お腹の病気

大腸癌ステージ4に行う抗がん剤治療をわかりやすく解説してみる!5

大腸癌ステージ4に行う抗がん剤治療をわかりやすく解説してみる!5

みなさんこんにちは。

べんぴ先生です。

今日も大腸癌の抗がん剤治療について解説していきたいと思います。

 

今日は分子標的薬の中でも抗EGFR抗体薬であるセツキシマブとパニツムマブについて解説してきたいと思います。

お付き合いください。

今までのブログを読んでおられない方はこちらを先に読んでくださいね。

セツキシマブとパニツムマブの特徴と使い方

この2つの薬は抗EGFR抗体薬(上皮成長因子受容体抗体)というグループに属します。

この名前を覚える必要はないのですが、セツキシマブとパニツムマブは同じグループであることは覚えておいてください。

セツキシマブとパニツムマブは同じグループやで

この2つの薬剤を使用するときには大前提がありましたよね?

その前提とは

RAS遺伝子変異があると使えない

というものです。

セツキシマブとパニツムマブはRAS遺伝子に変異があると使えないんやで

RAS遺伝子に変異があると効果が弱くなってしまうんですね。

もちろんこの2剤にもしっかりと副作用があるので、効果が弱いと事前にわかってるのであれば使わないべきでしょう。

なので、ファーストライン治療を始める前にRAS遺伝子に変異があるかどうかはわかっておく必要があるのですね。

抗EGFR抗体を使う上でもう一つポイントがありましたよね?

それは

左側の大腸では効果が高いけれども、右側では低い

ということです。

はじめのアルゴリズムを見れば、これらの特徴がしっかりと取り入れられていることがわかります。

RAS,BRAF遺伝子に変異がなくて、大腸の左側に腫瘍があるのであれば、FOLFOX/FOLFIRI+Cet/Paniが勧められています。

このCetがセツキシマブでPaniがパニツムマブでしたね?

抗EGFR抗体薬は大腸癌が左側にある時に最大効果を発揮するんやで

まだ覚えておくべきポイントがあります。

それは抗EGFR抗体は腫瘍縮小効果が高いということです。

つまり腫瘍を小さくする効果が高いということですね。

セツキシマブもパニツムマブも腫瘍を小さくする効果が高い

なので本気でコンバージョンセラピーを狙う時は使っても良いと思います。

コンバージョンセラピーは覚えていますね?はじめは切除不能だったけれども抗がん剤治療を行っていくうちに、腫瘍が縮小して手術可能になるということでした。

コンバージョンセラピーを狙う時のレジメンは決まっているわけではないのですが、RAS遺伝子変異がないのであれば

FOLFOX+Cet/Pani

は選択肢に入ってくると思います。

 

最後のポイントとしては

一度抗EGFR抗体薬を使ってPDになったら、次のラインからは使えない

という問題があります。

 

当然といえば当然なのですが、ベバシズマブはファーストラインでPDになってもほとんどの場合セカンドラインでも使えるのでしたね。(BBPのことです)

 

セツキシマブとパニツムマブの副作用

毎回お伝えしていますが、抗がん剤や分子標的薬について考える時は副作用について考えることが重要なんですね。

抗がん剤や分子標的薬の長所は腫瘍を縮小し、寿命を伸ばすということです。

セツキシマブとパニツムマブは腫瘍を縮小するという点においては、かなり良い長所を持っているというわけです。

逆に短所、つまり副作用について考えていきましょう。

この2つの薬剤は抗EGFR抗体薬に分類されていることからわかるように、とても似通った副作用があります。

一番辛いのは皮膚障害です。

べんぴ先生

抗EGFR抗体薬の副作用といえば皮膚障害。これだけ覚えて欲しいんや。

ガンコちゃん

そんなに大事なんですね。

抗EGFR抗体薬を使うと、なんと90%以上の人に皮膚障害が出ると言われています。

抗EGFR抗体を使うと90%以上の人に皮膚障害が出るんやで

しかも皮膚障害は手足以外にも出現します。

手足には痒みが出たり、爪の周囲に炎症が起きたり、乾燥したり。それだけでも厄介なのですがさらに顔にも皮膚障害が起こるんです。

それは痤瘡様皮疹と呼ばれるもので、顔にできることが多いんです。

 

なので、女性には使いづらいのです。

 

ガンコちゃん

脱毛とか皮膚障害とか、本当に女性の敵ですね。

べんぴ先生

そうやな。そこまでして抗がん剤治療をやりたくないとおっしゃる女性の方もいらっしゃる。その気持ちはよくわかるよ。

 

ただ、抗EGFR抗体薬では

皮疹がひどいほど、腫瘍に対する効果が高い

ということが知られています。

 

もちろん皮膚障害が出ることははじめっから想定済みなので、予防策をとります。

あらかじめ保湿に努めたり、ミノサイクリンと呼ばれる抗生剤(抗菌薬)を内服していただいたり、ステロイドの塗り薬を塗っていただきます。

そうすることで多少皮膚障害が軽減できることがわかっているんですね。

 

 

他の共通する副作用としては電解質異常があります。

電解質というのはナトリウムとかカリウムとかカルシウムと呼ばれるものですね。

簡単にいえば体のバランスが崩れてしまう、ということです。

抗EGFR抗体薬の場合はマグネシウムの値が下がってしまうことが多いと言われています。

低マグネシウム血症になってしまうと、カリウムやカルシウムも下がってしまうことがあるので注意が必要です。もしも血液検査でマグネシウムが下がっていたら、定期的に補充する必要があります。

 

セツキシマブとパニツムマブをどのように使い分けるか?

前回もお伝えしましたが、僕はパニツムマブを使うことの方が多いですかね。

その理由は以下の通りです。

パニツムマブを使う理由

・インフュージョンリアクションが少ない

・2週間に1回だから(セツキシマブは毎週)

セツキシマブは注射したときにインフュージョンリアクションと呼ばれる危険な反応が起きてしまう可能性があるんです。その理由は完全に人から作られた抗体ではなくて、マウス抗体も一部使用しているからなんですね。

逆にパニツムマブは完全に人から作られた抗体ですので、そのような「危険な反応」が起きにくいわけです。

 

セツキシマブに比べたら圧倒的に低いですね。

 

インフュージョンリアクションというのはアレルギー反応とは少し違うのですが、アナフィラキシーショックに似たような反応を起こすものです。

アナフィラキシーはハチに刺された時に息苦しくなったり血圧が下がったりするやつですね。

あんな感じになって、最悪致死的になることもあります。

怖い反応です。

 

 

あとは現時点ではセツキシマブという薬は毎週点滴注射を行わなければいけないんですよ。

 

例えばFOLFIRI+Cetというレジメンについて考えてみます。

FOLFIRIだけであれば2週間に1回投薬するだけでOKなのですが(ご自身で針を抜けないなら3日目に病院に来ていただかなくてはなりませんが)、セツキシマブは毎週打たないといけないので、必然的に1週間に1度は病院にくる必要があるんですね。

逆にパニツムマブは2週間に1度なので、普通にFOLFIRIをやっているのと負担はほぼ変わらないわけです。

 

セツキシマブとパニツムマブの効果はほぼ同等なので、あとは医者が使い慣れた薬であるかどうかや、患者さんとの話し合いで決まります。

 

ただ、パニツムマブにも欠点があります。

それは

皮膚障害がセツキシマブよりも重症化することが多い

ということです。

 

もちろんセツキシマブも皮膚障害が重症化することはあるのですが、さらに多いということですね。

 

このあたりを考えてどちらを使うかを考えなくてはいけませんが、抗EGFR抗体を使うということは皮膚障害から完全に逃れることはできないと考えるのが妥当ですので、利便性の点からもやっぱりパニツムマブを選んでしまいますね。

あと、皮膚障害が出なかったらそれはそれで少し不安になりますよ。

「あれ?腫瘍にも効いていないのかな?」と。

脱毛や皮膚障害について考える

男性でも当然脱毛や皮膚障害などが嫌なのは当然なのですが、女性の場合は本当に精神的ダメージが大きいです。

はじめは覚悟しているつもりでも、いざバッサバッサと髪の毛が抜けると本当に死にたくなるくらい辛いとおっしゃる女性の患者さんを何人も経験しました。

皮膚障害についても同じです。

自分の見た目(特に顔)、つまり皮膚が悪化していくのに女性は耐えられないことが多いんですね。

この辛さは理解しているつもりですが、やはり男の僕には完全に理解することは困難でしょう。

どんな抗がん剤でも脱毛や皮膚障害というのは起きるリスクはあるのですが、そうは言っても抗EGFR抗体の皮膚障害やイリノテカンの脱毛というのはかなりの頻度で起こります。

なので、女性の場合は、あらかじめ特にしっかりと話し合うようにしています。

 

「皮膚障害や脱毛がどうしても嫌だから、抗EGFR抗体薬やイリノテカンは使いたくない」

これも立派な選択肢です。

残された選択肢の中でやれる範囲で抗がん剤治療をやっていけば良いと思います。

 

「皮膚障害や脱毛がひどくなるくらいなら死んだほうがまし」

こんなふうにおっしゃった患者さんもいらっしゃいました。

 

死ぬより辛いのであれば、当然そんな治療はやらないほうがいいですよね?

 

何を一番大事にするかは人それぞれで良いと思います。

 

自分の中で優先順位を決めること。

これが癌治療に限らず病気の治療に当たる際にもっとも重要なことだと思います。

 

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ABOUT ME
大北 宗由
大北 宗由
現役の消化器内科医師です。現在愛知国際病院で勤務しております。 便秘・下痢に関する正しい知識を広めるために日々ブログを書いています。 日本消化器病学会専門医・日本総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医