お腹の病気

直腸潰瘍って何者??便秘が原因になる?

直腸潰瘍って何者??便秘が原因になる?

みなさんこんにちは。

べんぴ先生です。

今日は直腸潰瘍という病気について解説していきたいと思います。

お付き合いください。

直腸潰瘍って?

直腸潰瘍というのは文字どおり直腸にできる潰瘍です。

直腸っていうのは肛門に一番近い腸ですね。

ここです。

ガンコちゃん

さすがに覚えてきましたよ〜

べんぴ先生

すごいすごい!

直腸潰瘍は実は2つの病気に分類されます。

直腸潰瘍

1、宿便性潰瘍

2、急性出血性直腸潰瘍

1の宿便性潰瘍は便秘が原因になってできる潰瘍です。

2の急性出血性直腸潰瘍は便秘があんまり関係のない潰瘍です。

ガンコちゃん

便秘の有無によって分けられるんですねえ。

べんぴ先生

本当はそこまで単純ではないけど、そんなところや。でも実はこの2つを明確に分けることは難しいんや。

ガンコちゃん

へ〜

どうやってこの2つを分ければ良いのでしょうか?

結論から言いますと、あんまり分ける必要はありません。

 

別に治療法が変わるわけではありませんので。

 

僕はこういう分類はあんまり好きじゃないんですね。

というのも本当に重要な分類というのは、「治療法がその分類によって変わる」というものであるべきですよね。

学会とか論文とかで議論するときには必要になることがあるので、そこでだけ使用していればいいかな、と思います。

 

一応説明しておきますと、

一番大事なのは潰瘍ができたときに便秘があるかどうかですね。

ひどい便秘があれば宿便性潰瘍の可能性が高いですし、便秘がなければ急性出血性直腸潰瘍の可能性が高まります。

あとは潰瘍のできる位置によってもある程度判断できると言われています。

急性出血性直腸潰瘍は肛門にすごく近い直腸にできることが多く、宿便性潰瘍は基本的には直腸にできるのですが、上行結腸やS状結腸にもできることがあると言われています。つまり宿便性潰瘍の方が肛門から比較的離れた位置にできやすいということですね。

 

実際には例えば血便がドバッと出たときには、浣腸を行ってから大腸カメラ検査を行うことが多いので、なかなか便秘のあるなしというのは言えないのが難しいところです。

 

個人的には皆さんはこのあたりの知識は忘れてしまって良いかな、と思います。

ガンコちゃん

だったら話す必要ないじゃない。

べんぴ先生

厳しいお人ですわ。

直腸潰瘍の症状は?

基本的には、血便オンリーです。

急にドバッと出血します。

つまり血便になって肛門から出てくるんですね。

 

ごく稀に痛みを伴う方がいらっしゃいますね。僕は一人だけ経験しました。

ただ、母数が多いのでかなり低い確率ですが。

 

あんまり検討していませんが、おそらく潰瘍が本当に肛門近くまで及んでいたのかもしれません。

直腸潰瘍はどんな人にできる?

皆さんはここまで読んで少し心配になられたのではないでしょうか?

「私も便秘だから潰瘍ができちゃんじゃないか?」

安心してください。

今まで特にご病気がなくて便秘だけひどい、という方はまず直腸潰瘍はできません。

少なくとも僕は出会ったことがありませんし、文献を調べてもそうです。

健康な人には直腸潰瘍はまずできない。

ではどういう方に直腸潰瘍ができるのか?

ズバリもともと基礎疾患があって、寝たきりの方です。

はい。

このような方がほとんどです。

直腸潰瘍はもともと基礎疾患のある寝たきりの方に多い

ちょっと安心されましたか?

ガンコちゃん

じゃあ私にはできませんね。よかったあ〜

べんぴ先生

うん。まあ、医学に絶対というものはないけどね。

ガンコちゃん

!!!

直腸潰瘍のリスク因子について箇条書きにしてみます。

 

宿便性潰瘍になりやすい患者さん

・高齢者(70歳前後)

・寝たきりの人

・心不全

・腎不全

・精神疾患のある患者さん

・ガンの末期

・腸の動きを止める薬を内服している方

これは前回も書きましたが、復習です。

こちらも読んでみてくださいね。

 

要するに何か別の重篤な病気にかかっている人に、直腸潰瘍はできることが多いということです。

 

直腸潰瘍からの出血というのは、まずほとんどの場合内視鏡治療で止血することができます。

僕も今まで止められなかったことはないですし、周りの医者の治療を見ていてもそう思います。文献を調べてもまず間違いなく内視鏡で止血できています。(万が一止血できなければ手術や血管内治療を行います。)

 

しかし、直腸潰瘍になってしまう方というのはもともとの病気のコントロールが不良であることが多いのでした。

つまり寿命を規定しているのは、もともとのご病気であることがほとんどです。。

寿命を規定するのは直腸潰瘍ではなく、もともとの基礎疾患

直腸潰瘍の治療は?

直腸潰瘍の出血自体は内視鏡で止めることができるのはわかりました。

では潰瘍そのものの治療はどうしたら良いのでしょうか?

 

体位変換です。

 

直腸潰瘍ができる一番の原因はおそらく血流が滞っていること、と言われています。

つまり血の流れが悪いんですね。

 

1日のうちに何度も何度も体位変換を定期的に行うのが治療になります。

そして便通コントロールをしっかりやっていくと自然に潰瘍が治るというわけです。

 

特に直腸潰瘍を治す薬があるわけではありません。

 

 

直腸潰瘍を治す薬はない。定期的な体位変換と排便コントロールが治療になる。

実際の症例を見ていこう

何例か実際の内視鏡写真を見ていただこうと思います。

臨場感が出ますしね。

直腸潰瘍の一例です。

真ん中の黒いぽっちが血管です。

この血管のことを露出血管と呼びます。

外に露出した血管という意味ですね。

 

胃潰瘍でも十二指腸潰瘍でもどんな潰瘍でもそうなのですが、この露出血管があるかどうかが非常に重要です。

例えば胃潰瘍があっても、露出血管がなければ入院が必要でないことがほとんどですが、露出血管があると処置が必要になり、入院となります。

 

この露出血管があると血が噴き出ることが多いんですね。

 

なので、この血管を見つけ次第止血術を行います。

もちろん内視鏡でですよ。

この白いのがクリップと呼ばれるものです。医療用のホッチキスのようなものですね。

2発クリップをかけました。

3発目をかけましたが、まだ出血は治りません。

最終的には4発かけたところで止血することができました。

綺麗に止まっていますね?

 

次の症例を見てみましょう。

見てください。血が線のように噴き出していますね?

これをみると僕らも若干焦ります。

これは動脈からの出血なので、早く止めないとどんどん貧血が進んでしまいますからね。

僕らのスイッチオンという感じです。

この時点ではまだ内視鏡の視界が保たれているので正直に言うとまだ大丈夫です。

本当にすごい出血の時は画面が真っ赤になって何も見えませんので。

1発クリップをかけましたが、まだ全然止まりません。

でもこの1発目がものすごく大事なんですね。

これをメルクマールにして次のクリップをかけていきます。

結局3発のクリップでしっかりと止血することができました。

あれほど派手な出血であっても、ほとんどの場合は内視鏡でしっかりと止血することができます。

 

次の症例を見ていきましょう。

これは実際直腸潰瘍と言っていいのかなんとも言えません。

なんとなく傷のようにも見えます。

実際この方は便秘がちではあったのですが、普通に歩ける元気な方だったんですね。

このようにクリップを2発かけても出血が止まらなかったので、さらにクリップを追加しました。

結局5発かけて止血することができました。

 

最後に止血剤の粉をまいて終了としました。

それでは4例目を見ていきましょう。

これぞ急性出血性直腸潰瘍の典型例です。

肛門からものすごく近い距離に大きな潰瘍ができています。

そしてこの方は特に便秘がちではありませんでしたが、やはり寝たきりでした。

念のために血管かどうか怪しい場所にクリップを打ち込みましたが、出血はしませんでした。

最後の症例です。

どうですか?

この方には明らかな露出血管がなかったので止血術を行いませんでした。

これも典型的な急性出血性直腸潰瘍の所見です。

肛門と接するように大きな潰瘍ができていますね?

 

実際内視鏡で見てみて露出血管がないと判断した症例でも、後日再出血することがあります。その際には大きな露出血管があることもあります。

露出血管の見逃しには要注意ですが、視野が悪かったりだとかいろんな理由で見えないことはあるので、再出血した時に迅速な対応を取るのが一番良いかなと思います。

直腸潰瘍のまとめ

いかがでしたか?

実際に内視鏡写真をみると臨場感が伝わるのではないかと思います。

最近は、患者さんも高齢化していて少し直腸潰瘍も増えてきたかな、という印象です。

 

直腸潰瘍自体は比較的予後の良い良性の病気ですが、直腸潰瘍ができてしまう方はすでにかなりハイリスクである、という認識が大事です。

もともとのご病気をしっかりとコントロールすることが重要ということですね。

 

今日もお疲れ様でした。

 

電子書籍を書いています。

有料ですが、よろしければぜひご覧ください。

 

 

ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医