食べ物のアレルギーが下痢の原因になる?
みなさんこんにちは。
べんぴ先生です。
今日は食べ物のアレルギーが下痢症の原因になるのか?
ということについて解説していきたいと思います。
ぜひお付き合いくださいね。
食べ物のアレルギーって?
ガンコちゃんが言っているアレルギーは即時型アレルギーと呼ばれるものです。
即時型アレルギーは食べてすぐ、もしくは1時間くらいで蕁麻疹がばっと出てきて、呼吸が苦しくなってゼイゼイして、下痢や吐き気が出てくるものです。
このような症状が出たらアナフィラキシーなんて言われたりします。
血圧が下がってショックにあればアナフィラキシーショックです。
今日の話は即時型アレルギーとは違います。
もっともっとゆっくりとしたアレルギーです。
本人すら原因として気がつかないくらいの。
食べ物に対するアレルギーが稀に慢性下痢を引き起こすことがあるんですね。
それが好酸球性胃腸炎(こうさんきゅうせいいちょうえん)という病気です。
食べ物に対するアレルギーが原因となる慢性下痢症、それが好酸球性胃腸炎やで。
(厳密には食べ物だけではありません。食べ物などに対するアレルギーと言われています。)
今日はこの病気について簡単に解説していきたいと思います。
好酸球性胃腸炎ってどんな病気?
好酸球というのは白血球の一つで、アレルギー疾患で増えることが多いのです。
好酸球性胃腸炎では食べ物に対するアレルギー反応が原因と言われています。(真の意味ではわかっていないこともたくさんあるのですが、とりあえず食べ物に対するアレルギーが原因ではないかと言われています。)
食べ物に対してアレルギー反応が起こると、胃腸の粘膜(もしくは胃腸の筋肉)にこの好酸球と呼ばれるものがたくさん増えます。
好酸球が粘膜や腹水の中にたくさん存在していたら好酸球性胃腸炎の可能性が高まります。
一応どうやって好酸球性胃腸炎と診断するかまとめておきます。
・腹痛や下痢、嘔吐などの症状がある
・胃腸の粘膜もしくは腹水にたくさん好酸球がある。しかも好酸球がメインである。
・他の病気が除外できる
これを満たせばとりあえず好酸球性胃腸炎と呼びましょう、ということです。
他の病気を除外する必要があるのですが、これが難しいんですね。
思い出してください。
IBS(過敏性腸症候群)という病気を。
IBSという病気は慢性的なお腹の痛みがあって、なおかつその痛みが排便に関連したものという定義がありました。
しかしIBSの診断は「他の疾患を全て除外した上で」という条件付きで行われます。
この「他の疾患を除外する」ということはかなり難しいです。
この苦労はあまりわかっていただけないかもしれませんが、僕らの頭の中ではごちゃごちゃ考えているわけなんですね。
そしてIBSと診断した後も、実は違う病気が隠れているんじゃないかと疑いながら診療しているわけです。
IBSについては以前の記事でまとめていますので、こちらも参考にしてくださいね。
好酸球性胃腸炎もこれと少し似たところがあるんですね。
いろいろ病気が隠れている可能性があるということです。
なぜ誤診されやすいかというと、そもそも胃腸の粘膜には多少なりとも好酸球というものが正常でも存在しているんですね。
健康な人に胃カメラや大腸カメラを行って組織をつまんでとって顕微鏡でみたら、たまたま好酸球が多い場所だったという可能性があるということです。
例えば回腸末端や上行結腸という場所は正常であっても好酸球が多いと言われています。


なので別の病気があっても、ここから組織をとったら好酸球性胃腸炎と誤診されてしまう可能性があるんですね。
これが好酸球性胃腸炎の診断の難しいところです。
正常な胃腸の粘膜でも好酸球はある程度存在するんやで。
ちなみにどんな病気が好酸球性胃腸炎と誤診されやすいかというと
・アニサキス症
・IBD(炎症性腸疾患)
この2つが多いですかねえ。
他にもいろいろと悩む時はありますが、ケースバイケースですね。
アニサキスっていうのは寄生虫ですね。
イカとかサバの刺身ついている白い細長い寄生虫です。
アニサキスは胃の中で発見できれば胃カメラで除去できるのですが、小腸に行ってしまえば所在不明でお蔵入りしてしまうことがほとんどです。
アニサキスもアレルギーがかなり関わっていると言われているので、好酸球も増えて好酸球性胃腸炎と間違われてしまうことがあるのです。
もう一つはIBDですね。
IBSじゃないですよ。
IBDです。
IBDには大きく2つの病気があります。
潰瘍性大腸炎とクローン病という病気です。
このどちらも好酸球性胃腸炎と間違われてしまうことがあるんですね。
IBDについては以前の記事にまとめてあります。参考にしていただけると幸いです。
おそらくアニサキスとIBDがもっとも鑑別しなければならない病気だと思います。
アニサキスとIBDは気をつけないとあかんよ。治療法が変わってしまうしね。
好酸球性胃腸炎はこんな風に診断します。
胃カメラや大腸カメラの所見は大事じゃないの?

この写真を覚えていますか?
実はこれは大腸癌の写真なんですね。
インパクトがありますよね?
こんな風にガツン系の病気であれば苦労はないのですが、好酸球性胃腸炎には「これやっ!!」という内視鏡の所見がありません。
つまり胃カメラや大腸カメラで覗いてみても、「う〜ん、なんかちょっと赤くなったり荒れてるところがあるかなあ」っていうくらいの所見しかありません。
なのでまずは組織を実際にとって、顕微鏡で見てみることが大事なんですね。
内視鏡では診断できへんから、組織を実際につまんで取って顕微鏡で見ることが大事なんやで。
ちなみに普通の疾患では赤いところや荒れているところがあれば、そこから組織を取りますよね?
普通のことです。
でも好酸球性胃腸炎の場合は違います。
あんまり赤いとか荒れているとか関係ないんですね。
正常に見えているところから取っても、結果があまり変わらないんです。
そうは言ってももちろん赤いところや荒れているところからも組織は取りますが、いろんなところからちょこっとずつ組織を取ることが大事なんですね。
好酸球性胃腸炎の治療は?
最後に治療について簡単に解説します。
好酸球性胃腸炎の治療は・・・「これや!!」というものがありません。
稀な病気ですし、まだ治療は確立されていません。
ただ、慣習的にステロイドという薬を飲んでいただくことが多いですね。
アレルギーや免疫の病気にはとにかくステロイドは相性が良いことが多いです。
免疫を抑える薬なので。
好酸球性胃腸炎の患者さんにステロイドを飲んでいただくと、
1/3の人は治ります。どんどんステロイドを減らして行って、ゼロになっても再発は起こらないと言われています。
逆に2/3の人はステロイドに全然反応してくれなかったり、あるいは始めはしっかり効いてくれていたのに減らしていくと再発すると言われています。
じゃあステロイドがダメだったらどうしたらいいのか?
これについてもよくわかっていません。
慣習的に抗アレルギー薬を使ったり、他の免疫を抑える薬を使うようです。
正直なところ、ステロイドが効かないシチュエーションを僕は経験したことがないのでわかりません。
今までに消化器内科医をやっていて、一人だけです。
好酸球性胃腸炎の患者さんを自分で診断して治療したことがあるのは一人しかいません。
それくらい稀な病気です。(もちろん見逃している可能性はありますが・・・)
そしてその一人の患者さんはステロイドが効いて、最後にはゼロにすることができました。
ステロイドが効かなかった場合については治療の経験がないので、偉そうなことが言えないんですね。
ステロイドをどれくらいの間隔でどれくらいずつ減らしたらいいのか、なども調べてみましたがやっぱり決まっていません。
医師の裁量次第というのがこの病気の治療の正直なところです。
好酸球性胃腸炎の治療は医師の裁量によるところが大きいんやで。
確かに食べ物のアレルギーが原因なら、その食べ物を突き止めて除去すれば治りそうなものです。
確かに小児の場合はこれが有効と言われたりもします。
ただ、大人の場合はこの方法が無意味であると言われています。
アレルギーの原因となりそうな卵や小麦、乳などを抜いた除去食を食べても効果がないという研究もあります。
まとめ
今日は好酸球性胃腸炎という稀な病気について解説させていただきました。
ご理解いただけたでしょうか?
いろんな病気があるということがわかって頂けたら十分かな、と思います。
慢性下痢症の鑑別も大詰めです。
もう少しだけお付き合いくださいね。
今日は以上です。
お疲れ様でした。