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過敏性腸症候群はただの精神的な問題なのか?
みなさんこんにちは。べんぴ先生です。
今回から過敏性腸症候群について解説していきたいと思います。
ぜひお付き合いください。
過敏性腸症候群ってどんな病気?
・検査をしても目に見える異常が出てこない
・腹痛を伴う排便異常がある
・慢性的に症状がある
検査というのは主に内視鏡検査です。
胃カメラや大腸カメラ検査をしても目に見える異常はないですよ、ということですね。
目に見える異常というのは例えばIBD(炎症性腸疾患)という病気などが考えられます。
IBDについてはすでに前回説明済みですね?
ご存知ない方は以下の記事を参考にしてくださいね。
要するに、検査をしてIBDとかいろんな病気を除外してから診断する病気ですよ、ということです。
これを除外診断と言います。
過敏性腸症候群は除外診断やねんで。
過敏性腸症候群は英語でirritable bowel syndrome(IBS)
と言います。
僕ら医療者はIBSと呼びますので、ここからはIBSと言わせてください。
原因はなんかようわからんけど目に見える異常はなくて、排便に関連した腹痛が慢性的に起こる病気がIBSやで。
IBSってただのメンタルの病気?
これはよく言われることですね。
「IBSってメンタルが弱い人がなるんでしょ?」
「気持ちの持ちようやろ?」
「どうせ検査しても病気なんて見つからんやろ?」
みたいなね。
確かにIBSとメンタル疾患が関連していることは知られています。
むしろ密接に関わっていると言ってよいでしょう。
IBSとメンタル疾患は密接に関わっているんやで。
例えばうつ病や不安障害がIBSに合併することが多いと言われています。
これらの病気とIBSはなんらかの関係があるのは間違いないと思いますが、IBSは単なるメンタル疾患と言ってよいのでしょうか?
ここからが今日の本題です。
近年の研究結果から、
IBSと腸内細菌の関連が強いのではないか
と言われています。
SIBO(シーボ)という病態を覚えていますか?
小腸の中の腸内細菌が異常に繁殖してしまい、そのせいでいろんな症状が出現してしまうという病態です。
このSIBOとIBSがかなりの部分でオーバーラップしているのではないか?
と最近では言われているのでした。
SIBOについては以下の記事でまとめていますので、参考にしてくださいね。
IBSの患者さんに抗生物質を投与すると症状が改善したりだとか
プロバイオティクスが効果を発揮するIBSの患者さんがいらっしゃったりだとか
糞便移植が効果を発揮したりする患者さんがいらっしゃったりすることからも、
腸内細菌とIBSはなんらかの関係があると考えるのが妥当であると思います。
ちなみに糞便移植とは他人の便を自分の腸の中に流し込むという荒治療ではありますが、特に偽膜性腸炎という病気に関してはしっかりとしたエビデンス(科学的根拠)があり、主に欧米で治療が行われています。
そして糞便移植はIBSに対しては今のところ効果はビミョーです。(2019年3月時点では)
「IBSは腸内細菌と関係がある」と考えるのが今のところ妥当やろね。
そして、IBSと腸内細菌は間違いなく関係あるんじゃないかと考えさせてくれる概念について説明します。
それは
PI-IBSという概念です。
PI-IBSって何?
PI-IBS=post infectious IBS
日本語では
感染性腸炎後IBSです。
つまり、胃腸炎(ウイルスでも細菌でも)になった後にIBSになってしまうということです。
例えばノロウイルスによる胃腸炎になったとします。
その時は数日で症状はある程度落ち着くでしょう。
ただ、その後もなんとなくお腹の調子が悪いということはよく経験します。
その後徐々に症状が落ち着いてこれば良いのですが、そのような良い経過を辿らない人がいるんですね。
ちなみに感染性腸炎によってIBS発症のリスクは約6-7倍に増加すると言われています。
今までに特にお腹の症状がなかった人が、感染性腸炎になったのを契機にIBSになる。
これは単なる偶然とは思えません。
普通に考えたら
感染性腸炎で腸内細菌のバランスが崩れてしまい、その結果IBSになると考えるのが妥当じゃないですか?
最近の研究では例えば10人が感染性腸炎になったとしたら、そのうち1人はPI-IBSになるのではないかと言われています。
IBSはやっぱり腸内細菌と関わりがあるんやで。
PI-IBSってどんな人がなりやすいの?
・女性
・若い
・精神的苦痛が腸炎前(もしくは中)にあった
・重症の腸炎
悩みが多そうな若い女の子
このタイプが最もPI-IBSになりやすいということです。
悩み多き若い女の子がもっとも感染性腸炎後IBSになりやすいんやで。
ちなみにPI-IBSの原因は、腸内細菌や腸の上皮細胞(表面の細胞です)、セロトニンや免疫系が関わっていると予想されていますが、厳密にはわかっていないようです。
PI-IBSでは治療方法が変わる?
IBSの中にはある一定の割合でPI-IBSの人がいらっしゃることはわかりました。
それではPI-IBSと普通のIBSでは治療方法が変わるのでしょうか?
結論から言いましょう。
治療法を変える必要はありません。
つまり通常通りIBSの治療をすれば良いという話です。
ただ、これはあくまでも2019年4月現在の話です。
今後はPI-IBSとIBSで治療法が変わるかもしれません。
現状はPI-IBSだからと言って特殊な薬剤ストラテジー(戦略)があるわけではないということです。
現状ではPI-IBSでも普通のIBSでも治療法は同じなんやで。将来は誰にもわからへん。
結論
何が言いたかったかと言いますと
IBSという病気は単なるメンタルの病気ではないということです。
目に見える異常がないIBSという病気はなかなか周囲から理解されないことが多いんですね。
それで仮病なんじゃないかとか、職場の人にも疑われたりするわけです。
そのような人を何人も見てきました。
辛いですよね。
実際医者の間でもIBSはメンタルの病気と思っている人はたくさんいるはずです。
悲しいことに。
ただ、そんな簡単なものではないのです。
メンタルの問題が関わっているだけでなく、腸内細菌が密接に関わっていたり、他にも色んな因子が複雑に絡み合った病気の可能性が高いんです。
IBSについての研究がどんどん進み、そのような誤解が解かれることを願います。
今日は以上です。
お疲れ様でした。