お腹の病気

大腸癌ステージ4に行う抗がん剤治療をわかりやすく解説してみる!③

ファーストライン治療を決めよう

ここまででファーストライン治療を決めるために考えるべき要素はほとんど揃いました。

ガンコちゃん

ついにですか。

べんぴ先生

長かったね。ファーストラインの治療を決めてしまおう。

ガンコちゃん

はいっ!!

考えるべきこと

①BRAF・RAS遺伝子

②大腸癌が左右どちらにあるか

③オキサリプラチンとイリノテカンのどちらを使うか

④ポートを作るかどうか

⑤コンバージョンセラピーを狙うかどうか

ざっとこれくらいを考えれば、ファーストラインの治療が決まってくると思われます。

当然、その他にも色々な要素が絡み合ってくるのですが、大まかには決まってくると思います。

あとは担当の先生がどの薬剤を使い慣れているか、なども大事な要素かもしれません。

ガンコちゃん

先生、この5つは今までに勉強してきたものですよね?全部聞いたことがありますよ。

べんぴ先生

ガンコちゃん、その通り。いきなりこのブログを読めば全く意味がわからないと思うけど、今までに書いてきたブログを読んでもらえれば、多少理解できるはずや。

ガンコちゃん

全部読んでくれ、という話ですね。

べんぴ先生

読んでいただきたいね。

復習も兼ねて

復習も兼ねて説明しましょう。

まず下の図をみてください。

 

2剤と3剤

・2剤➡︎FOLFOX  CAPOX  SOX  FOLFIRI  S-1+IRI

・3剤➡︎FOFOXIRI

 

BRAF遺伝子とRAS遺伝子に異常があるかどうかがすごく大事なのでした。

ちなみにBRAF遺伝子変異がある人は手術ができない大腸癌患者さんの5%に認められると言われています。

BRAF遺伝子変異がある場合は、抗がん剤治療の効果が乏しく、予後が不良であることが多いと言われています。

なので3剤も抗がん剤を使うことが勧められているんですね。

3剤というのはFOLFOXIRI療法のことです。オキサリプラチンとイリノテカンの両方が入っているものです。

 

逆にBRAF遺伝子変異があるとおのずとオススメの抗がん剤治療は決まるので、シンプルで良いですね。(当然それに耐えうる全身状態の良さが必要です)

 

大腸癌が左右どちらにあるか、ということもすごく大事な要素でしたね?

これは最近になって重要視され始めた事実なんでしたね。

 

RAS遺伝子とBRAF遺伝子に変異がなくて、腫瘍が左側にあるのであれば

FOLFOXもしくはFOLFIRIが勧められています。

これらのレジメンはポートがないとできないので、ポート造設が勧められるわけです。

もちろんどうしても嫌なのであれば、拒否して違うレジメンを選べば良いのですが。

 

 

とはオキサリプラチンとイリノテカンのどちらをはじめに使うか、もしくはどちらも使ってしまうかという選択もものすごく重要です。

 

オキサリプラチンにはしびれという特徴的な副作用があり、それがあとあとボディーブローのように効いてくる可能性があるのでしたね。

副作用の観点から考えるとイリノテカンから先に使ったほうがよい可能性がありますが、なかなかそれだけでは決められないのが実情です。

 

あとはポートを作るかどうかでも可能なレジメンが変わってくるのでしたね。FOLFOXやFOLFIRI、FOLFOXIRIの3つはポートがないと難しいです。

それ以外はポートがなくても可能なんですね。

 

CAPOXって何?

続いてCAPOXもしくはCapeOXについて説明したいと思います。

カペシタビンという内服の抗がん剤とオキサリプラチンを組み合わせた抗がん剤治療です。

僕自身、stageⅣの患者さんに使用したことがないんですね。

もちろん選択することもできたのですが、どうも使う気になれなかったというのが本音です。

カペシタビンという薬には特徴的な副作用があります。

それは手足皮膚反応というものです。

手足に皮膚の変化が出て、皮疹が出ます。

それだけならまだいいのですが、しびれたり痛みが出たりすることが多いんですね。

ガンコちゃん

オキサリプラチンもしびれの副作用がありますよね?

べんぴ先生

その通りや。この2つを一緒に使用することで、しびれの副作用が増強する可能性があるんや。

ガンコちゃん

辛そうですね。

べんぴ先生

そうや。しかもファーストラインで使用して、重度のしびれや手足の皮疹が残ってしまったら、QOLがものすごく下がってしまう。それだけでなく、使用できる薬剤も減ってしまう可能性があるんや。

ガンコちゃん

・・・はじめの治療には向いてなさそうですね。

べんぴ先生

僕はそう思うよ。

 

CAPOXにメリットがあるとすれば1クールが3週間なんですね。

FOLFOXやFOLFIRI、FOLFOXIRIは全部1クールが2週間です。

つまり仕事をしながら抗がん剤を続けるには、CAPOXの方が良い可能性があります。

 

もちろんこれは最大のメリットなのですが、この点で評価するならばSOXもそのメリットを持っています。

 

SOXというのはS-1という薬とオキサリプラチンを組み合わせたレジメンなのですが、こちらも1クール3週間で、ポートを作らなくてもできますし、皮膚の副作用もCAPOXよりも少ない印象です。

 

なので、僕はポートを作りたくないという方にはSOXを勧めることが多いですね。

 

コンバージョンセラピーを狙うなら

これも大事な考えです。

コンバージョンセラピー。覚えていらっしゃいますか?

はじめは手術が不可能と判断されても、抗がん剤治療を行っていくうちに手術が可能になるということですね。

ガンコちゃん

コンバージョンセラピーを狙うならどのレジメンがオススメなんですか?

べんぴ先生

それがあんまり決まっていないんや。

ガンコちゃん

なんやねん。

これは病院によって、先生によって、患者さんの状態によって変わってくると思います。

 

僕はコンバージョンセラピーは当然常に狙っているのですが、それを意識して何かを変えるということはあまりしていません。むしろ今までのような他の要素を重視していますね。

 

ただコンバージョンセラピーを強く意識するとすれば、FOLFIRIよりはFOLFOXかFOLFOXIRIを選ぶかもしれません。

 

なぜかと言うとイリノテカンには脂肪性肝炎という副作用が報告されているからです。

 

大腸癌の転移は基本的に肝臓が多いので、コンバージョンセラピーでは肝臓と大腸の両方を切除することが多いんですね。

肝臓を切除するのに抗がん剤の影響で肝炎になっていたら、うまくいく手術もうまくいかなくなってしまいます。

もちろんオキサリプラチンも多少肝臓に影響を与えるのですが、イリノテカンよりは影響が小さいと思います

 

なのでFOLFIRIよりはFOLFOXを選ぶ、もしくはFOLFOXIRIを選びますね。

FOLFOXIRIにもイリノテカンは入っていますが、それはもう「ドカンといくぞ」という感じです。

 

あとは分子標的薬をどうするかという問題もあります。

これも本当に難しいのですが、基本的には現状では今までの話通りに使えば良いと思います。

ベバシズマブよりも、セツキシマブ、パニツムマブのほうが腫瘍を縮小する効果が強いという試験があるのですが、切除率には差がないという報告もあります。

なので、あまり難しく考えずに今までお話しした通りに使えば良いのではないかと思います。

ただ、またこれも別の機会にお話ししますが、ベバシズマブは傷の治りを遅くしたり、腫瘍を穿孔(敗れること)させてしまうこともあるので手術の6〜8週間前から使わないほうが良いんですね。

コンバージョンセラピーを狙うならベバシズマブの使い方は考える必要があります。

まとめ

今日も大腸癌stageⅣに行う化学療法について解説しました。

難しかったですね。今日の話をすべて理解できたら、もはや医者レベルです。

すべて理解する必要はありませんし、すべてに正しい答えがあるわけではないということがわかって頂ければOKです。

 

次回以降は分子標的薬の特徴についてお話しし、具体的な例をお示ししながら一緒に考えていけたらと思います。

今日もお疲れ様でした。

 

 

 

1 2 3
ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医