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慢性下痢の原因はアルコールだった!?
こんにちは、べんぴ先生です。
今日はアルコールと下痢の関係について取り上げてみたいと思います。
お付き合いくださいね。
そもそも慢性下痢って何?
4週間以上下痢が続くと慢性下痢と呼ばれるのですね。
逆に4週間以内の下痢は急性下痢と呼ばれます。
慢性下痢の原因は本当に多岐に渡るので、専門医でも原因を突き止めることは難しいのです。
慢性下痢の原因については以下の記事にまとめていますので参考にしてくださいね。
慢性下痢の原因の一つにアルコールがあるのです。
アルコールを飲み続けるとどうなる??
僕ら消化器内科の医者はアルコールをよく飲む患者さんと深く関わることが多いのですね。
それはなぜかと言うとアルコールを多飲し続けると膵臓と肝臓がやられるからです。
アルコールを飲みすぎると膵臓と肝臓がやられるで。
アルコールを飲み続けると膵臓が徐々にダメージを受けて慢性膵炎という病気になります。
慢性膵炎と下痢は密接に関係しているので、慢性下痢の原因が慢性膵炎だったということはザラにあります。
また、アルコールを飲み続けることで肝臓もダメージを受けます。
ある一定の期間にものすごい量のアルコールを飲むと急性肝炎になり、場合によっては劇症肝炎という恐ろしい病気になります。劇症肝炎になってしまうと死亡することも多く、救命が難しい病気です。
そんな事態にならなくても、アルコールを飲み続けることで慢性肝炎になる可能性があります。
慢性肝炎で終われればいいのですが、さらに飲み続けると肝硬変という怖い病気に進展していきます。
肝硬変はお聞きになったことがあるのではないでしょうか?
肝硬変という病気は文字通り肝臓が硬く変わる病気です。
慢性肝炎であればその時点でアルコールをやめればまだなんとかなります。
しかし一度肝硬変になってしまうともう後戻りはできません。
肝硬変は肝臓が硬くなる病気やで。一度なったら後戻りはできへんのやで。
肝臓というのは本当に色々な働きをしてくれている、お腹の中で最も大きな臓器です。
その肝臓がうまく働かなくなるとどうなるか?
みなさん肝硬変の方が最後にどうなるかご存知ですか?
最後は黄色くなり、お腹がパンパンになり、血を吐いて、足もパンパンになって
亡くなります。
まず全身に黄疸が出ることで真っ黄色になります。
お腹は腹水の影響でパンパンになります。苦しいです。
食道や胃に静脈瘤という血管のコブができて破裂すると大量の吐血をします。
血管の中のたんぱく質が減り、足がパンパンにむくみます。

もちろん肝硬変の原因はアルコールだけでなく、以下のものが知られています。
B型肝炎
C型肝炎
自己免疫による肝炎
脂肪肝炎
などがあります。
ただ、この中で一番肝硬変になるのを防ぐことができるのはアルコール性です。
だってやめるだけでいいんですから。
それでもアルコールを飲み続けますか?
本当にアルコールは下痢を引き起こすの?
実際にアルコール性肝硬変の患者さんがなんらかの理由で入院されると、はじめは下痢気味なのですが、徐々に便秘になっていくことがほとんどです。
これは僕らの肌感覚なのですが、ほぼ間違いないですね。
患者さんは入院するとびっくりするんです。
「便秘なんか一度もなったことないのに」って。
久里浜医療センターの水上先生も同じことをおしゃっていました。
久里浜医療センターはアルコール依存症を治療する病院でもあるんですね。
それから、Guidelines for the investigation of chronic diarrhea in adults: British society of Gastroenterology, 3rd editionというイギリスの慢性下痢症ガイドラインにも、慢性下痢の原因としてアルコールが考えられると書いてあります。
やはりアルコールは慢性下痢症を引き起こすんですね。
アルコールはどんなメカニズムで下痢を引き起こすの?
①直接小腸の上皮細胞を障害する
②消化管通過時間を速くする
③二糖類分解酵素を減らす
④膵臓の機能を悪化させる
それでは一つずつ簡単に解説しますね。
直接小腸の上皮細胞を障害する
上皮細胞というのは小腸の粘膜の一番表面の細胞のことですね。
つまり食べ物と直接触れ合う細胞です。
この上皮細胞が傷つけられると、食べ物の消化や吸収がうまくいかなくなるので下痢になるのは当然ですね。
消化管通過時間を速くする
消化管通過時間が短くなるということは口から食べたものが普通よりも速い時間で肛門から出ていくということです。
食べ物と小腸の粘膜が触れ合っている時間が短くなるので吸収がうまくいかなくなるのは当然ですね。
食べ物を小腸で吸収する前に大腸の方に流れ込んでしまうイメージです。
二糖類分解酵素を減らす
糖分というのは単糖類(例えばグルコースとか)がたくさんつながってできたものなのですが、二糖類分解酵素が減ってしまうということは二糖類から単糖類に分解できないということです。
単糖類になって初めて小腸でしっかりと吸収されるので、二糖類が単糖類になれなくなるとそのまま大腸に流れていってしまうんですね。
二糖類というのは大きな物質なので、浸透圧という力で周りの水分を引きつけてしまうんです。
そうすると便の中の水分がどんどん増えていって、最終的には下痢になるというわけです。
この理論は一度聞いただけで理解するのは難しいのですが、オリゴ糖を食べると便秘が解消されるのと同じ理論なんですね。
詳しくは以下の記事でまとめていますので参考にしてくださいね。
④膵臓の機能を悪化させる
これは先ほどお伝えした通りです。慢性膵炎になってしまうんですね。
膵臓というのは実に様々な消化酵素を出して食べ物の消化を手伝っているんです。
慢性膵炎になると消化酵素がうまく出ないので食べ物がうまく消化できなくなる➡︎うまく吸収できなくなる
という理論で例えば脂肪の分解、吸収がほとんどできなくなってしまうんですね。
その結果、脂肪便という特徴的なくさーい便が出るようになるんです。
脂肪便はすごく臭い特徴な便やねんで。
慢性膵炎になってしまっていたら、もちろんちょっと入院したくらいでは治りませんし、元の元気な膵臓には戻れません。
消化酵素剤と呼ばれるお薬を飲んでもらうことになります。
消化酵素剤については以下の記事でまとめていますので、参考にしてくださいね。
慢性膵炎も怖い病気やで。強烈なお腹や背中の痛みも出るときがあるんやで。
どうすればアルコールを止められる?
これは難しい問題ですよね。
依存症になっていなければ本人の意志でやめることが可能です。
ただ、それには家族の協力も必要です。
断酒の意志があっても、例えばご家族がお酒を飲んでいたら欲しくなってしまいますよね?
これは残酷ですが、本当にこういうことをしてしまう方がいらっしゃるんですよ。
愛がないというか、少し寂しい気持ちになりますね。
まあ、もちろん家族内のことなんで色々あるんでしょうけども。
あと冷蔵庫など、家の中にお酒があると断酒はまず成功しませんね。
本当に断酒したければすべてのお酒を捨てるか売るかあげるかして、一滴も飲まないという覚悟が必要なんですね。
本当に断酒したいなら、家には一滴の酒も残したらあかん。
次に依存症についてですが、
依存症かどうかを判断する良い指標があります。CAGEスコアというものです。
この中で2項目を満たす人にはなんらかの支援が必要と言われています。
依存症になってしまっていれば専門病院に受診し、場合によっては入院した方が良いですね。
依存症は病気なんです。
自分の家で生活しながらアルコール依存を治すということはなかなか難しいのです。
少し難しい話を最後にしますね。
CAGEスコアは感度が50%くらいで特異度が99%くらいと言われています。
これはどういう意味かというと
項目を満たせばまず間違いなく依存症ですが、満たさなかったからと言って依存症ではないと言い切れない
ということです。
つまりCAGEスコアを満たせば速攻病院へGO
満たさなくても安心するな
ということなんですね。
CAGEスコアで満たさなくても安心したらあかんで。満たしたら病院へ必ずいくんやで。
・断酒するには断固たる決意が必要。
・家族みんなの協力が必要。
・家の中にお酒が一滴もない状態にするべし。
・CAGEスコアで依存症が疑われたら病院を受診するべし。
・CAGEスコアで当てはまらなくても安心してはいけない。
まとめ
以上、駆け足でアルコールと下痢症の関係について説明しました。
アルコールが下痢を引き起こしてしまうメカニズムについては、細かいところまで覚える必要はありません。
ふーん、そんなものか。程度に理解していただけるとOKです。
アルコールは飲みすぎると身を滅ぼすので心当たりのある方は気をつけてくださいね。
今日は以上です。
お疲れ様でした。