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胆石や大腸の手術後に下痢になる!?
みなさんこんにちは。べんぴ先生です。
今日はお腹の手術と下痢の関係について解説していきたいと思います。
ぜひお付き合いくださいね。
お腹の手術と下痢って関係があるん?たまたまなん?
ガンコちゃんの意見は実際一理あります。
これを言ったらおしまいよ、という感じなのですが、お腹を開いて手術しているわけなので、術後に便秘や下痢になっても全く不思議ではないんです。
もう少し医学的にお話をすると、実は最近の研究では今まで思っていたよりもお腹の臓器はお互いに影響を及ぼしあっているんですね。
例えば自律神経というものがあります。
自律神経を介して脳や脊髄とお腹の臓器というのは密接に連絡を取り合い、お腹の中をうまくコントロールしているようです。
なので例えば胃を切除したり胆嚢を切除したり、大腸を切除したりとどこか一つの臓器を取り除いただけでも体にはなんらかの影響が出る可能性があるということなんですね。
例えば胆のうという臓器。

肝臓に隠れるようにして存在する袋状の臓器なのですが、胆石発作などで胆のうを切除することが多いんですね。
胆のうを切除しても特に問題はないと以前からよく言われていましたが、実は胆のうを切除した後には下痢が続くことが多いんです。
これについてはまた後で解説しますが、特に問題なさそうな胆のうでさえ、切除することで何らかの症状が出るということです。
なので、「お腹の中に必要のない臓器なんてない」と言ってしまっても良いと僕は思います。
いや、「人間の体で必要のないものなんてない」
これで行きましょう!!
人間の体で必要のないものなんてないんやで。

この大腸の一番端っこについている「しっぽ」のようなものが虫垂です。
ここに炎症が起こるといわゆる「モウチョウ」という病気になるのです。
医学的には虫垂に炎症が起こるということで、「虫垂炎」と呼ぶんですね。
ちなみにモウチョウはここです。

虫垂の付け根が盲腸です。
よく虫垂を切除しても問題ないと言われます。
確かに虫垂だけを切除しても、はっきりとした症状を感じることはほとんどないかな、と思います。
実は虫垂を切除している人は潰瘍性胃腸炎という病気に優位になりにくいことが知られています。
潰瘍性大腸炎は以前にも説明しましたが、自分自身の何かの物質に異常に自分の本来持っている免疫が反応してしまう病気です。
免疫が強すぎるがゆえに自分自身を攻撃してしまうんですね。
治療としては免疫を抑える治療を行います。
潰瘍性大腸炎についてご存知ない方は以下の記事を参考にしてくださいね。
このことからも、虫垂が腸の免疫に対してなんらかの効果を発揮していることがわかります。
やっぱり簡単に切除してしまっても良い臓器というのは体の中には存在しないんですね。
お互いに良い具合に働きあっているということが言いたいわけです。
しっぽみたいな虫垂でさえ自分の役割があるんやで。
もちろん手術をするなという結論にはなりませんよ。
胃癌があったら胃を切除しない限りは現在の医療では治りませんからね。
必要な時はしっかりと治療すべきです。
どんな手術をしたら下痢になりやすいの?
本題に入る前に、下痢が続いて困っているという方は以下の記事も参考にしてくださいね。
下痢が起こる色々な原因については網羅的に書いてあります。
おそらく参考になると思います。
それでは、下痢を引き起こしうるお腹の手術について箇条書きにしてみたいと思います。
・胆のう摘出
・膵臓切除
・胃の切除
・回腸末端の切除
・小腸の大量切除
・直腸や肛門の手術
・ブラインドループ症候群(バイパス手術など)
胆のう摘出
先ほどもお話した胆のうですね。

胆石発作などで痛みが出て、再発予防で手術することが多いですかね。
ほとんどが腹腔鏡手術になるかと思います。
比較的必要なさそうな臓器ですが、全然そんなことはありません。
実は胆のうを切除した後に下痢が続くということは、日常的に経験します。
これはどんなカラクリかと言いますと、胆汁酸が深く関わっています。
胆のうを摘出した後の下痢はほとんどの場合、胆汁酸性下痢です。
本来胆汁酸というものは、胆のうに蓄えられるんですね。
そして食事が十二指腸を通るたびに、胆のうがキュッと収縮してぴゅっと胆汁酸が十二指腸に分泌されるんです。
そうすることで脂肪分の吸収がうまくいくように人間の体は作られているのですが、胆のうを切除してしまうとこの仕組みが崩壊するわけです。
まず胆汁酸をうまくためられなくなるんですね。
そうすることで常時胆汁酸がだらだらと小腸の中に分泌されるようになってしまうんです。
胆汁酸というのは大腸を刺激する作用があるんです。
胆汁酸があふれ返ると下痢になるのも当然というわけです。
胆汁酸性下痢については以下の記事でくわし〜く解説していますので、参考にしてくださいね。
ちなみに胆汁酸性下痢はコレバインと呼ばれる特効薬がありますので、お困りの方はぜひお試しください。
効果を発揮すれば、人生が変わる可能性がありますよ。
本当に。
それくらい効くときは効きます。
胆のう切除後の下痢にはコレバインやで。
膵臓切除
膵臓というのはホルモンや消化酵素などをとにかく分泌する臓器なんですね。

この消化酵素というのが、消化管にとってはとても大切なんですね。
食べ物を食べて体の中に栄養として取り込むためには、消化と吸収という2段階のステップを踏む必要があるんですね。
このうちの消化に関して膵臓は大きな役割を担っているわけなんです。
原因はなんであれ膵臓を切除すると、膵臓の分泌する消化酵素の量が減ってしまうんですね。
うまく食べ物を消化できないと当然吸収もできないので、消化しきれない食べ物が下痢になって出ていくわけです。
膵臓の病気と下痢の関係については以下の記事でまとめていますので、参考にしてくださいね。
胃の切除
次は胃の切除に関してですね。

胃をどのくらい切除するかにもよりますが、胃を切除すると実に様々な症状を引き起こすことが知られています。
それこそここで語りだすと皆さんが眠くなってしまうくらい色んなことが起きてしまいます。
胃という臓器は胃袋という呼ばれ方をしますが、ただの袋なんかではありません。
いろーんな機能を兼ね備えているんです。
例えば胃は胃酸を分泌します。
胃酸というからには当然酸性です。
しかもものすごく強い酸です。
これってとっても興味深いのですが、酸がものすごく強い環境って実は人体にとっては脅威でしかないんですね。
理科の実験とかで塩酸は危険だから、慎重に扱うようにと教えられなかったですか?
こんなに人体にとって危険な環境を敢えて作り出しているんですね。
周りの環境にうまく適応してきて生き延びてきた人類が、敢えてこんな環境を残したと考えるのが妥当なんですね。
この強い酸性の環境で口から取り込んだばい菌をやっつける働きがあるんです。
なので胃酸を無駄に抑える薬を症状もないのに飲み続けるのはリスクなんですね。
だってばい菌をやっつけられなくなるので。
話がそれてしまいました。
胃を切除したら下痢になるというのはよくあることですが、これにも色んな原因が絡み合っています。
胃を切除した後に下痢になる場合は、色んな原因が絡み合っていることが多いんやで。
その一つの原因に胆汁酸があると言われています。
胃を切除すると胆のうとうまく連動できなくなるんですね。
さらに言うと、胆のうも胃の手術の時に取ってしまうこともあります。
通常は食べ物が胃を通り越して十二指腸に入った時に胆のうがキュッと収縮して、ぴゅっと胆汁が出るのですが、それが連動できなくなるというわけです。
胆汁酸が変なタイミングでドバッと出れば胆汁酸性下痢になりますし、脂肪分の多い食事を取れば脂肪便になるというわけです。
この辺りは理解できないかもしれませんが、「そんなものかあ」と考えてください。
特に理解していただきたいのは、胃はものすごく大事ということです。
胃はものすごく大事なんやで。
何が言いたいかというと
「定期的に胃カメラ検査を受けてください」「ピロリ菌の検査を受けて、必要があれば除菌してください」
ということです。
胃癌は早期に発見すればほとんどの場合治癒が望めます。
もちろん救えない命もありますが。
もし早期に発見できれば内視鏡による治療が可能なんですね。
つまりお腹を切らなくても治るということです。
たとえお腹を手術して胃癌が治ったとしても、その代償は計り知れないんですね。
みんなで検診を受けよう。
回腸末端の切除

この回腸末端、つまり小腸の最後の部分を原因はなんであれ切除してしまうと、思いっきり下痢になってしまいます。
なぜだかわかりますか?
下の絵をみてください。

先ほどから何度も出てきている胆汁酸。
胆汁酸は肝臓で作られて胆のうでためて、十二指腸に分泌されます。
出したら出しっぱなしではないところがポイントです。
体のどこかで再吸収して、また再利用されるという仕組みなんです。
胆汁酸を吸収するところが回腸末端なんですね。

この回腸末端で実に95%の胆汁酸が吸収されます。
残りの5%が水溶性食物繊維と一緒に大腸へ流れ込んで、下剤の役割を果たしてくれます。
この回腸末端が例えば虫垂炎(モウチョウのことでしたね)の手術で切除されていると、胆汁酸が大量に大腸に流れ込んで胆汁酸性下痢になるというわけです。
この場合もコレバイン一発で下痢は止まることがほとんどです。
なので、思い当たる節のある方はぜひかかりつけのお医者さんにご相談くださいね。
小腸の大量切除
小腸を大量に切除する場合は、胆汁酸が全く再吸収できなくなるので、体から枯渇してしまいます。
そうなると脂肪分の吸収が全然できなくなるので、脂肪性下痢になってしまうことがあるんですね。

小腸を大量に切除することは今の医療ではほとんどないと思いますので、そこまで不安になる必要はありません。
小腸を大量に切除するとほとんどの栄養を吸収できなくなるので、もはや下痢うんぬんの話ではなく、生きる死ぬの話になります。
直腸や肛門の手術

直腸や肛門は便の出口なんですね。
しかもただの出口じゃないんです。超ハイスペックの出口なんですね。
以前にもお伝えしましたが、肛門というのはガスや水や塊などをしっかり区別できる優れものなんですね。
肛門の手術や直腸の手術をしてしまうとうまく働かなくなってしまいます。
それによって便が下痢になったり、便を漏らしてしまうことが多くなってしまうというわけです。
これは僕の経験なのですが、例えば直腸癌の手術後に下痢になってしまった場合は、数年すると徐々に症状が良くなってくる印象です。
なので焦らずゆっくりと対応していくのが良いのではないかと思います。
焦らない、焦らない。
ブラインドループ症候群
これも消化管の手術のあとに起こる病気なのですが、要するに食べ物が通らない場所ができてしまうとダメやということです。
腸管のつなぎかたが大事なのですが、食べ物が通らない場所があるとその場所は流れが止まってしまいます。
水でもなんでもそうなのですが、流れが止まってしまうと淀んでしまいます。
するとどうなるか?
細菌が繁殖しだすのです。
うじゃうじゃ細菌がわきだすと、胆汁酸がこの腸内細菌によって脱抱合されてしまうのです。
脱抱合って何やねん?と思いましたよね。
もともと胆汁酸はグリシンやタウリンといった物質と手をつないで存在しているのですが、その手をほどかれてしまうことを脱抱合と言います。
つまり胆汁酸が自由になってしまうのです。
胆汁酸は自由になると腸管を刺激し始めます。
胆汁酸が自由に暴れすぎると下痢になるという話です。
あとは胆汁酸がグリシンやタウリンとつないでいる手をほどいてしまうことで脂肪酸の吸収も悪くなってしまいます。
その結果脂肪酸性下痢になってしまうので、ダブルパンチで下痢になってしまうのです。
むずかしむずかし。
blind loop 症候群がひどいと再手術して胃腸をつなぎ直すこともあるんやで。
今日のまとめ
いかがでしたか?
お腹の色んな臓器が消化や吸収に関わっているのがご理解頂けたかと思います。
今日もお疲れ様でした。