番目に使う薬剤、この場合ならmFOLFOX6+ベバシズマブであれば

これをファーストラインの治療と呼びます。

2番目に使うものはセカンドラインの治療と呼びます。

3番目はサードラインの治療

こんな感じです。

 

つまりmFOLFOX6+ベバシズマブをファーストラインの治療に選んだ場合、だいたい10ヶ月くらいは続けられますが、そのあとはセカンドラインの治療に移ることが多いですよ、という意味です。

 

お分かりでしょうか?

ガンコちゃん

なんとなくわかりました。

べんぴ先生

よかった。なんとなくでええんや。

 

癌の治療で何が大事か?

 

もちろんCRを狙って3%にかけるという選択も尊いものです。

単純に考えると100人中3人は癌の苦しみから抜け出せる可能性があるのです。

 

ただ逆に考えると97人は抜け出せない。

 

寿命を伸ばすという観点から抗がん剤治療を選んだ場合、何を指標に抗がん剤治療の意味を考えたら良いのでしょうか?

 

これはいろんな意見があるので一概には言えませんが、少なくとも僕の考えをお伝えしたいと思います。

抗がん剤治療の意義=OS×QOL

OSというのは全生存期間です。

ある抗がん剤治療を行った時にあとどれくらい生きられるかですね。

QOL=quality of life つまり生活の質ですね。

 

OS×QOL=質×量

 

例えば0S=60ヶ月というレジメンが仮にあったとします。

しかし副作用はものすごくきつい。

副作用ばっかり出て、ものすごく辛いけれでも5年生きられる。

 

もちろんこれをどう捉えるかはそれぞれの価値観によるので、僕が何かを言うことは難しいですが、自分なら嫌ですね。

つまり量はいいけれども質は悲惨というわけです。掛け算をしてもあまり大きな値にはならないですよね?

 

では次の場合はどうでしょうか?

OS=20ヶ月

QOL高い

 

これは抗がん剤治療では相当良い部類に入ると思います。

抗がん剤をしなれば例えば6ヶ月しか生きられないけれど抗がん剤をすれば20ヶ月生きられて、しかも生活の質もある程度高い。

これならやってみようと思いますよね?

 

こんなふうに量×質で考えると見えてくるものがあると思います。

つまりOSだけで判断するのはまずい

ということです。

 

その抗がん剤で起こりうる副作用、そしてどれくらいの割合でその副作用が起こるのか、起こったらどんな生活になるのか、などに基づいて判断する必要があるんですね。

 

OSと同様にPFSについても考える必要があります。(これは上級者向けです。)

PFSは腫瘍が進行しない期間を表す言葉ですが、普通に考えたら腫瘍が進行しないとすればその間はQOLは下がらないように見えます。

でもそれはあくまでも副作用を加味しない場合ですよね?

例えば先ほどのmFOLFOX6について考えれば、しびれの副作用は必発です。はじめは出ないにしても4、5ヶ月くらいすればほぼ必発と考えて良いでしょう。

 

しびれが悪化すると指先の感覚がどんどん悪くなりますので、何かと日常生活も不便になることがあります。痛みを伴うこともあります。

 

PFSは長くて、腫瘍の増悪はないのだけれども生活の質はかなり下がっている可能性もあるわけです。

 

こんなふうにOSやPFSだけその抗がん剤治療の価値を判断することは難しいんです。

ガンコちゃん

質×量か・・・なんとなく腑に落ちました。

その抗がん剤治療を行うかどうかは主治医との話し合いが最も大事なことなんですけれども、患者さんもご自身で勉強して、自分の決断に責任を持つことが大事なんですね。

治療方針は主治医と話し合いをして決めますが、最後に決めるのは患者さんご自身です。

 

医者に丸投げにするのではなく、自分の人生は自分で選ぶんだという意思を持って、抗がん剤治療の勉強をしていくのが良いと考えます。

そしてその際に少しだけでもこのブログが手助けできれば、それ以上の喜びはないですね。

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ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医