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胃薬を飲むと下痢になる?顕微鏡的腸炎について解説するで!
皆さんこんにちは、べんぴ先生です。
今日は顕微鏡的腸炎という病気について簡単に解説していきたいと思います。
ぜひお付き合いくださいね。
顕微鏡的腸炎?
顕微鏡的腸炎という病気をご存知ですか?
おそらく医者でもない限り、聞いたこともないという方がほとんどだと思います。
なぜ今回この病気を取り上げたかというと、この病気は知名度の割にとっても多い病気だからです。
こんなことを言うとどこかから怒られるかもしれませんが、ほとんどの場合見逃されています。
顕微鏡的腸炎はかなりの数が見逃されているで。
僕ら消化器内科医でも毎日のように出会う病気ではないのですが、いつも頭の片隅には置いてあります。
一番危惧されているのは、顕微鏡的腸炎をIBSと間違えられているんじゃないか?ということです。
良くわからない下痢のことをなんでもかんでもIBS(過敏性腸症候群)として片付けられていないか?ということが言いたいんですね。
IBSの10%はこの顕微鏡的腸炎ではないかという論文もあります。
日本では顕微鏡的腸炎の原因が「クスリ」であることが多いので、今日お伝えするようなクスリを飲んでいて、なおかつ下痢が治らないという方はこの病気の可能性がありますので、ぜひ病気に受診してください。
ちなみにこの病気は日本と欧米ではかなり違った雰囲気になっていて、そういう意味では少し特殊な病気なんです。
もちろんここは日本ですので、日本での「顕微鏡的腸炎」の事情について書いていきたいと思います。
顕微鏡的腸炎は日本と海外で少し事情が違うんやで。
顕微鏡的腸炎ってどんな病気?
まず顕微鏡的腸炎の名前の由来について簡単に説明します。
腸炎は腸炎なのですが、普通の腸炎であれば内視鏡(大腸カメラなど)で実際に見てみると赤くなっていたり、潰瘍ができていたりと何らかの所見があるのが普通なんですね。
つまりパッとみれば腸炎があるのがわかる、ということです。
でも顕微鏡的腸炎は違います。
大腸カメラで大腸を覗いて見ても全く炎症がない。
でも正常に見える粘膜から組織をつまんでとって、顕微鏡で見てみると炎症がある。
これが顕微鏡的腸炎の名前の由来です。
実際に目で見ても炎症がない、でも顕微鏡でみると炎症がある。これが顕微鏡的腸炎の名前の由来やで。
でも症例がたくさん集まってきた時に、これはおかしいんじゃないか、ってなったんですね。
つまり内視鏡で見ても異常がわかるものが多いというわけなんです。
実際には一本線みたいな長くて細い潰瘍ができたり、ぽこぽことつツブツブができていたりと色んな所見があることがわかってきたんです。
もちろん所見が全くないものもあるようなのですが、この事実から考えると、
顕微鏡的腸炎という名前を変更した方が良さそうです。
顕微鏡的腸炎とは言うものの、実際にはしっかり内視鏡で見てみると異常があることがほとんどやで。
この腸炎。
日本では胃薬が原因になっていることがほとんどです。
もちろん胃薬の他にも色んな薬がこの顕微鏡的腸炎の原因になりうるのですが、胃薬が一番大事と考えてください。
顕微鏡的腸炎の原因はほとんど胃薬なんやで!
つまり日本では
顕微鏡的腸炎=薬の副作用
と考えていただいてほぼ間違いありません。
厳密に言えば違いますが、もうこれでOKとします。
顕微鏡的腸炎=薬の副作用
気をつけるべき胃薬にはどんなのがあるの?
皆さんはPPI(プロトンポンプインヒビターの頭文字。略してピーピーアイ)と呼ばれる胃薬をご存知ですか?
まあ知らないと思います。
知っていたら医療者か、よほどの勉強家ですね。
このPPIという薬が問題なんです。
名前をあげると
ランソプラゾールやタケプロン(同じ薬で名前が違うだけです)
という薬になります。
もし今飲んでいらっしゃらない方も覚えておいた方が良いですよ。
将来年をとった時に一回は飲む可能性が非常に高いです。
有名どころでいうとピロリ菌の除菌薬に使われます。(今はあまり使われませんが)
潰瘍や逆流性食道炎に対しても使われます。
胃酸を強力にブロックして、胃の酸性度を下げるんですね。(中性に近づけるということです)
今やものすごい勢いで使われているこのPPIという薬。
僕はこれは大問題だと思っていますが、気づいていない人が多すぎるんですね。
こんなふうに副作用で腸炎だって起こしてしまいます。
ランソプラゾールやタケプロンという薬を飲んでいて、下痢がひどくて困っているという方は顕微鏡的腸炎になっている可能性がありますので、ぜひ主治医にご相談ください。
主治医が消化器内科の医者でなければ、この病気を知らないという可能性もあるので注意が必要なんですけどね。笑
医者でも知らん場合があるから注意が必要なんやで。
ランソプラゾールやタケプロンという薬の名前はぜひ記憶の片隅に置いていただきたいのですが、最近ではどうやらこの胃薬を1種類使っているだけでは腸炎は起きにくいのではないかと言われています。
つまり、この胃薬以外にも他の薬を飲んで、その相互作用によって腸炎になるのではないかということです。
どんな薬と一緒に飲むと腸炎になりやすいのか、リストにしてみます。
・カルシウム拮抗薬(血圧を下げる薬)
・リピトール(アトルバスタチン)
・NSAIDs(ロキソニンやボルタレンなど)
さあわからない単語がたくさん出てきたと思います。
カルシウム拮抗薬というのは血圧を下げる薬の種類のことです。
アムロジピンなんて薬が該当します。
リピトールは脂質を下げる薬ですね。
NSAIDsは「エヌセイズ」と呼んでください。
これはめちゃくちゃ重要な薬です。
ロキソニンとかイブプロフェンとかボルタレンがこのエヌセイズに該当します。
全部聞いたことないですか?
薬局に売っている痛み止めですよ。
この3つの薬は誰もが使う可能性が高い薬です。
全く特殊な薬ではないんですね。
つまり、色んな人に顕微鏡的腸炎は起こり得るんですよ。
今見つかっている顕微鏡的腸炎の数なんかは氷山の一角の可能性が高いんですね。
今見つかっている顕微鏡的腸炎の数なんてのは氷山の一角やで。
これらの薬と一緒にPPIという胃薬を飲むと、顕微鏡的腸炎のリスクが格段に上がるというわけです。
これらの薬を一緒に飲むことはザラにあります。
例えば
腰痛がひどいとします。
痛み止めで何を飲むか?
ほとんどの場合はこのNSAIDsを処方されます。
ロキソニンとかね。
このロキソニンなどのNSAIDsには胃潰瘍や十二指腸潰瘍という有名な副作用があるんです。
そうすると潰瘍予防に胃薬を一緒に処方されることになるでしょう。
その際に一緒にこのPPIと呼ばれる胃薬を処方されることが多いんですね。(ちなみによくムコスタという胃薬を一緒に処方される先生がいますが、これには潰瘍予防効果はありません。うんちくですが)
ほら。一緒に使っていますよね?
PPIとNSAIDs。
顕微鏡的腸炎のリスクの出来上がりです。
もっともっとありますよ。
数え上げればキリがないくらいです。
・PPIを飲んでいる人は顕微鏡的腸炎に注意やで。
・ただ、PPIを一種類だけ飲んでいる人は実はリスクは低いんやで。
・PPI+αで、痛み止めや血圧・脂質を下げる薬を飲んでいる人は注意やで。
まあそもそも胃酸というのは人体にとって超がつくくらい重要な役目をしているわけなんです。
それを超強力に長期間押さえ込んで、副作用が出ないわけがないんです。
これについては以前どこかでお話しました通りです。
他に顕微鏡的腸炎を起こす薬はどんなのがある?
ここからは聞き流していただいて結構です。
重要なことは言い終わりました。
一応リストだけ作っておきますので、今飲まれている薬が該当していないかどうかだけ確認してくださいね。
・PPI(ランソプラゾールやタケプロン、ネキシウムなど)
・Nsaids(ロキソニン、イブプロフェン、ボルタレンなど)
・アスピリン
・SSRI(セルトラリン・ジェイゾロフトなど)
・チクロピジン
・アカルボース
・ラニチジン・ザンタック(胃薬)
・ビスホスホネート(骨粗鬆症の薬)
問題は、これらの薬がよく使われる薬ということなんです。
稀にしか使わない免疫の薬とか抗がん剤ならまだ良いのですが、普通に開業医の先生も処方される、ごくごくありふれた薬ばっかりなんですね。
なので顕微鏡的腸炎は氷山の一角の可能性が高いんです。
怖い怖い。
顕微鏡的腸炎の原因になる薬は、めっちゃありふれた薬ばっかりなんやで。
顕微鏡的腸炎の治療はどうしたらいいの?
簡単ですね。
薬をやめればほとんどの場合腸炎は治ります。
薬をやめたらほとんど治るんやで。
つまり原因となる薬に気付けるかどうかです。
これに関しては知識の差が完全に勝負をわけます。
僕は経験したことはありませんが、薬をやめても腸炎が治らない場合があります。
当然ですが、まずは診断が間違っている可能性があります。
もう一度かかりつけ医と一緒に考えましょう。
ちなみにですが、PPIの場合は薬を始めてから数ヶ月で発症して、薬をやめると数週間以内に下痢が治ることが多いです。
逆にNSAIDsの場合は飲み始めてから数年経って発症し、治るのも遅い傾向にあります。
なのでNSAIDsの方が診断が難しいんですね。
PPI を飲み始めてから数ヶ月で発症して、やめると数週間で症状が治ることがほとんどやで。
薬をやめただけでは症状が治らない、しかも診断はおそらく合っているとなると治療をしなければなりません。
実は薬をやめても治らない顕微鏡的腸炎に対する治療は決まったものがないんですね。
これは今みんなで考えている最中です。
ただ、文献を読むとブデソニドと呼ばれる薬を内服することが最近多いようですね。
これはステロイドの一種で、クローン病という病気に使われる薬です。
なので少なくと日本では顕微鏡的腸炎に対しては使えないんですね。
顕微鏡的腸炎が続いたら大腸癌になる!?
癌は炎症と年月の総和なんですね。
炎症がひどくて長い年月続けば癌ができるリスクが高くなるというのが常識です。
でが顕微鏡的腸炎が続けば大腸癌になりやすくなるのでしょうか?
これについては気になったので文献を読んでみました。
最近発表された論文をみると大腸癌との関係はなさそうです。
つまり顕微鏡的腸炎になっても大腸癌のリスクが高くなるというわけではないとういことです。
安心安心。
顕微鏡的腸炎になっても大腸癌になりやすくなるわけじゃないで。安心して。
まとめ
今日は顕微鏡的腸炎いついて簡単に勉強しました。
言い忘れていましたが、基本的には60代くらいの女性に多い病気です。(20代でもなる人はなります。)
下痢がほとんどなのですが、たまに急にお腹に激痛が走って来院されたり、体重が減って栄養状態が悪くなる方もいらっしゃるので注意が必要なんですね。
必要のない薬は飲まない方が良いですよ。
たくさん薬を飲まれている方はそれだけ副作用のリスクが上がるので、ぜひかかりつけ医と薬が減らせないかどうか話し合ってくださいね。
今日は以上です。
お疲れ様でした。